3.行政規則
(1)解釈基準
+判例(S43.12.24)墓地埋葬通達事件
+判例(東京地判S46.11.8)函数尺通達事件
理由
(本案前の抗弁について)
一 被告局長に対する訴えについて
当事者間に争いのない事実および成立に争いのない乙第一号証によれば、被告局長に対する訴えにおいて原告が取消を求めている通達というのは、被告局長から各都道府県知事宛に発せられた「計量法違反事件について(照会)」と題する書面によるものであつて、その内容は、原告の製造にかかる本件函数尺が計量法第一二条の計量器にあたり、同法の各種規制を受けるものであること、右函数尺には非法定計量単位の目盛が併記されているので、その販売および販売のための所持は非法定計量単位の使用を禁止した同法第一〇条に違反するものであることをそれぞれ明示し、知事に対しその趣旨にそつて右函数尺に関する事務を処理するよう指示するとともに、あわせて右函数尺の販売の実体調査とその結果の報告を命じたものと認められる。そして、計量法の施行事務は通商産業省の所管事務に属し、同省重工業局が計量に関する事務を掌り(通商産業省設置法第三条第四号、第一〇条第四号)、また、知事は国の委任を受け、国の機関として計量器の販売等の事業の登録等の事務を処理する関係にあるので(地方自治法第一四八条第二項、別表三(九四))、被告局長は右事務につき知事に対し指揮監督権を有するものであるから、右書面は、被告局長が右権限に基づいてその所掌事務につき国の機関たる知事に対し右函数尺につき計量法第一〇条、第一二条の解釈を示し、前示のごとくそれにそつた事務処理を指示するとともに右函数尺の販売の実体調査とその結果の報告を命じたものである。
ところで、通達そのものの取消を求める訴訟が許されるかどうかは問題の存するところである(最高裁判所昭和三九年(行ツ)第八七号昭和四三年一二月二四日判決、民集第二二巻第一三号三一四七頁参照)。
元来、通達は、上級行政機関がその所掌事務について関係下級行政機関およびその職員に対しその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであつて(国家行政組織法第一四条第二項)、行政組織の内部的規律にすぎないものであることからすれば、国民との関係についていう限り、通達そのものは、たとえそれが国民の権利、義務ないし法律上の利益に関係のあることがらを内容とするものであつても、一般的には、いまだ個人の具体的な権利、義務ないし法律上の利益に変動を生ぜしめるものではないから、これを具体的な法律上の紛争があるものとして司法審査の対象とすることはできないものといわなければならない。そして、このように解したとしても、通常は通達に基づいてなされた具体的な行政処分の適否についての訴訟によつて国民の利益を保護することが充分可能であるから、国民の権利救済に欠けるところはないというべきである。
しかし、現実の行政事務の運営において通達がはたしている役割・機能の重要性およびその影響力も無視しえないのであつて、こうした点をも併せ考えると、通達であつてもその内容が国民の具体的な権利、義務ないし法律上の利益に重大なかかわりをもち、かつ、その影響が単に行政組織の内部関係にとどまらず外部にも及び、国民の具体的な権利、義務ないしは法律上の利益に変動をきたし、通達そのものを争わせなければその権利救済を全からしめることができないような特殊例外的な場合には、行政訴訟の制度が国民の権利救済のための制度であることに鑑みれば、通達を単に行政組織の内部的規律としてのみ扱い、行政訴訟の対象となしえないものとすることは妥当でなく、むしろ通達によつて具体的な不利益を受ける国民から通達そのものを訴訟の対象としてその取済を求めることも許されると解するのが相当である。
このような観点から本件訴えの対象とされた前記通達についてみると、右通達は前示認定のとおりの形式および内容のものであり、前掲乙第一号証および証人A、同B、同Cの各証言によれば、本件函数尺についてはかねてより計量法違反物件としてその製造、販売に対しなんらかの行政措置を講ずべきではないかとの疑義があり、右通達はこうした疑義からなされた照会に対するものとして発せられたものであることが認められ、このような通達が発せられた経緯およびその内容よりすれば、右通達は原告の製造にかかる右函数尺の販売および販売のための所持を規制することをも目的としているものと解されるところ、証人Bの証言および弁論の全趣旨よりすれば、計量に関する事務はすぐれて専門技術的要素が多く、現実の行政事務は通達によつて運営、執行され、計量法規の解釈、運用、取扱基準等に関して発せられる通達には下級行政機関のみならず計量器製造業者およびその販売業者らも多大の関心を示し、行政機関においても行政事務の円滑な運営をはかるうえからこれら業者に対しその通達の紹介、説明等をなし、業者らは発せられた通達に従うのが実情であり、計量に関する行政において通達のはたしている現実的役割・機能は極めて大きいことが認められるうえ、現に、原告本人尋問の結果によれば、右通達が発せられたのち、各関係機関において右函数尺の販売取扱業者らに対し販売中止勧告等の行政措置がなされ、原告は右業者らから右函数尺の買入れを解約されるに至つたことが認められるから、これらの点をも併せ考えると、右通達が右函数尺の製造業者である原告の権利・利益に重大な影響を及ぼすものであることは明らかであり、かつ、右のような解約という事態を防止しうる措置として原告のなしうる最も適切な法的手段としては、右業者らに対する行政措置の根拠とされた右通達そのものの取消を求めるほかはないといわなければならない。