民事訴訟法 基礎演習 弁論主義


1.弁論主義の意義
弁論主義=判決の基礎となる事実及び証拠の収集および提出について、当事者の責任であり、権限とする原則。
弁論主義の根拠←私的自治説。

2.主張(弁論)と証拠(証拠資料)の峻別
証拠による主張の代用は許されない・・・。

+(訴え提起の方式)
民事訴訟法第133条
1項 訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
2項 訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一  当事者及び法定代理人
二  請求の趣旨及び原因

+(準備書面)
民事訴訟法第161条
1項 口頭弁論は、書面で準備しなければならない。
2項 準備書面には、次に掲げる事項を記載する。
一 攻撃又は防御の方法
二 相手方の請求及び攻撃又は防御の方法に対する陳述
3項 相手方が在廷していない口頭弁論においては、準備書面(相手方に送達されたもの又は相手方からその準備書面を受領した旨を記載した書面が提出されたものに限る。)に記載した事実でなければ、主張することができない

+(口頭弁論の必要性)
民事訴訟法第87条
1項 当事者は、訴訟について、裁判所において口頭弁論をしなければならない。ただし、決定で完結すべき事件については、裁判所が、口頭弁論をすべきか否かを定める。
2項 前項ただし書の規定により口頭弁論をしない場合には、裁判所は、当事者を審尋することができる。
3項 前二項の規定は、特別の定めがある場合には、適用しない。

+(口頭弁論調書)
民事訴訟法第160条
1項 裁判所書記官は、口頭弁論について、期日ごとに調書を作成しなければならない。
2項 調書の記載について当事者その他の関係人が異議を述べたときは、調書にその旨を記載しなければならない。
3項 口頭弁論の方式に関する規定の遵守は、調書によってのみ証明することができる。ただし、調書が滅失したときは、この限りでない。

+(当事者本人の尋問)
第207条
1項 裁判所は、申立てにより又は職権で、当事者本人を尋問することができる。この場合においては、その当事者に宣誓をさせることができる。
2項 証人及び当事者本人の尋問を行うときは、まず証人の尋問をする。ただし、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、まず当事者本人の尋問をすることができる。

3.設問1~弁論主義第1原則の適用

・釈明権の行使について
実体的真実の追及VS当事者間の公平・裁判所の中立性・私的自治

・弁論主義違反の効果
原判決を破棄する上告審では、事件を原審に差し戻すべきかどうか?
差し戻し判決自体が、弁論主義の規律を実質的に無意味なものにする結果を生むのではないか?
→破棄自判したり・・・。

+判例(S55.2.7)
理由
上告代理人酒井祝成の上告理由第一点について
記録によれば、原審における本件請求に関する当事者の主張は、次のとおりである。即ち、上告人らにおいて、(1)本件土地(第一審判決別紙目録第二に記載の土地をいう。)は、上告人ら(原告ら)、A及び被上告人(被告)の亡夫B(昭和三九年九月六日死亡)らの父であるC(昭和三四年五月二六日死亡)が昭和二八年七月三一日、Dから買い受けたのであるが、Bの所有名義に移転登記をしていたところ、Cの死亡により、上告人ら、A及びBは右土地を各共有持分五分の一の割合をもつて相続取得した、(2)しかし、登記名義をそのままにしていたため、Bの死亡に伴い、その妻である被上告人が単独で相続による所有権移転登記を経由した、(3)本件土地は、右のとおり上告人ら、A及びBが共同相続したのであるから、上告人らは、その共有持分権に基づき各持分五分の一の移転登記手続を求める、というのである。これに対し、被上告人は、本件土地はBが真実、Dから買い受けて所有権移転登記を経由したもので、Bの死亡によつて被上告人が相続取得したのであるから、上告人らの請求は理由がない、と主張するのである。

原審は、証拠に基づいて、本件土地はCがDから買い受けて所有権を取得したことを認定し、この点に関する上告人らの主張を認めて被上告人の反対主張を排斥したが、次いで、BはCから本件土地につき死因贈与を受け、Cの死亡によつて右土地の所有権を取得し、その後Bの死亡に伴い被上告人がこれを相続取得したものであると認定し、結局、右土地をCから共同相続したと主張する上告人らの請求は理由がないと判示した。

