・賃貸借契約に基づく目的物返還請求訴訟の請求原因事実
①賃貸借契約を締結したこと
②賃貸借契約に基づく目的物引渡し
③賃貸借契約の終了原因事実
←引き渡しが請求原因事実となるのは、賃貸借契約は諾成契約であって(601条)、合意だけで成立するが、目的物の返還請求をするためには、契約に基づいてその目的物を引き渡していたことが前提!
+(賃貸借)
第601条
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
・借主が金銭を支払うことを約束して契約を締結した場合、その額の多寡にかかわらず賃貸借契約が成立するわけではない!!!
+判例(S35.4.12)
上告代理人倉石亮平の上告理由について。
所論の点に関し原判決が認めた事実の要旨は、(一)上告人Aは本件二階建店舗一棟を所有中上告人Bが自己(A)の妻の伯父に当るという特殊の関係に基いて昭和二二年中から右建物の二階七畳と六畳の二室を上告人Bに貸しBはこれを借り受け使用する(七畳の方は上告人Aも使用する)契約をしたが、普通右の室を他人に貸すとすれば室代は一畳当り一ケ月千円位を相当としたのであるが右親戚の間柄なる故室代ではないが室代ということにして上告人Bは上告人Aに一ケ月千円宛を支払うことにした、また、(二)上告人Aは右建物のうち二階六畳の一室を自己(A)の妻の弟で学生である上告人Cに昭和二八年頃から貸して使用させているけれども、上告人Cは上告人Aとともに同家で食事しているので食費として一ケ月三千五百円宛をこれに支払つており、別に一ケ月千円宛を室代ではないが室代ということにして支払うことにした、というのである。
してみれば、原判決が、右(一)、(二)の上告人B、同Cの一ケ月千円宛の各支払金はいずれも判示各室使用の対価というよりは貸借当事者間の特殊関係に基く謝礼の意味のものとみるのが相当で、賃料ではなく、右(一)、(二)の契約は使用貸借であつて賃貸借ではないと解すべき旨を判示し、そして、被上告人は、右各契約後、上告人Aより本件建物の所有権を取得したけれども、被上告人はこれによつて上告人Aの右各室についての使用貸借関係を法律上承継するものではない、としたのはすべて相当というを妨げない。されば論旨が右貸借を賃貸借と解すべきものとし、借家法一条により上告人らは被上告人に対し前示各室の賃借権を対抗しうべきものとする主張は採用することができない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
・賃貸借契約は、当事者の合意だけで成立するから、諾成契約である!
・建物賃貸借における敷金は、賃貸借終了後建物明渡義務履行までに生ずる賃料相当額の損害金債権その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得する一切の債権を担保するものであり、 敷金返還請求権は、賃貸借終了後建物明渡完了の時においてそれまでに生じた上記の一切の被担保債権を控除しなお残額がある場合に、その残額につき発生する!!
+判例(S48.2.2)大切!
上告代理人山下勉一の上告理由について。
原判決の確定したところによれば、訴外Aは、昭和三四年一〇月三一日、訴外Bから、同人所有の本件家屋二棟を資料一か月八〇〇〇円、期間三年の約で借り受け、敷金二五万円を同人に交付したが、右賃貸借契約においては、「右敷金ハ家屋明渡ノ際借主ノ負担二属スル債務アルトキハ之ニ充当シ、何等負担ナキトキハ明渡ト同時ニ無利息ニテ返還スルコト」との条項が書面上明記されていたこと、被上告人は、昭和三五年中、競落により本件各家屋の所有権を取得して、Aに対する賃貸人の地位を承継し、その結果右敷金をも受け継いだところ、右賃貸借は昭和三七年一〇月三一日期間満了により終了し、当時賃料の延滞はなかつたこと、被上告人は、Aから本件各家屋の明渡義務の履行を受けないまま、同年一二月二六日、これを訴外Cに売り渡し、かつ、それと同時に、右賃貸借終了の日の翌日から右売渡の日までのAに対する明渡義務不履行による損害賠償債権ならびに過去および将来にわたり生ずべきAに対する右損害賠償債権の担保としての敷金をCに譲渡し、その頃その旨をAに通知したが、右譲渡につきAの承諾を得た事実はなかつたこと、その後CがAに対して提起した訴訟の一、二審判決において、AがCに対して本件各家屋明渡義務および一か月二万四九四七円の割合による賃料相当損害金の支払義務を負うことが認められたのち、昭和四〇年三月三日頃もCとAとの間において、CのAに対する右賃料相当損害金債権のうちから、本件敷金などを控除し、その余の損害金債権を放棄する旨の和解が成立し、同年四月三日頃AがCに対し本件各家屋を明渡したこと、以上の事実が認められるというのであり、他方、上告人が、Aに対する強制執行として、昭和四〇年一月二七日、Aの被上告人に対する本件敷金返還請求権につき差押および転付命令を得、同命令が同月二九日Aおよび被上告人に送達された事実についても、当事者間に争いがなかつたことが明らかである。