しかも、本件においては、原告は計量器の製造事業の許可を受けた計量器製造業者ではないから、原告が右通達に基づいて許可の取消、事業の停止等の具体的な行政処分を受けることはなく、せいぜい製造中止の勧告を受ける程度にとどまり、右通達に基づく具体的な行政処分を受けるのは個々の計量器販売業者であり、これらの業者に対する登録の取消または事業停止(計量法第五九条)といつた具体的処分をまつて、その処分に対してのみ不服の申立てをすることができるとすれば、結局、その処分を受けた個々の販売業者のみが右の処分を争うことを通じて右通達の適否を争うことができるにとどまり、これらの業者が敢えて右通達に反する行為をなし、右のような不利益処分を受けて争うことがないかぎり、右函数尺の製造業者である原告としては実際に右通達による不利益を受けながらそれを争う方法がないということでは甚だ不合理な結果をきたすといわざるを得ない。以上の諸関係を考慮すれば、右通達は抗告訴訟の対象たりうる行政庁の公権力の行政にあたると解するのが相当であり、また、原告には右通達の取消を求める適格があるというべきである。
右につき、被告局長は、右通達は原告の製造、販売にかかる右函数尺の販売について行政庁としてなんらの措置を必要とする否かについて判断の資料を得るため、各知事に対し右函数尺に関する一応の見解を表明して、その販売の実体調査およびその結果の報告をなすべく指示したものにすぎない旨主張する。
しかし、前記認定のような右通達の内容ならびにその発せられた経緯からすれば、右通達が単に右函数尺の販売の実体調査とその結果の報告のためにのみ発せられたものとは到底いえないし、現に前示認定のとおり右通達に則つて右函数尺の販売取扱業者らに対し販売中止勧告等の行政措置がなされ、また、原告に対しても被告所長から右通達に基づいて製造中止の勧告がなされている(この点は当事者間に争いがない。)のであるから、被告局長の右主張は採用できない。
よつて、被告局長の右本案前の主張は採用できない。
二 被告所長に対する訴えについて
成立に争いのない甲第一号証および証人B、同Cの各証言によれば、被告所長に対する訴えにおいて原告が取消を求めている勧告は、被告所長が原告に対し原告の協力のもとに右函数尺の製造および販売の中止を要請したもので、いわゆる行政指導としてなされたものにすぎないことが認められる。
そうとすれば、他に特段の事情の認められない本件においては、右勧告はなんら原告の権利、義務ないしは法律上の利益に影響を及ぼすものではなく、右勧告の取消を求めなければ原告の権利救済をはかることができないという関係にもないから、右勧告は抗告訴訟の対象たりうる行政庁の公権力の行使と認めることはできない。
原告は、右勧告は計量法第二三一条(第六三条違反)、第二三五条(第一〇条違反)の罰則をもつて右函数尺の製造および販売を禁止しようとするものであるから行政処分である旨主張するが、右条項は勧告を受けた者が勧告に従わないことに対し刑罰を科するとするものではなく、勧告とは関係なく同法第六三条、第一〇条違反に対し罰則を定めたものにすぎないから、原告の右主張は採用できない。
したがつて、右勧告の取消を求める本件訴えは不適法であるといわざるをえず、却下を免れないというべきである。
(本案について)
一 原告が商品名を「ホワイト六折スケール」と称する合成樹脂製六つ折函数尺を製造、販売していたところ、被告局長が右函数尺に関し昭和三八年八月二〇日付三八重局第一二七七号をもつて各都道府県知事宛に別紙記載内容の通達を発したこと、そこで、原告が昭和三八年九月二七日付をもつて右通達に対する不服申立書を通商産業大臣に提出したところ、同大臣はこれを異議申立てとみなし、同年一一月三〇日右「異議申立ては認められない」旨の決定をなし、その通知書が同月二一日原告に送達されたことは当事者間に争いがない。
二 原告は、右通達は計量法の解釈を誤つた違法があると主張するので、以下この点について判断する。
計量に関する制度は、社会生活における基本的な制度であつて、単に経済取引ばかりでなく、家庭・産業・学術・教育などの国民生活のあらゆる分野に多大の影響を及ぼすものであるから、合理的かつ統一的な計量制度を確立することは、社会生活の便宜と安全を図り、かつ、経済の発展と文化の向上を期するうえで必要不可欠のものである。計量法は、かような社会的要請から計量の基準を定め、適正な計量の実施を確保し、もつて経済の発展および文化の向上に資することを目的として制定されたものであり(同法第一条)、その目的の達成のために、計量基準として計量単位を定め(同法第三条、第五条)、法定計量単位以外の計量単位を取引上または証明上の計量に用いることのみならずそれを物象の状態の量の表示として用いることをも原則として禁止し(同法第一〇条)、取引上または証明上における雑多な計量単位の使用を防ぎ、計量単位の単純明確化を期するとともに、適正な計量の実施を確保する見地から、計量器の定義を定め(同法第一二条)、その製造、修理、販売の事業につき許可ないし登録の制度を採用し(同法第一三条、第三五条、第四七条)、製造、修理された計量器についての譲渡等につき検定制度を定め(同法第六三条)、検定に合格しない計量器についての譲渡等を禁止(同法第六六条)する等、正確な計量器の供給を図る措置を講じている。