しかし、相続による特定財産の取得を主張する者は、(1)被相続人の右財産所有が争われているときは同人が生前その財産の所有権を取得した事実及び(2)自己が被相続人の死亡により同人の遺産を相続した事実の二つを主張立証すれば足り、(1)の事実が肯認される以上、その後被相続人の死亡時まで同人につき右財産の所有権喪失の原因となるような事実はなかつたこと、及び被相続人の特段の処分行為により右財産が相続財産の範囲から逸出した事実もなかつたことまで主張立証する責任はなく、これら後者の事実は、いずれも右相続人による財産の承継取得を争う者において抗弁としてこれを主張立証すべきものである。これを本件についてみると、上告人らにおいて、CがDから本件土地を買い受けてその所有権を取得し、Cの死亡により上告人らがCの相続人としてこれを共同相続したと主張したのに対し、被上告人は、前記のとおり、右上告人らの所有権取得を争う理由としては、単に右土地を買い受けたのはCではなくBであると主張するにとどまつているのであるから(このような主張は、Cの所有権取得の主張事実に対する積極否認にすぎない。)、原審が証拠調の結果Dから本件土地を買い受けてその所有権を取得したのはCであつてBではないと認定する以上、上告人らがCの相続人としてその遺産を共同相続したことに争いのない本件においては、上告人らの請求は当然認容されてしかるべき筋合である。しかるに、原審は、前記のとおり、被上告人が原審の口頭弁論において抗弁として主張しないBがCから本件土地の死因贈与を受けたとの事実を認定し、したがつて、上告人らは右土地の所有権を相続によつて取得することができないとしてその請求を排斥しているのであつて、右は明らかに弁論主義に違反するものといわなければならない。大審院昭和一一年(オ)第九二三号同年一〇月六日判決・民集一五巻一七七一頁は、原告が家督相続により取得したと主張して不動産の所有権確認を求める訴において、被告が右不動産は自分の買い受けたものであつて未だかつて被相続人の所有に属したことはないと争つた場合に、裁判所が、証拠に基づいて右不動産が相続開始前に被相続人から被告に対して譲渡された事実を認定し、原告敗訴の判決をしたのは違法ではないと判示しているが、右判例は、変更すべきものである。
そうして、前記違法は、判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、その余の上告理由について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れず、更に審理を尽くさせるのが相当であるから、本件を原審に差し戻すこととする。
よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

4.設問2~間接事実と第1原則の適用の有無

+判例(H11.6.29)
理由
上告代理人金野俊雄の上告理由について
一 本件は、約束手形の所持人である上告人が裏書をした被上告人らに対して手形金の支払を求める訴訟であり、所論は、原判決には、再抗弁についての判断の遺脱があるから、理由不備の違法があるというのである。
二 記録によれば、当事者双方の主張の要点は、次のとおりである。
1 被上告人らは、原因関係の抗弁として、次のように主張した。
(一) 本件手形は、有限会社日ノ出建設が、上告人やその代表者西村武らから本件不動産及び本件出資持分を買い受ける本件売買に当たり、手付金の支払のために振り出して上告人に交付したもので、被上告人らは、その支払を保証する目的で本件裏書をしたものである。
(二) 本件売買には、日ノ出建設が代金支払のために環境事業団から融資を得られたときに初めてその効力を生ずるとの停止条件が付されており、これが成就していないから、本件裏書は原因関係を欠く。
(三) 停止条件ではなく、右融資が得られないときに本件売買の効力を失わせる旨の解除条件であるとしても、日ノ出建設は環境事業団から融資を拒絶され、その条件が成就した。
2 これに対し、上告人は、再抗弁として、日ノ出建設は、故意に環境事業団から融資を得られないようにしたから、(一) 故意に停止条件の成就を妨害したか、又は(二) 故意に解除条件を成就させたものであると主張した。

三 条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときは、民法一三〇条の類推適用により、相手方は条件が成就していないものとみなすことができる(最高裁平成二年(オ)第二九五号同六年五月三一日第三小法廷判決・民集四八巻四号一〇二九頁)。したがって、上告人の右二2(二)の主張(解除条件の成就作出)は、被上告人らの同1(三)の抗弁(解除条件の成就)に対する再抗弁となるべきものである。

四 ところが、原判決は、停止条件の不成就と解除条件の成就をいずれも抗弁として摘示しながら、再抗弁としては、停止条件の成就妨害のみを摘示し、解除条件の成就作出を摘示していない。しかも、原審は、本件売買は解除条件が成就し無効となったから、本件裏書は原因関係を欠くに至ったとして、解除条件成就の抗弁を入れながら、解除条件の成就作出については何らの判断も加えないで、上告人の請求を棄却した。 
 右によれば、原判決には、判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱した違法があるといわなければならない。

