・内閣は(×内閣総理大臣は)、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議をうけ議決をへなければならない(86条)。
・会計年度の期間については憲法上明文の規定はないが、国会の常会が毎年召集することとされており、また、決算について毎年会計検査院が検査することとされていることから、憲法は会計年度を一年とすることを予定しているといえる。
・継続費は、工期その他の事業でその完成に数年を要するものについて、特に必要がある場合に、数年にわたる支出を認めるものであるが、これは会計年度独立の原則の例外である。
・継続費について明治憲法は明文でこれを定めていた。
・予算のうち歳出に関する部分は、関係国家機関の支出の準則として法的拘束力を有する。
・歳入に関する部分は、各種租税法令等によって徴収・収納されるものであるから、性質上予測的意味を持つに過ぎない=法的拘束力を有しない→国の歳入が歳入予算に定められた金額を超えると見込まれる場合であっても、補正予算の作成・提出や国会の承認は必要とされない!!
・予算とは一会計年度における国の財政行為の準則である。
・予算法律説は83条の財政民主主義の原則を中心に置き、予算という名称の法律の議決には、原則として59条1項が適用され、「憲法に特別の定めのある場合」として60条の衆議院の先議権と衆議院の優越が適用される。
・予算法形式説は、予算が法律と異なると解する根拠の一つとして、予算は一般国民を拘束するものではなく国家機関(政府)のみを拘束するものであることをあげている。
・予算法形式説によれば、一般に、法律の執行に必要な費用が予算に計上されていないとき、内閣には補正予算提出義務があり、予算と法律の不一致を解消するように求められる。
・予算行政説によれば、予算の拘束力の根拠は予算それ自体には求められず、租税等財産関係の諸法律に求められる。
・憲法83条の趣旨からして、国会は提出された予算案につき、減額修正、増額修正のいずれもなしうると解されている←国会法や財政法には、増額修正を想定した規定が置かれている。
・減額修正に関しては内閣の発案権を積極的に侵害することにはならないため、予算議決権の当然の内容として認められ、国会の修正権に制限はない。
・明治憲法は、議会の減額修正に制限を加えていた。(この関係で増額修正は当然許されないと考えられていた)
・予算と法律との間の不一致に対処する憲法上の規定は設けられていないが、年度途中に予算に計上されていない経費を要する法律が成立した場合には、内閣は法律を誠実に執行しなければならないから(憲法73条1号)、補正予算、経費流用、予備費などの予算措置をとる義務がある。
・予備費の支出については事後の国会の承諾が必要とされる(憲法87条2項、財政法36条3項)、経費流用と補正予算については事後の国会の承諾は条件とされていない。!!
・予算超過支出の場合に加え、予算外支出の場合にも87条1項の趣旨は及ぶ。→「予備費」には、両者を含む。
・予備費を設けるための国会の議決には、衆議院の優越が認められる。←「国会の議決」(87条1項)は予算の決議としてなされるから。
・予備費の支出につき、内閣は事後に国会の承認を得なければならないが、承諾が得られない場合でも、支出が法的に無効になるわけではない。=不承諾は内閣の予備費支出を不当とし、その責任を問う意思表示であって、すでになされた支出行為の効力に何ら影響を及ぼすものではない。
・決算は、内閣が次の年度に国会に提出しなければならない(90条1項)。
・決算は、予算が適正に執行されたかを検討し、予算を執行する内閣の責任を明らかにすることによって、将来の財政計画や予算編成に役立てるために設けられている制度である。
・決算に法規範性はない。
・会計検査院は内閣に対して独立の地位を有する。
・決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない(90条1項)。
・決算制度は歳入歳出の予定準則が、現実に適正に行われたかを検討し、それによって内閣の責任を明らかにするとともに、将来の財政計画や予算編成に資することを目的としたものである。→国会が修正を加えることはできず、また、不承認の議決がなされても、既になされた収入支出には影響はない。
・従来の慣行では、決算に対する国会の審議・議決は各議院それぞれが行えばよいとされており、両議院交渉の案件ではなく、報告案件とされている。
・内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少なくとも毎年1回、国の財政状況について報告しなければならない。
・「財政状況」は予算及び決算を含めた財政一般を意味する→国会に対しても、予算と決算を除く「財政状況」について報告する必要がある。