したがつて、右のような計量法の目的および趣旨よりすれば、同法第一二条にいう計量するための器具、機械または装置とは、その素材、構造、形状、外観等から客観的に観察し、社会通念上物象の状態の量を計ることのできる機能・性質を具備しているものであつて、その使用目的が主として計量するためのものと認められるものをいうと解するのが相当であり、そのようなものであれば、製作者の主観的意図の如何を問わず右の計量器にあたり、その製造、販売については同法第一三条、第四七条その他計量法の定める規制を受けなければならず、また、そのような計量器に非法定計量単位が表示されているときは、その販売または販売のための所持は、非法定計量単位を物象の状態の量の表示として用いること自体をも禁止した同法第一〇条第一項本文に違反するものと解するのが相当である。
そこで、本件函数尺が右計量器にあたるかについてみるに、成立に争いのない甲第二四号証および検甲第一号証によれば、右函数尺は、表面にセンチメートルとかね尺の寸、裏面にインチの各目盛が別紙図面(三)のとおり併記された長さ約一メートルのスチロール樹脂製六つ折尺様のものであり、その素材、形状、構造、外観等に照らし、社会通念上、長さを計ることのできる機能・性質を具備し、主として計量(長さを計る)のために使用する目的をもつものと認められるから、右函数尺は同法第一二条にいう計量器であり、同条第一号ヘの畳尺に該当するものというべきである。
そして、右函数尺には前示認定のとおり非法定計量単位であるかね尺の寸およびインチの各目盛が併記されているから、その販売または販売のための所持は、非法定計量単位を物象の状態の量の表示として用いることをも含め禁止している同法第一〇条第一項本文に違反するものと解するのが相当である。
してみれば、右と同趣旨の内容の右通達には計量法の解釈を誤つた違法はないといわなければならない。
三 原告は、右通達が計量法の解釈を誤つたものであることを各種の観点から理由づけているので、以下原告の主張について検討する。
(一)原告は、右函数尺は計量するためのものではなく、主として木材取引業者らが換算に使用するためのものである旨主張する。
しかし、前示のとおり、当該器具が計量するためのものであるか否かは、当該器具の構造、形状、外観、機能等から客観的に観察し、社会通念に照らして判断すべきものであって、製造業者の主観的な製造目的如何によるべきものではないと解するのが相当であるから、右函数尺が前示認定のとおりの構造、形状、外観等を具備するものである以上、原告の主観的な製造目的如何にかかわらず、右函数尺は社会通念上計量のためのものというべきである。
したがつて、原告の右主張は採用できない。
(二)原告は、右函数尺の素材がセルロイド類似の合成樹脂(スチロール樹脂)であつて、膨脹率が大きく計量器の材料に親しまないものであるから、右函数尺は計量することのできる性質を具備しているものではなく、計量器とはいえない旨主張する。
右函数尺がスチロール樹脂製のものであることは前示認定のとおりであり、スチロール樹脂は膨脹係数が大きく、計量器検定検査規則の定める基準膨脹係数以下のものではないから、その意味では右函数尺が計量器の材料として不適当であることは原告主張のとおりである。
しかし、計量法第一二条の計量器にあたるか否かは、前示のとおり、その素材、構造、形状、外観等から客観的に観察し、社会通念上計量することのできる機能・性質を具備していると認めうるか否かによつて判断すべきものであつて、右検定規則の基準にあたらない材料によるものであつても、その構造等から客観的に観察し、社会通念に照らし一般的に計量可能と認められるものであれば、同法第一二条の計量器といいうるのであつて、当該器具に使用された材料が右検定規則の基準を保有するか否かは、検定の合否には関係しても、同法第一二条の計量器か否かの判断にあたつては関係ないものというべきである。
したがつて、原告の右主張は採用できない。
(三)原告は、右函数尺には目盛線のみ記され、長さの単位および全長の表記がなく、これのみをもつてしては長さを計ることができないから、右函数尺は計量器ではない旨主張する。
検甲第一号証によれば、右函数尺には長さの単位および全長の表記はないが、その表面に1ないし99および1ないし30の、その裏面に1ないし36の数字の表記があるほか、前示のとおりセンチメートル、かね尺の寸およびインチの各目盛が記されてあり、長さの単位および全長の表記がなくても、一般通常人において自己の知識、経験により、また、他の物件との比較により、右目盛がいかなる単位、全長を表示しているか容易に識別することができ、これを使用して長さを計ることができるから、右函数尺を計量器というをさまたげるものではないというべきである。
したがつて、原告の右主張は採用できない。
(四)原告は、右函数尺には「これは函数尺です。取引、証明には使用できません。」との注意書が明記され、取引上および証明上の計量に用いるものでないことは一見して明らかであるから、右函数尺は計量法第一二条の計量器ではない旨主張する。
しかし、計量法がその第一二条において計量器の定義に関する規定を設けた趣旨は、その製造、販売等の事業について許可ないし登録の制度を採用し(同法第一三条、第四七条等)、検定制度を規定(同法第六三条)する等して正確な計量器の供給を図り、もつて適正な計量の実施を確保するとの見地よりいでたものというべきであるから、前示のとおり、当該器具の素材、構造、形状、外観等から客観的に観察し、社会通念上計量するための器具と認められるものは同法第一二条の計量器と解するを相当とし、そのような器具であれば、たとえ当該器具に「これは函数尺です。取引証明には使用できません。」との注意書が付記されていても、同法第一二条の計量器というべきである。すなわち、右のような注意書の有無は、同法第一二条の計量器に該当するか否かを判定するうえで、決定的な要因となるものではないのである。
したがつて、原告の右主張は採用できない。