五 しかしながら、原判決の右違法は、民訴法三一二条二項六号により上告の理由の一事由とされている「判決に理由を付さないこと」(理由不備)に当たるものではない。すなわち、いわゆる上告理由としての理由不備とは、主文を導き出すための理由の全部又は一部が欠けていることをいうものであるところ、原判決自体はその理由において論理的に完結しており、主文を導き出すための理由の全部又は一部が欠けているとはいえないからである。
したがって、原判決に所論の指摘する判断の遺脱があることは、上告の理由としての理由不備に当たるものではないから、論旨を直ちに採用することはできない。しかし、右判断の遺脱によって、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるものというべきであるから(民訴法三二五条二項参照)、本件については、原判決を職権で破棄し、更に審理を尽くさせるために事件を原裁判所に差し戻すのが相当である。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官金谷利廣 裁判官千種秀夫 裁判官元原利文 裁判官奥田昌道)

++解説
《解  説》
一 本件は、約束手形金の請求事件である。本件約束手形五〇〇〇万円は、原告とその代表取締役の不動産及び原告の訴外甲有限会社への出資持分の譲渡契約の手付金の支払いのために、譲受人乙が振り出し、被告が裏書きをしたものである。この譲渡契約は甲有限会社の営業を引き継いだ乙が環境事業団から一三億円の融資を受けることを条件とし、右事業団融資がされなかったときは、譲渡契約を撤回することが、原告、乙、被告との間で合意された。その後、原告は事業団融資の申請に必要な書類を乙に交付した。しかし、乙は、融資申請に必要とされる申込保証金を調達すべく、金融機関に融資を申し入れたが、適切な担保を欠くとして、融資を受けることができず、結局、環境事業団に対する融資申請をしなかった
右の事実関係の下において、被告は、原因関係の抗弁として、事業団融資を停止条件とする旨の合意又は事業団融資がないことを解除条件とする旨の合意と右解除条件の成就を主張し、原告は、乙が右事実関係の下で補助金申請をしなかったことは、故意に、停止条件の成就を妨げ(民法一三〇条)、又は解除条件を成就させたものであると主張した。
一審判決は、手付合意の趣旨に照らせば、右譲渡契約が無効になったことは手付の返還理由とならないとして、被告の抗弁を排斥した。
控訴審では、原告は、従前主張を一審判決事実摘示の通りとし、当事者の主張は専ら停止条件の成否に向けられた。ところが、控訴審判決は、抗弁として、前記停止条件の合意と解除条件の合意と成就を摘示しながら、再抗弁では、故意による停止条件の成就妨害のみを掲げ、認定においては、本件合意が解除条件の合意であったとし、右条件の成就を認め、これに対する再抗弁の主張はないものとして、請求を棄却した。

二 原告から、原告の主張した解除条件の故意による成就の主張を摘示せず判断しなかった控訴審判決の判断は、判断遺脱に当たるから理由不備があるとして上告が申し立てられた。
本判決は、訴訟経過に照らして、控訴審においても解除条件の故意による成就の主張が維持されていたことは明らかであるとして、控訴審判決に影響を及ぼすべき重要な事項についての判断を遺脱した違法があるとしたが、上告理由としての理由不備とは「主文を導き出すための理由の全部又は一部が欠けていること」をいうとし、本件の控訴審判決は、それ自体においては、論理的に完結しており、主文を導き出すための理由の全部又は一部が欠けているものではないから、民訴法三一二条二項六号の事由には該当しないが、右の違法によって、控訴審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるものというべきであるとして、民訴法三二五条二項により、職権をもって、控訴審判決を破棄し、事件を差し戻した

