制限行為能力者(被保佐人)と詐術、返済の範囲


保佐人の同意なくして、自己所有の物を売却した場合、買い受けた者はいかなる主張をなしうるか。

1.「重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること」(民法13条1項3号)にあたる場合、被保佐人は、保佐人の同意またはこれに代わる許可を得ずになした当該契約を取り消しうる(13条4項)。
数百万するような美術品の購入などこれに当たる。

2.自分が被保佐人であることを黙って契約を締結した場合「詐術」(21条)に当たり取り消しえないとの主張はどうか。
21条の趣旨は制限行為能力制度の弊害を緩和し、可及的に取引の安全を図る点にある。かかる趣旨に鑑みると21条の「詐術」の概念は拡大して解釈する必要がある。そこで、積極的術策を用いた場合のみならず、制限行為能力者であることを黙秘していた場合でも、他の言動と相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めたと認められるときも詐術に当たる。
→黙っていたに過ぎない場合は詐術に当たらない。 

3.被保佐人の取消しにより、当該契約は遡及的に無効になる(121条本文)。したがって、買受人は不当利得に基づく利得金返還請求権(703,704条)の主張をなしえそうである。ところが、121条但し書きは制限行為能力者の返還義務の範囲を「現に利益を受けている限度」としている。そこで、いかなる範囲で返還請求権の主張をなしうるか、現存利益の内容が問題となる。
現存利益とは受けた利益がそのままのかたちで、またはかたちを変えて残っている場合である。そこで、浪費してしまったときは現存利益は存しないが、生活費に充てた時には現存利益は残っているものと考える。
→ギャンブルでの浪費は現存利益は存しない。生活費の分は存する。

・・・。ほんとにこれでよいのかは疑問だが。