(五)原告は右函数尺には非法定計量単位の目盛の併記はない旨主張する。
しかし、前示認定のとおり、右函数尺にはセンチメートルの目盛のほか、その表面にかね尺の寸、その裏面にインチの各目盛が表記され、右寸、インチはいずれも非法定計量単位であるから、原告の右主張は採用できない。
(六)原告は、右函数尺が非法定計量単位の目盛の併記された計量器であるとしても、それを販売または販売のため所持するだけでは計量法第一〇条違反にならない旨主張する。
計量法第一〇条第一項本文(第一〇条中第一項本文以外は本件においては問題にならない。)は、長さ、質量等の物象の状態の量について「法定計量単位以外の計量単位は、取引上又は証明上の計量(物象の状態の量の表示を含む。)に用いてはならない」旨規定し、右の「取引」とは、同法第一一条第一項において、有償であると無償であるとを問わず、物または役務の給付を目的とする業務上の行為をいうと定義され、また、「計量」とは、同法第二条において、長さ、質量等物象の状態の量を計ることをいうと定義されているが、非法定計量単位の目盛の併記された計量器を販売し、または販売のため所持することが右第一〇条第一項本文に違反するか否かは、右条文の規定からはかならずしも明瞭とはいい難いところである。
しかし、同法が計量基準を定め、適正な計量の実施を確保し、もつて経済の発展および文化の向上に資することを目的とするものであること(同法第一条)、同法第一〇条が、右の目的を達成すべく、取引上または証明上における雑多な計量単位の使用を規制し、計量単位の単純明確化を図るための規定であること、同条第一項本文がそのかつこ書において「物象の状態の量の表示を含む」とし、売買、贈与等の取引において非法定計量単位を計量に用いることのみならず、非法定計量単位を取引上または証明上物象の状態の量の表示として用いることをも含め禁止していること等よりすれば、同条第一項本文は、非法定計量単位の目盛の付記された計量器を販売することまたは販売するために所持することをも禁止しているものと解するのが相当であるから、右函数尺が前示認定のとおり非法定計量単位の目盛の併記のある計量器と認められる以上、その販売または販売のための所持は同条第一項本文に違反するものというべきである。
したがつて、原告の右主張は採用できない。
(七)原告は、計量法第一〇条は計量法施行法第三条との関連において憲法第二一条第一項(表現の自由)に違反し無効である旨主張する。
原告の右主張の趣旨はかならずしも明らかではない。しかし、ある計量単位を取引上または証明上の計量(量の表示を含む。)に使用するということは、内心の思想(厳格な意味での思想に限らず、思つていること、感じていることのすべてを含む。)を外部に発表することとなんら関係のないことであるから、非法定計量単位を取引上または証明上の計量(量の表示を含む。)に使用することを禁止しても、憲法第二一条第一項の規定する表現の自由を侵したことになる余地がない。
したがつて、原告の右憲法の主張はその前提を欠くものであつて、採用できない。
(結論)
以上の次第であるから、原告の被告局長に対する訴えは、その理由がないから失当として棄却することとし、また、被告所長に対する訴えは、不適法として却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 高津環 裁判官 佐藤繁 裁判官 海保寛)
・他にも公法上の当事者訴訟としての確認訴訟(行訴法4条)の対象にするという考え方もある。
(2)裁量基準
+(審査基準)
第五条 行政庁は、審査基準を定めるものとする。
2 行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
3 行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない。
・裁量基準は法律の委任に基づかない、行政内部での基準であるから、法規としての性格をもたない。
+判例(S53.10.4)マクリーン事件
理由
第一 上告代理人秋山幹男、同弘中惇一郎の上告理由第一点ないし第四点、第六点ないし第一一点について
一 本件の経過
(一) 本件につき原審が確定した事実関係の要旨は、次のとおりである。
(1) 上告人は、アメリカ合衆国国籍を有する外国人であるが、昭和四四年四月二一日その所持する旅券に在韓国日本大使館発行の査証を受けたうえで本邦に入国し、同年五月一〇日下関入国管理事務所入国審査官から出入国管理令四条一項一六号、特定の在留資格及びその在留期間を定める省令一項三号に該当する者としての在留資格をもつて在留期間を一年とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸した。
(2) 上告人は、昭和四五年五月一日一年間の在留期間の更新を申請したところ、被上告人は、同年八月一〇日「出国準備期間として同年五月一〇日から同年九月七日まで一二〇日間の在留期間更新を許可する。」との処分をした。そこで、上告人は、更に、同年八月二七日被上告人に対し、同年九月八日から一年間の在留期間の更新を申請したところ、被上告人は、同年九月五日付で、上告人に対し、右更新を適当と認めるに足りる相当な理由があるものとはいえないとして右更新を許可しないとの処分(以下「本件処分」という。)をした。
(3) 被上告人が在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当な理由があるものとはいえないとしたのは、次のような上告人の在留期間中の無届転職と政治活動のゆえであつた。