三 民訴法改正による上告制度の改正により、上告理由は、従来の法令違反を除外し、絶対的上告理由を中心に整理された。そうすると、民訴法三一二条二項六号に規定する理由不備・齟齬の内容に、法令の解釈の過誤の結果、当該法令の適用についての理由が不十分であったり、理由に一貫性がないというものを含むと解することは相当ではない。
そこで、上告理由たる理由不備の内容は何かが問題となる。法令の解釈適用の違法がこれに含まれないことは新法の改正趣旨から明らかであり、他の上告事由との対比からは、判決の結論への影響にかかわらず放置することが許されないような判決の違法ということができよう
本判決は、かかる観点から、控訴審判決の違法は、判決に影響を及ぼすべき重要な事項についての判断遺脱であるとしながら、上告事由たる理由不備とは、上告された判決の主文を導き出すための理由の全部又は一部が欠けていることをいうとし、本件では、控訴審判決の記載は、当事者の主張の摘示を欠いたため、その理由において論理的に完結しており(原告の主張がないから判断しなかったことになる)、主文を導き出すための理由の全部又は一部が欠けているとはいえないから、本件では、理由不備には当たらないとした。ただし、右違法(判断遺脱)は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反に当たるとして、職権をもって、原判決を破棄し、差し戻した。

四 控訴審判決に原告の再抗弁が正しく摘示され、その判断がされなかった場合には、再審事由たる判断遺脱に当たるとともに、本判決の基準によっても、理由不備に該当することになる。また、法三一二条二項各号に掲げる他の上告事由は記録から当該違法が判明する場合を予定している。そうすると、「判決の主文を導き出すための理由の全部又は一部が欠けていること」が、判決自体からは明らかでなく、記録から認められる場合にも理由不備とすべきであるとの見解が考えられよう。また、再審事由たる「判決に影響を及ぼすべき重要な事項についての判断遺脱」にいう「判決に影響を及ぼすべき事項」とは、判決の主文を導き出すための論理過程で判断が必要となる主要事実(重要な間接事実)をいうもので、旧法下での法令違背・新法下での職権破棄事由たる法令違反にいう「判決に影響を及ぼすことが明らか」(結論への具体的影響の蓋然性)とは意味を異にし、判断遺脱は理由不備・理由齟齬の中で判決として放置することが許されない類型に当たるとして、再審事由とされたものであるから判決自体からは判明しない判断遺脱をも理由不備に含ませるべきであるとの見解も考えられよう。
しかし、当事者の主張の整理とは、当事者の主張を理解し、法的に必要な事実を選別し、これを整序するという過程を経てされるものであり、その過程では、事案に対する法の解釈・適用が不可避である。したがって、記録に照らして、当事者の主張の整理の違法を上告理由とすることは上告事由の性格と馴染まない。当事者の主張を看過することと、摘示した主張の判断を欠くこととは、前者の方が瑕疵が大きいともいえるが、上告事由の観点からすれば、後者こそ上告手続により是正すべきものということになろう。
もっとも、理由不備の意義を本判決のように解するときは、主要事実の摘示及び判断の双方が遺脱している場合に、これが理由不備に該当しないと正しく解釈し「判断遺脱」のみを理由として上告したときは、上告事由の記載を欠くことになり、原審で却下し(民訴法三一六条)、最高裁においては決定却下(民訴法三一七条)すべきものであるから、速やかに判決を確定させた上、正当な救済方法である再審によるべきであるということになろう。他方、本判決が、再審事由に当たることから、直ちに職権破棄事由たる法令違反に該当するとしたことは、結論への具体的影響の蓋然性の要件を緩和してでも、上告手続において再審事由の是正を図ったものともいえる。また、上告受理の理由として、かかる判断遺脱が主張されているときは、法令解釈の統一という観点からは重要な事項(民訴法三一八条)でないとしても、再審事由該当性が肯定できる限り、受理を相当とする余地もあろう。

五 本判決は、上告事由たる理由不備の意義を民訴法改正の趣旨に即して明らかにしたものであり、再審事由との関係を明らかにしたものではない。本判決が発したメッセージは、まず、新法における上告理由たる理由不備の意義につき厳格な立場を採用し、判決自体から明らかでない主要事実の判断遺脱が上告事由に該当しないということにある。もっとも、再審事由たる判断遺脱が肯認できる場合には、職権破棄の対象となることを示し、上告手続において可及的是正の方途を示した(原審は、判断遺脱のみの上告理由に対しても、その事由が肯認できるときは、原審却下をすべきではない)とみるか、再審事由との峻別を示唆し、上告手続の純化を図った(原審は、判断遺脱のみの上告理由に対しては、その事由が肯認できるかどうかを問わず、原審却下すべきである)とみるかについては、今後の学説及び判例の展開に委ねられたといえよう。

+(上告の理由)
第312条
1項 上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。
2項 上告は、次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができる。ただし、第四号に掲げる事由については、第34条第2項(第59条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない。
一  法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
二  法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
三  専属管轄に関する規定に違反したこと(第6条第1項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)。
四  法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
五  口頭弁論の公開の規定に違反したこと。
六  判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること
3項 高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができる

+(条件の成就の妨害)
民法第130条
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

+++解説
130条はどんな場合に適用されるか。
Aさんは、ある土地を売ろうと思ったのですが、自分で買い手を探すのがめんどくさいので、不動産業者であるBに、売買を依頼しました。そして、買い手を見つけてきて、自分の代わりに土地を売ってきてくれることを条件に一定の報酬を支払うことを約束しました。その後、不動産業者であるBは、買い手であるCを見つけてきました。その時、ここぞとばかりに、Aが勝手にCと売買契約の締結をしてしまいました。
このような場合が一番典型的に問題になる事例です。
普通に考えると、BはCと売買契約を締結することができませんでしたので、条件は成就していませんよね。Aが直接にCと契約をしてしまったわけですから。とすると、せっかくBは買い手であるCを探してきたのに、報酬を得ることができなくなります。
でも、こんなバカな話はないですよね。買い手を探してきて、売ろうとした時に、突然Aが出てきて勝手に契約してしまったんですから。ですから、このような場合は、Bは条件が成就したとみなすことができるとしたのです。したがって、Bは条件が成就したとして、Aに報酬を請求することができます。
さきほどの事例を条文に合わせて考えてみます。まず、「条件が成就することによって不利益を受ける当事者」というのは、Aです。なぜなら、条件が成就すると、Bに対して報酬を支払わなければなりませんから。そのAが、「買い手を見つけてきて土地を売る」という条件を成就する寸前に、横取りするような感じで故意に妨害したわけです。ですから、「相手方」であるBは条件を成就したものとみなすことができ、報酬を請求することができることになります。

・別の債務の弁済という事実の位置づけ

+判例(S30.7.15)
理由
上告代理人弁護士高橋義一郎、同鈴木紀男の上告理由第一点について。
弁済の抗弁については、弁済の事実を主張する者に立証の責任があり、その責任は、一定の給付がなされたこと及びその給付が当該債務の履行としてなされたことを立証して初めてつくされたものというべきであるから、裁判所は、一定の給付のなされた事実が認められても、それが当該債務の履行としてなされた事実の証明されない限り、弁済の点につき立証がないとして右抗弁を排斥することができるのであつて、右給付が法律上いかなる性質を有するかを確定することを要しないものと解するを相当とする。そこで本件の場合はどうかというと、原判決は、証拠により上告人等から被上告人に対して所論各金員の給付がなされたことはあるが、右はいづれも本件消費貸借債務の弁済として給付がなされたものでなかつたことを認めることができるものとしているのであるから、積極的に右給付の法律上の性質までも判示する必要がないものといわなければならない。されば、原判決が上告人の弁済の抗弁を排斥したことは正当であつて、論旨は理由がない。

同第二点について。
原判決は、抵当権の被担保債権はそれが無効のものでない限り抵当権設定義務者においてこれが登記を拒み得ないとした上、利息制限法(旧)の制限範囲を超過する約定利息も、その約定が公序良俗違反により無効でない限りこれをもつて直ちに無効のものといえず、また、同法はその制限外の利息を裁判上請求し得ないとするだけであつて、制限外の利息の支払契約に基く利息債権を被担保債権として登記することを不可とするものでないとし、月一割の利息の約定を公序良俗違反でないと認めてこの部分についての被上告人の抵当権登記請求を認容している。しかし旧利息制限法二条にいわゆる裁判上無効とは、単に同条所定の利率を超える約定利息の支払を裁判上請求する場合にのみこれを無効とすべきことを意味するものではなく、いやしくもかかる制限超過の利息に関する限りその債権を原因とする法律的請求はすべてこれを裁判上無効とすべき趣旨をも含むものと解さなければならない
蓋し、同条は、制限超過の利息については原則としてこれを無効として裁判上の救済を与えることを拒否し、もつて債務者を保護しようとしたものと解すべきであり、従つて、かかる利息については、債務者が任意にこれを支払う限りその支払を有効な弁済としてその取戻を請求することは認めないにせよ、債務者の意思に反してその支払の強制その他これを原因とする法律上の主張または強制をすることはすべて裁判上これを否定すべきものとしたものと認めるのを妥当とするからである。しからば、制限超過の利息も単に裁判上請求し得ないだけであつて、当然に無効ではなく、その部分についての登記を妨げないことを理由とし、これにつき抵当権の登記請求を認容した原判決の部分は旧利息制限法二条の法意を誤解したものであつて、論旨は理由あり、従つて原判決中上告人において被上告人に対し旧利息制限法の制限超過の利息債権を担保するため被上告人のため抵当権設定登記手続をなすことを命じた部分は破棄を免れない。そして原判決の確定した事実によれば右の部分の被上告人の請求については裁判をするに熟するから当裁判所において自判すべきものであり、右破棄部分以外の原判決は正当であるから、この点に関する上告は棄却すべきものである。
よつて民訴四〇八条、三九六条、三八四条、九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。
(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

