民事訴訟法 基礎演習 既判力の主観的範囲


・+(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
第115条
1項 確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
一 当事者
二 当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
三 前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
四 前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
2項 前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。

1.依存関係説と適格承継説

+判例(S41.3.22)
理由
上告代理人辻丸勇次の上告理由について。
本件宅地の賃貸借契約は、本件土地が都市計画の実施により道路敷とされるとき、または、被上告人がこれを他に売却処分する必要が生ずるという事態の発生したときでない限り、一カ年毎に契約を更新する約旨であつたとの点、従前の更新はまさに右約旨に従つてなされたものであるとの点および期間を一カ年と定めたのが所論のような趣旨に出たものであるとの点は、いずれも原審の認定しないところである。所論は、原審の認定しない事実に立脚して、原判決の理由不備をいうものであつて、その前提を欠き、採用できない。

上告代理人田中実の上告理由について。
賃貸人が、土地賃貸借契約の終了を理由に、賃借人に対して地上建物の収去、土地の明渡を求める訴訟が係属中に、土地賃借人からその所有の前記建物の一部を賃借し、これに基づき、当該建物部分および建物敷地の占有を承継した者は、民訴法七四条にいう「其ノ訴訟ノ目的タル債務ヲ承継シタル」者に該当すると解するのが相当である。
けだし、土地賃借人が契約の終了に基づいて土地賃貸人に対して負担する地上建物の収去義務は、右建物から立ち退く義務を包含するものであり、当該建物収去義務の存否に関する紛争のうち建物からの退去にかかる部分は、第三者が土地賃借人から係争建物の一部および建物敷地の占有を承継することによつて、第三者の土地賃貸人に対する退去義務の存否に関する紛争という型態をとつて、右両者間に移行し、第三者は当該紛争の主体たる地位を土地賃借人から承継したものと解されるからである。これを実質的に考察しても、第三者の占有の適否ないし土地賃貸人に対する退去義務の存否は、帰するところ、土地賃貸借契約が終了していないとする土地賃借人の主張とこれを支える証拠関係(訴訟資料)に依存するとともに、他面において、土地賃貸人側の反対の訴訟資料によつて否定されうる関係にあるのが通常であるから、かかる場合、土地賃貸人が、第三者を相手どつて新たに訴訟を提起する代わりに、土地賃借人との間の既存の訴訟を第三者に承継させて、従前の訴訟資料を利用し、争いの実効的な解決を計ろうとする要請は、民訴法七四条の法意に鑑み、正当なものとしてこれを是認すべきであるし、これにより第三者の利益を損うものとは考えられないのである。そして、たとえ、土地賃貸人の第三者に対する請求が土地所有権に基づく物上請求であり、土地賃借人に対する請求が債権的請求であつて、前者と後者とが権利としての性質を異にするからといつて、叙上の理は左右されないというべきである。されば、本件土地賃貸借契約の終了を理由とする建物収去土地明渡請求訴訟の係属中、土地賃借人であつた第一審被告亡小能見唯次からその所有の地上建物中の判示部分を賃借使用するにいたつた上告人富永キクエに対して被上告人がした訴訟引受の申立を許容すべきものとした原審の判断は正当であり、所論は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎)

2.物権的請求権と債権的請求権で違いがあるか

3.形式説と実質説~既判力拡張の意味

ZにYに由来しない固有の抗弁が存する場合
実質説=承継人に固有の抗弁が成立する場合には、既判力が拡張されることはない!
+判例(S48.6.21)
理由
上告代理人宮崎巌雄の上告理由について。
原審の確定したところによれば、本件土地はもと訴外Aの所有名義に登記されていたが、右登記は上告人Bと右訴外人との通謀虚偽表示による無効のものであつて、本件土地は同上告人の所有に属していたのであり、同上告人の破産管財人は同訴外人に対しこのことを理由として真正な名義回復のため本件土地所有権移転登記手続請求訴訟を提起し、同訴訟は名古屋地方裁判所岡崎支部昭和四二年(ワ)第二二〇六号事件として係属し、昭和四三年四月一七日口頭弁論終結のうえ、同月二六日右請求認容の判決がなされ、同判決はその頃確定したものであるところ、被上告人は、これらの事情を知らずに善意で、同訴外人に対する不動産強制競売事件において、前記訴訟の口頭弁論終結後である昭和四三年六月二七日、本件土地を競落し、同年七月二二日その旨の所有権取得登記を経由したというのである。
以上の事実関係のもとにおいては、上告人Bは、本件土地につきA名義でなされた前記所有権取得登記が、通謀虚偽表示によるもので無効であることを、善意の第三者である被上告人に対抗することはできないものであるから、被上告人は本件土地の所有権を取得するに至つたものであるというべきであるこのことは上告人Bと訴外Aとの間の前記確定判決の存在によつて左右されない。そして、被上告人は同訴外人の上告人Bに対する本件土地所有権移転登記義務を承継するものではないから、同上告人が、右確定判決につき、同訴外人の承継人として被上告人に対する承継執行文の付与を受けて執行することは許されないといわなければならない。
ところが、原審の確定したところによれば、上告人Bは右確定判決につき被上告人に対する承継執行文の付与を受けて、これに基づき、本件土地の所有名義を自己に回復するための所有権移転登記を経由したというのである。
同上告人の右行為は違法であつて、右登記の無効であることは前説示に照らし明らかである。結論において右と同趣旨に帰する原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は理由がない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤林益三 裁判官 大隅健一郎 裁判官 下田武三 裁判官 岸盛一 裁判官 岸上康夫)