(ア)上告人は、ベルリツツ語学学校に英語教師として雇用されるため在留資格を認められたのに、入国後わずか一七日間で同校を退職し、財団法人英語教育協議会に英語教師として就職し、入国を認められた学校における英語教育に従事しなかつた。
(イ)上告人は、外国人べ平連(昭和四四年六月在日外国人数人によつてアメリカのベトナム戦争介入反対、日米安保条約によるアメリカの極東政策への加担反対、在日外国人の政治活動を抑圧する出入国管理法案反対の三つの目的のために結成された団体であるが、いわゆるべ平連からは独立しており、また、会員制度をとつていない。)に所属し、昭和四四年六月から一二月までの間九回にわたりその定例集会に参加し、七月一〇日左派華僑青年等が同月二日より一三日まで国鉄新宿駅西口付近において行つた出入国管理法案粉砕ハンガーストライキを支援するため、その目的等を印刷したビラを通行人に配布し、九月六日と一〇月四日べ平連定例集会に参加し、同月一五、一六日ベトナム反戦モラトリアムデー運動に参加して米国大使館にベトナム戦争に反対する目的で抗議に赴き、一二月七日横浜入国者収容所に対する抗議を目的とする示威行進に参加し、翌四五年二月一五日朝霞市における反戦放送集会に参加し、三月一日同市の米軍基地キヤンプドレイク付近における反戦示威行進に参加し、同月一五日べ平連とともに同市における「大泉市民の集い」という集会に参加して反戦ビラを配布し、五月一五日米軍のカンボジア侵入に反対する目的で米国大使館に抗議のため赴き、同月一六日五・一六ベトナムモラトリアムデー連帯日米人民集会に参加してカンボジア介入反対米国反戦示威行進に参加し、六月一四日代々木公園で行われた安保粉砕労学市民大統一行動集会に参加し、七月四日清水谷公園で行われた東京動員委員会主催の米日人民連帯、米日反戦兵士支援のための集会に参加し、同月七日には羽田空港においてロジヤース国務長官来日反対運動を行うなどの政治的活動を行つた。なお、上告人が参加した集会、集団示威行進等は、いずれも、平和的かつ合法的行動の域を出ていないものであり、上告人の参加の態様は、指導的又は積極的なものではなかつた。
(二) 原審は、自国内に外国人を受け入れるかどうかは基本的にはその国の自由であり、在留期間の更新の申請に対し更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるかどうかは、法務大臣の自由な裁量による判断に任されているものであるとし、前記の上告人の一連の政治活動は、在留期間内は外国人にも許される表現の自由の範囲内にあるものとして格別不利益を強制されるものではないが、法務大臣が、在留期間の更新の許否を決するについてこれを日本国及び日本国民にとつて望ましいものではないとし、更新を適当と認めるに足りる相当な理由がないと判断したとしても、それが何ぴとの目からみても妥当でないことが明らかであるとすべき事情のない本件にあつては、法務大臣に任された裁量の範囲内におけるものというべきであり、これをもつて本件処分を違法であるとすることはできない、と判断した。
(三) 論旨は、要するに、(1) 自国内に外国人を受け入れるかどうかはその国の自由であり、在留期間の更新の申請に対し更新を適当と認めるに足りる相当な理由があるかどうかは法務大臣の自由な裁量による判断に任されているものであるとした原判決は、憲法二二条一項、出入国管理令二一条の解釈適用を誤り、理由不備の違法がある、(2) 本件処分のような裁量処分に対する原審の審査の態度、方法には、判例違反、審理不尽、理由不備の違法があり、行政事件訴訟法三〇条の解釈の誤りがある、(3) 被上告人の本件処分は、裁量権の範囲を逸脱したものであり、憲法の保障を受ける上告人のいわゆる政治活動を理由として外国人に不利益を課するものであつて、本件処分を違法でないとした原判決は、経験則に違背する認定をし、理由不備の違法を犯し、出入国管理令二一条の解釈適用を誤り、憲法一四条、一六条、一九条、二一条に違反するものである、と主張することに帰するものと解される。
二 当裁判所の判断
(一) 憲法二二条一項は、日本国内における居住・移転の自由を保障する旨を規定するにとどまり、外国人がわが国に入国することについてはなんら規定していないものであり、このことは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、当該国家が自由に決定することができるものとされていることと、その考えを同じくするものと解される(最高裁昭和二九年(あ)第三五九四号同三二年六月一九日大法廷判決・刑集一一巻六号一六六三頁参照)。したがつて、憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん、所論のように在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもないと解すべきである。そして、上述の憲法の趣旨を前提として、法律としての効力を有する出入国管理令は、外国人に対し、一定の期間を限り(四条一項一号、二号、一四号の場合を除く。)特定の資格によりわが国への上陸を許すこととしているものであるから、上陸を許された外国人は、その在留期間が経過した場合には当然わが国から退去しなければならない。もつとも、出入国管理令は、当該外国人が在留期間の延長を希望するときには在留期間の更新を申請することができることとしているが(二一条一項、二項)、その申請に対しては法務大臣が「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り」これを許可することができるものと定めている(同条三項)のであるから、出入国管理令上も在留外国人の在留期間の更新が権利として保障されているものでないことは、明らかである。