+判例(S46.6.29)
理由
上告代理人田中幹則の上告理由について。
原告の請求をその主張した請求事実原因に基づかず、主張しない事実関係に基づいて認容し、または、被告の抗弁をその主張にかかる事実以外の事実に基づいて採用し原告の請求を排斥することは、所論弁論主義に違反するもので、許されないところである被告が原告の主張する請求原因事実を否認し、または原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が右請求原因または抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もつて右請求原因たる主張または抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によつて主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない!!!!
けだし、右の場合に主張者たる当事者が不利益を受けるのはもつぱら自己の主張にかかる請求原因事実または抗弁事実実の立証ができなかつたためであつて、別個の事実が認定されたことの直接の結果ではないからである。
本件についてこれをみるに、上告人において、訴外刀野の被上告人に対する弁済を主張するについては、訴外刀野において債務の履行に適合する給付をしたことのほか、右給付が本件手形金債権によつて担保された原判示の原因債権に対応する債務の履行としてなされたものであることの二つの点を立証する責務を負うものであるところ、原判決は、その措辞に正鵠を欠く点はあるが、要するに、刀野が被上告人に支払つた原判示の金員は、刀野において別に被上告人に対して負担していた五〇万円の借入金債務の内入れ弁済として支払つたものであることを認定することにより、上告人の抗弁は、後者の点についての立証をくものとしてこれを排斥したものと認められる。してみれば、原判決にはなんら弁論主義違背のかどはないものというべきである。また、原判決は、刀野の支払にかかる金員は別口の債務に全額充当されることを確定したのであるから、原審が所論法定充当の規定の適用を考慮する余地はなかつたものであり、この点においても原判決に所論の違法はない。なお、口頭弁論を再開しなかつた原審の措置を違法として非難する所論は、裁判所の裁量に属する行為について不服を述べるものにすぎず、また、刀野が前記金員の支払に際し、これを本件手形金の支払に充当すべき旨指定をしたとして、原審の事実認定を非難する所論は、記録によるも右指定をなした事実が原審で主張された事実は認められないから、その前提を欠くことに帰する。したがつて、論旨は、いずれも採用することができない。
よつて民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(田中二郎 下村三郎 松本正雄 関根小郷)

5.代理に関する主張の要否

+判例(S33.7.8)
理由
上告代理人山川常一の上告理由第一点について。
本件において、被上告人は同人と上告人との間に昭和二四年三月一八日上告人の買受ける黒砂糖を被上告人が斡旋し、その斡旋料として一斤につき金一〇円宛を上告人が被上告人に支払うことを約束し、被上告人は右約旨に基き黒糖四三〇〇斤を上告人に斡旋して買受けさしたので、上告人に対し金四三〇〇〇円の斡旋料を請求すると主張し、原審は被上告人の右請求を認容し、上告人にその支払を命じたこと、記録上明らかである。そして、民訴一八六条(現246条)にいう「事項」とは訴訟物の意味に解すべきであるから、本件につき原審が当事者の申立てざる事項に基いて判決をした所論の違法はない。なお、斡旋料支払の特約が当事者本人によつてなされたか、代理人によつてなされたかは、その法律効果に変りはないのであるから、原判決が被上告人と上告人代理人増谷照夫との間に本件契約がなされた旨判示したからといつて弁論主義に反するところはなく、原判決には所論のような理由不備の違法もない
同第二点について。
所論代理の事実は、証人A(記録五三丁裏)同B(同二〇七丁)被上告本人(同二一三丁裏)の各供述によつて認められ、これらの供述は、被上告人の援用するところであるから、原判決には所論の違法はない。同第三点及び第四点について。
所論のような具体的事実の認定はこれを要するものではなく、原判決挙示の証拠によれば判示事実を認めることができるので、原判決には所論の違法はない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己)


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