4.反射効とはどういうものか

既判力の本質論
実体法説=既判力の内容通りに実体法関係が変更を受けるというもの
権利実在説=判決の既判力によって、はじめて当事者間の実体法関係が実在する
訴訟法説=既判力は実体法関係とは無関係に後訴裁判所への拘束力であるとする

実体法説・権利実在説からは反射効を導きやすい。

・訴訟法説で、
債権者から保証人に対する保証債務履行請求訴訟における保証人敗訴の判決が確定した後に債権者から主債務者に対する主債務履行請求訴訟における主債務者勝訴の判決が確定しても、保証人は、右の主債務者勝訴の確定判決を保証人敗訴の確定判決に対する請求異議の事由にすることはできない。

+判例(S51.10.21)
理由
上告代理人菊池嘉太義の上告理由について
被上告人は、昭和三八年一月六日亡Aに対し一五〇万円を貸与し、上告人外一名がその連帯保証をしたと主張して、Aの相続人ら及び上告人を共同被告として該債務の履行を求める訴訟(松山地裁大洲支部昭和四一年(ワ)第一八号損害賠償請求事件)を提起したところ、右相続人らは被上告人の請求原因事実を争つたが、上告人はこれを認めたので、上告人に関する弁論が分離され、昭和四一年一〇月二六日被上告人の上告人に対する請求を認容する旨の判決がされ、同判決は同年一一月一二日確定した。
他方、右相続人らに対する関係では審理の結果請求原因事実が認められず、昭和四四年一二月三日被上告人の右相続人らに対する請求を棄却する旨の判決がされ、同判決に対しては被上告人から適法な控訴の申立がされたが、控訴審の口頭弁論期日に当事者双方が欠席したことにより昭和四五年八月二六日右控訴が取り下げられたものとみなされた結果、右判決は確定するに至つた。
以上は、原審の適法に確定するところであつて、被上告人と右相続人ら間の右判決謄本である甲第一号証(同号証の成立については、当事者間に争いがないものとされている。)によると、被上告人の右相続人らに対する請求が棄却された理由は、被相続人である亡Aの被上告人に対する主債務の成立が否定されたためであることが明らかであり、原審の右認定の趣旨もここにあるものと解される。
所論は、要するに、上告人に対する前記判決は連帯保証債務の履行を命ずるものであるところ、その主債務は、右判決確定後、主債務関係の当事者である被上告人と右相続人ら間の確定判決により不存在と確定されたから、上告人は、連帯保証債務の附従性に基づき請求異議の訴により自己に対する前記判決の執行力の排除を求めることができる筋合であると主張する。そこで案ずるに一般に保証人が、債権者からの保証債務履行請求訴訟において、主債務者勝訴の確定判決を援用することにより保証人勝訴の判決を導きうると解せられるにしても、保証人がすでに保証人敗訴の確定判決を受けているときは、保証人敗訴の判決確定後に主債務者勝訴の判決が確定しても、同判決が保証人敗訴の確定判決の基礎となつた事実審口頭弁論終結の時までに生じた事実を理由としてされている以上、保証人は右主債務者勝訴の確定判決を保証人敗訴の確定判決に対する請求異議の事由にする余地はないものと解すべきである。
けだし、保証人が主債務者勝訴の確定判決を援用することが許されるにしても、これは、右確定判決の既判力が保証人に拡張されることに基づくものではないと解すべきであり、また、保証人は、保証人敗訴の確定判決の効力として、その判決の基礎となつた事実審口頭弁論終結の時までに提出できたにもかかわらず提出しなかつた事実に基づいてはもはや債権者の権利を争うことは許されないと解すべきところ、保証人敗訴判決の確定後において主債務者勝訴の確定判決があつても、その勝訴の理由が保証人敗訴判決の基礎となつた事実審口頭弁論の終結後に生じた事由に基づくものでない限り、この主債務者勝訴判決を援用して、保証人敗訴の確定判決に対する請求異議事由とするのを認めることは、実質的には前記保証人敗訴の確定判決の効力により保証人が主張することのできない事実に基づいて再び債権者の権利を争うことを容認するのとなんら異なるところがないといえるからである。
そして、原審認定の前記事実に照らせば、本件は連帯保証人である上告人において主債務者勝訴の確定判決を援用することが許されない場合であるというべきであるから、上告人の右援用を否定した原審の判断は正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岸盛一 裁判官 下田武三 裁判官 岸上康夫 裁判官 団藤重光)


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