右のように出入国管理令が原則として一定の期間を限つて外国人のわが国への上陸及び在留を許しその期間の更新は法務大臣がこれを適当と認めるに足りる相当の理由があると判断した場合に限り許可することとしているのは、法務大臣に一定の期間ごとに当該外国人の在留中の状況、在留の必要性・相当性等を審査して在留の許否を決定させようとする趣旨に出たものであり、そして、在留期間の更新事由が概括的に規定されその判断基準が特に定められていないのは、更新事由の有無の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨からであると解される。すなわち、法務大臣は、在留期間の更新の許否を決するにあたつては、外国人に対する出入国の管理及び在留の規制の目的である国内の治安と善良の風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定などの国益の保持の見地に立つて、申請者の申請事由の当否のみならず、当該外国人の在留中の一切の行状、国内の政治・経済・社会等の諸事情、国際情勢、外交関係、国際礼譲など諸般の事情をしんしやくし、時宜に応じた的確な判断をしなければならないのであるが、このような判断は、事柄の性質上、出入国管理行政の責任を負う法務大臣の裁量に任せるのでなければとうてい適切な結果を期待することができないものと考えられる。このような点にかんがみると、出入国管理令二一条三項所定の「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかの判断における法務大臣の裁量権の範囲が広汎なものとされているのは当然のことであつて、所論のように上陸拒否事由又は退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新申請を不許可にすることは許されないと解すべきものではない。
(二) ところで、行政庁がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を定めることがあつても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保するためのものなのであるから、処分が右準則に違背して行われたとしても、原則として当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない。処分が違法となるのは、それが法の認める裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限られるのであり、また、その場合に限り裁判所は当該処分を取り消すことができるものであつて、行政事件訴訟法三〇条の規定はこの理を明らかにしたものにほかならない。もつとも、法が処分を行政庁の裁量に任せる趣旨、目的、範囲は各種の処分によつて一様ではなく、これに応じて裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法とされる場合もそれぞれ異なるものであり、各種の処分ごとにこれを検討しなければならないが、これを出入国管理令二一条三項に基づく法務大臣の「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかの判断の場合についてみれば、右判断に関する前述の法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法となるものというべきである。したがつて、裁判所は、法務大臣の右判断についてそれが違法となるかどうかを審理、判断するにあたつては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法であるとすることができるものと解するのが、相当である。なお、所論引用の当裁判所昭和三七年(オ)第七五二号同四四年七月一一日第二小法廷判決(民集二三巻八号一四七〇頁)は、事案を異にし本件に適切なものではなく、その余の判例は、右判示するところとその趣旨を異にするものではない。
(三) 以上の見地に立つて被上告人の本件処分の適否について検討する。
前記の事実によれば、上告人の在留期間更新申請に対し被上告人が更新を適当と認めるに足りる相当な理由があるものとはいえないとしてこれを許可しなかつたのは、上告人の在留期間中の無届転職と政治活動のゆえであつたというのであり、原判決の趣旨に徴すると、なかでも政治活動が重視されたものと解される。
思うに、憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。しかしながら、前述のように、外国人の在留の許否は国の裁量にゆだねられ、わが国に在留する外国人は、憲法上わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求することができる権利を保障されているものではなく、ただ、出入国管理令上法務大臣がその裁量により更新を適当と認めるに足りる相当の理由があると判断する場合に限り在留期間の更新を受けることができる地位を与えられているにすぎないものであり、したがつて、外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないものと解するのが相当であつて、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障、すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情としてしんしやくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない。在留中の外国人の行為が合憲合法な場合でも、法務大臣がその行為を当不当の面から日本国にとつて好ましいものとはいえないと評価し、また、右行為から将来当該外国人が日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者であると推認することは、右行為が上記のような意味において憲法の保障を受けるものであるからといつてなんら妨げられるものではない。