原判決は、以上の事実関係に基づき、本件賃貸借における敷金は、賃貸借存続中の賃料債権のみならず、賃貸借契約終了後の家屋明渡義務不履行に基づく損害賠償債権をも担保するものであり、家屋の譲渡によつてただちにこのような敷金の担保的効力が奪われるべきではないから、賃貸借終了後に賃貸家屋の所有権が譲渡された場合においても、少なくとも旧所有者と新所有者との間の合意があれば、貸借人の承諾の有無を問わず、新所有者において敷金を承継することができるものと解すべきであり、したがつて、被上告人がCに本件敷金を譲渡したことにより、Cにおいて右敷金の担保的効力とその条件付返還債務とを被上告人から承継し、その後、右敷金は、前記の一か月二万四九四七円の割合により遅くとも昭和三八年九月末日までに生じた賃料相当の損害金に当然に充当されて、全部消滅したものであつて、上告人はその後に得た差押転付命令によつて敷金返還請求権を取得するに由ないものというべきであり、なお、右転付命令はすでに敷金をCに譲渡した後の被上告人を第三債務者とした点においても有効たりえない、と判断したのである。
思うに、家屋賃貸借における敷金は、賃貸借存続中の賃料債権のみならず、賃貸借終了後家屋明渡義務履行までに生ずる賃料相当損害金の債権その他賃貸借契約により賃貸人が貸借人に対して取得することのあるべき一切の債権を担保し、賃貸借終了後、家屋明渡がなされた時において、それまでに生じた右の一切の被担保債権を控除しなお残額があることを条件として、その残額につき敷金返還請求権が発生するものと解すべきであり、本件賃貸借契約における前記条項もその趣旨を確認したものと解される。しかしながら、ただちに、原判決の右の見解を是認することはできない。すなわち、敷金は、右のような賃貸人にとつての担保としての権利と条件付返還債務とを含むそれ自体一個の契約関係であつて、敷金の譲渡ないし承継とは、このような契約上の地位の移転にほかならないとともに、このような敷金に関する法律関係は、賃貸借契約に付随従属するのであつて、これを離れて独立の意義を有するものではなく、賃貸借の当事者として、賃貸借契約に関係のない第三者が取得することがあるかも知れない債権までも敷金によつて担保することを予定していると解する余地はないのである。したがつて、賃貸借継続中に賃貸家屋の所有権が譲渡され、新所有者が賃貸人の地位を承継する場合には、賃貸借の従たる法律関係である敷金に関する権利義務も、これに伴い当然に新賃貸人に承継されるが、賃貸借終了後に家屋所有権が移転し、したがつて、賃貸借契約自体が新所有者に承継されたものでない場合には、敷金に関する権利義務の関係のみが新所有者に当然に承継されるものではなく、また、旧所有者と新所有者との間の特別の合意によつても、これのみを譲渡することはできないものと解するのが相当である!!!!!!!!!!!。このような場合に、家屋の所有権を取得し、賃貸借契約を承継しない第三者が、とくに敷金に関する契約上の地位の譲渡を受け、自己の取得すべき貸借人に対する不法占有に基づく損害賠償などの債権に敷金を充当することを主張しうるためには、賃貸人であつた前所有者との間にその旨の合意をし、かつ、賃借人に譲渡の事実を通知するだけでは足りず、賃借人の承諾を得ることを必要とするものといわなければならない。しかるに、本件においては、被上告人からCへの敷金の譲渡につき、上告人の差押前にAが承諾を与えた事実は認定されていないのであるから、被上告人およびCは、右譲渡が有効になされ敷金に関する権利義務がCに移転した旨、およびCの取得した損害賠償債権に敷金が充当された旨を、Aおよび上告人に対して主張することはできないものと解すべきである。したがつて、これと異なる趣旨の原判決の前記判断は違法であつて、この点を非難する論旨は、その限度において理由がある。
しかし、さらに検討するに、前述のとおり、敷金は、賃貸借終了後家屋明渡までの損害金等の債権をも担保し、その返還請求権は、明渡の時に、右債権をも含めた賃貸人としての一切の債権を控除し、なお残額があることを条件として、その残額につき発生するものと解されるのであるから、賃貸借終了後であつても明渡前においては、敷金返還請求権は、その発生および金額の不確定な権利であつて、券面額のある債権にあたらず、転付命令の対象となる適格のないものと解するのが相当である。そして、本件のように、明渡前に賃貸人が目的家屋の所有権を他へ譲渡した場合でも、貸借人は、賃貸借終了により賃貸人に家屋を返還すべき契約上の債務を負い、占有を継続するかぎり右債務につき遅滞の責を免れないのであり、賃貸人において、貸借人の右債務の不履行により受くべき損害の賠償請求権をも敷金によつて担保しうべきものであるから、このような場合においても、家屋明渡前には、敷金返還請求権は未確定な債権というべきである。したがつて、上告人が本件転付命令を得た当時Aがいまだ本件各家屋の明渡を了していなかつた本件においては、本件敷金返還請求権に対する右転付命令は無効であり、上告人は、これにより右請求権を取得しえなかつたものと解すべきであつて、原判決中これと同趣旨の部分は、正当として是認することができる。
