刑法プラス 207条関係


 第一、控訴趣意二の(一)(2)に対する判断。
原判決は、公訴事実第一については、被告人C、同Dの共犯関係を否定し、各自の単独犯行と被告人Dの―被告人Cに対する―幇助が成立するとした。原判決挙示のGの検祭官に対する昭和三一年九月二八日附供述調書(記録一六一丁)、被告人C、同D、同Bの各検察官に対する供述調書によれば、被告人C、同Dの両名が、被害者Fを強姦すべく共謀した事実はなくかつ、被告人Dの原判示第二の(二)の犯行の際には、被告人Cは既に現場を去つて、全然関与しなかつたことが明らかであるから、原判決が、被告人Cの原判示第一の所為と被告人Dの原判示第二の(二)の所為とを共犯とはせず、後者を被告人Dの単独犯行としたのは正当である。
しかしながら、被告人Dの被告人Cに対する原判示第二の(一)の幇助の成否については疑点がある。即ち、原判決の認定した被告人Dの第二の(一)の事実というのは「被告人Dは―中略―前記稗畑に馳せつけたところ、当時被告人Cは、連行したFを稗束の側に立たせていたが、間もなく同被告人が同女を稗束の上に仰向けに押し倒し、側に来た被告人Dや、G等に対して「押えてろや」と声を掛けて助勢を求めたので、既に、被告人Cの行動から、同被告人がまさにFを姦淫しようとしていることを熟知しながら、その意を受け、両手を以て右Cに乗りかかられて危難を避けようとして抵抗を続けている同女の左大腿部及び左膝の下附近を押えた―後略」というのであつて、この事実は、原判決挙示の証拠によつて、優に認定し得る。この事実によれば、被告人Cが被害者Fを強姦すべく、既に、その実行行為に着手したのに対し、被告人Dは、自身ではFを姦淫する意思はなかつたが、被告人Cの姦淫を遂げさせるために、抵抗するFの左大腿部及び左膝の下辺を圧えつけて、その反抗を抑圧したということになる。
ところで、刑法六二条にいわゆる幇助とは、犯罪の実行行為以外の助言、助力等によつて、正犯の犯罪の実行を容易ならしめることをいうのであつて、さらに進んで実行行為そのものを分担した場合には、それが専ら他人の犯罪を幇助する意思で為されたとしても、既に従犯ではなく、共同正犯を以て論ずべきものである。
本件においても、被告人Cは、自身の力では―原判示第一のとおり―Fを抑えつけることが容易でなかつたため、それまで傍観していた被告人Dその他に声をかけて助力を求め、なおも必死に抵抗するFの手足を押さえ、頭部、顔面を上衣で覆わせるなどして、ようやくFの反抗を抑圧したことは、証拠上明白であるから、この場合、被告人Dが、被告人Cの求めに応じて、Fの左大腿部、左膝の下辺を押えつけたのは、とりもなおさずFの反抗を抑圧する行為で、強姦罪の実行行為中重要部分を担当したものに外ならない。しかも、被告人Cの求めに応じたもので、両者間に意思の連絡のあつたことも、また、明白であるから、被告人Dは被告人Cの強姦の所為に共同加功したもので、共同正犯の責任を免れることはできない。従つて、原判決が、原判示第一の所為を被告人Cの単独犯行とし、被告人Dの原判示第二の(一)の所為を幇助としたのは事実を誤認したもので、この誤りは、原判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点において、原判決中被告人C、同Dに関する部分は破棄を免れない。論旨は、この限度において理由がある。

第三、控訴趣意二の(一)(3)について。
いわゆる同時犯に関する刑法二〇七条は、法文上明らかなとおり、傷害の結果またはその軽重について法律上の推定をなすのであるから、個人責任の原則に反し、刑法上重大な特例である。従つて、これを厳格に解釈し、みだりに外形上類似の犯罪にまで拡張適用すべきものではない。強姦罪は、本来性道徳に関する犯罪で、それが致傷の結果を伴う場合には、強姦致傷罪として刑を加重するに過ぎないのであるから、これと全く保護法益を異にする暴行、傷害に関する特例規定である刑法二〇七条の適用はないと解すべきである。!!!!!!ナントオオオオ
かく解することによつて、所論のように、刑の不均衡、犯罪捜査の困難を来たすことがあろうとも、右明文上の重大な特例に加えて、さらに解釈上の特例を設けることは、罪刑法定主義の建前からも厳に慎まなければならない。従つて、原判決が、被告人等の原判示各所為に対して、右法条を適用せず、全被告人を強姦罪もしくは強姦未逐罪を以て処断したことは正しく、この点において所論法令の道用を誤つた違法は存しない。論旨は理由がない。


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