前述の上告人の在留期間中のいわゆる政治活動は、その行動の態様などからみて直ちに憲法の保障が及ばない政治活動であるとはいえない。しかしながら、上告人の右活動のなかには、わが国の出入国管理政策に対する非難行動、あるいはアメリカ合衆国の極東政策ひいては日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に対する抗議行動のようにわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものも含まれており、被上告人が、当時の内外の情勢にかんがみ、上告人の右活動を日本国にとつて好ましいものではないと評価し、また、上告人の右活動から同人を将来日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者と認めて、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、その事実の評価が明白に合理性を欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいえず、他に被上告人の判断につき裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたことをうかがわせるに足りる事情の存在が確定されていない本件においては、被上告人の本件処分を違法であると判断することはできないものといわなければならない。また、被上告人が前述の上告人の政治活動をしんしやくして在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないとし本件処分をしたことによつて、なんら所論の違憲の問題は生じないというべきである。
(四) 以上述べたところと同旨に帰する原審の判断は、正当であつて、所論引用の各判例にもなんら違反するものではなく、原判決に所論の違憲、違法はない。論旨は、上述したところと異なる見解に基づいて原判決を非難するものであつて、採用することができない。
第二 同第五点について
原審が当事者双方の陳述を記載するにつき所論の方法をとつたからといつて、判決の事実摘示として欠けるところはないものというべきであり、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡原昌男 裁判官 江里口清雄 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 髙辻正己 裁判官 吉田豊 裁判官 団藤重光 裁判官 本林讓 裁判官 服部髙顯 裁判官 環昌一 裁判官 栗本一夫 裁判官 藤崎萬里 裁判官 本山亨 裁判官岸盛一、同天野武一、同岸上康夫は、退官のため署名押印することができない。裁判長裁判官 岡原昌男)
・適切な裁量権行使のために裁量基準を定めながら、合理的な理由なく裁量基準から外れた処分をすることは、判断過程の合理性を欠くとされたり、平等原則違反とされることがありうる。
+判例(H4.10.29)伊方原発訴訟
・裁量基準と裁量審査の関係~懲戒処分を例に
個別事情考慮義務
+判例(S52.12.20)神戸税関事件
+判例(H24.1.16)
+判例(H11.7.19)三菱タクシーグループ運賃値上げ事件
4.意見公募手続
+第六章 意見公募手続等
(命令等を定める場合の一般原則)
第三十八条 命令等を定める機関(閣議の決定により命令等が定められる場合にあっては、当該命令等の立案をする各大臣。以下「命令等制定機関」という。)は、命令等を定めるに当たっては、当該命令等がこれを定める根拠となる法令の趣旨に適合するものとなるようにしなければならない。
2 命令等制定機関は、命令等を定めた後においても、当該命令等の規定の実施状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、必要に応じ、当該命令等の内容について検討を加え、その適正を確保するよう努めなければならない。
(意見公募手続)
第三十九条 命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(命令等で定めようとする内容を示すものをいう。以下同じ。)及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(情報を含む。以下同じ。)の提出先及び意見の提出のための期間(以下「意見提出期間」という。)を定めて広く一般の意見を求めなければならない。
2 前項の規定により公示する命令等の案は、具体的かつ明確な内容のものであって、かつ、当該命令等の題名及び当該命令等を定める根拠となる法令の条項が明示されたものでなければならない。
3 第一項の規定により定める意見提出期間は、同項の公示の日から起算して三十日以上でなければならない。
4 次の各号のいずれかに該当するときは、第一項の規定は、適用しない。
一 公益上、緊急に命令等を定める必要があるため、第一項の規定による手続(以下「意見公募手続」という。)を実施することが困難であるとき。
二 納付すべき金銭について定める法律の制定又は改正により必要となる当該金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法についての命令等その他当該法律の施行に関し必要な事項を定める命令等を定めようとするとき。
三 予算の定めるところにより金銭の給付決定を行うために必要となる当該金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法その他の事項を定める命令等を定めようとするとき。
四 法律の規定により、内閣府設置法第四十九条第一項 若しくは第二項 若しくは国家行政組織法第三条第二項 に規定する委員会又は内閣府設置法第三十七条 若しくは第五十四条 若しくは国家行政組織法第八条 に規定する機関(以下「委員会等」という。)の議を経て定めることとされている命令等であって、相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的として、法律又は政令の規定により、これらの者及び公益をそれぞれ代表する委員をもって組織される委員会等において審議を行うこととされているものとして政令で定める命令等を定めようとするとき。
五 他の行政機関が意見公募手続を実施して定めた命令等と実質的に同一の命令等を定めようとするとき。
六 法律の規定に基づき法令の規定の適用又は準用について必要な技術的読替えを定める命令等を定めようとするとき。
七 命令等を定める根拠となる法令の規定の削除に伴い当然必要とされる当該命令等の廃止をしようとするとき。
八 他の法令の制定又は改廃に伴い当然必要とされる規定の整理その他の意見公募手続を実施することを要しない軽微な変更として政令で定めるものを内容とする命令等を定めようとするとき。
(意見公募手続の特例)
第四十条 命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合において、三十日以上の意見提出期間を定めることができないやむを得ない理由があるときは、前条第三項の規定にかかわらず、三十日を下回る意見提出期間を定めることができる。この場合においては、当該命令等の案の公示の際その理由を明らかにしなければならない。
2 命令等制定機関は、委員会等の議を経て命令等を定めようとする場合(前条第四項第四号に該当する場合を除く。)において、当該委員会等が意見公募手続に準じた手続を実施したときは、同条第一項の規定にかかわらず、自ら意見公募手続を実施することを要しない。
(意見公募手続の周知等)
第四十一条 命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めるに当たっては、必要に応じ、当該意見公募手続の実施について周知するよう努めるとともに、当該意見公募手続の実施に関連する情報の提供に努めるものとする。
(提出意見の考慮)
第四十二条 命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての意見(以下「提出意見」という。)を十分に考慮しなければならない。
(結果の公示等)
第四十三条 命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布(公布をしないものにあっては、公にする行為。第五項において同じ。)と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければならない。
一 命令等の題名
二 命令等の案の公示の日
三 提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨)
四 提出意見を考慮した結果(意見公募手続を実施した命令等の案と定めた命令等との差異を含む。)及びその理由
2 命令等制定機関は、前項の規定にかかわらず、必要に応じ、同項第三号の提出意見に代えて、当該提出意見を整理又は要約したものを公示することができる。この場合においては、当該公示の後遅滞なく、当該提出意見を当該命令等制定機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしなければならない。
3 命令等制定機関は、前二項の規定により提出意見を公示し又は公にすることにより第三者の利益を害するおそれがあるとき、その他正当な理由があるときは、当該提出意見の全部又は一部を除くことができる。
4 命令等制定機関は、意見公募手続を実施したにもかかわらず命令等を定めないこととした場合には、その旨(別の命令等の案について改めて意見公募手続を実施しようとする場合にあっては、その旨を含む。)並びに第一項第一号及び第二号に掲げる事項を速やかに公示しなければならない。
5 命令等制定機関は、第三十九条第四項各号のいずれかに該当することにより意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければならない。ただし、第一号に掲げる事項のうち命令等の趣旨については、同項第一号から第四号までのいずれかに該当することにより意見公募手続を実施しなかった場合において、当該命令等自体から明らかでないときに限る。
一 命令等の題名及び趣旨
二 意見公募手続を実施しなかった旨及びその理由