したがつて、本件敷金の支払を求める上告人の請求を排斥した原判決は、結局相当であつて、本件上告は棄却を免れない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
+++転付命令とは
金銭債権に対する強制執行の場合に,差押えられた債権を支払いに代えて差押え債権者に移転する命令 (民事執行法 159) 。転付命令は債務者および第3債務者に送達され,これが確定すると,差押え債権者の債権および執行費用は,転付の対象となった金銭債権が存在するかぎり,その券面額で,転付命令が第3債務者に送達されたときに弁済されたものとみなされる (160条) 。
・賃貸借契約終了に伴う賃借人の建物明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、特別の約定のない限り、同時履行の関係に立たず、賃貸人は、賃借人から建物明渡しを受けた後に敷金全額を返還すれば足りる!!
+判例(S49.9.2)
同第三点について。
原審は、被上告人が任意競売手続において昭和四五年一〇月一六日本件家屋を競落し同年一一月二一日競落代金の支払を完了してその所有権を取得し同月二六日その所有権移転登記を経由したこと、および、上告人が本件家屋の一部を占有していることを認定したうえ、上告人が昭和四四年九月一日本件家屋の前所有者から右占有部分を、期限を昭和四六年八月三一日までとして、賃借しその引渡を受けた旨の上告人の主張につき、右賃貸借は同日限り終了しているものと判断し、かつ、右の賃貸借に際し上告人が前所有者に差し入れたという敷金の返還請求権をもつてする同時履行および留置権の主張を排斥して、被上告人の所有権にもとづく本件家屋部分の明渡請求を認容したものである。
そこで、期間満了による家屋の賃貸借終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務が同時履行の関係にあるか否かについてみるに、賃貸借における敷金は、賃貸借の終了後家屋明渡義務の履行までに生ずる賃料相当額の損害金債権その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得することのある一切の債権を担保するものであり、賃貸人は、賃貸借の終了後家屋の明渡がされた時においてそれまでに生じた右被担保債権を控除してなお残額がある場合に、その残額につき返還義務を負担するものと解すべきものである(最高裁昭和四六年(オ)第三五七号同四八年二月二日第二小法廷判決・民集二七巻一号八〇頁参照)。そして、敷金契約は、このようにして賃貸人が賃借人に対して取得することのある債権を担保するために締結されるものであつて、賃貸借契約に附随するものではあるが、賃貸借契約そのものではないから、賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、一個の双務契約によつて生じた対価的債務の関係にあるものとすることはできず、また、両債務の間には著しい価値の差が存しうることからしても、両債務を相対立させてその間に同時履行の関係を認めることは、必ずしも公平の原則に合致するものとはいいがたいのである。一般に家屋の賃貸借関係において、賃借人の保護が要請されるのは本来その利用関係についてであるが、当面の問題は賃貸借終了後の敷金関係に関することであるから、賃借人保護の要請を強調することは相当でなく、また、両債務間に同時履行の関係を肯定することは、右のように家屋の明渡までに賃貸人が取得することのある一切の債権を担保することを目的とする敷金の性質にも適合するとはいえないのである。このような観点からすると、賃貸人は、特別の約定のないかぎり、賃借人から家屋明渡を受けた後に前記の敷金残額を返還すれば足りるものと解すべく、したがつて、家屋明渡債務と敷金返還債務とは同時履行の関係にたつものではないと解するのが相当であり、このことは、賃貸借の終了原因が解除(解約)による場合であつても異なるところはないと解すべきである。そして、このように賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解すべき場合にあつては、賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもつて家屋につき留置権を取得する余地はないというべきである。
これを本件についてみるに、上告人は右の特約の存在につきなんら主張するところがないから、同時履行および留置権の主張を排斥した原審判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
・土地賃借権が賃貸人の承諾を得て旧賃借人から新賃借人に移転された場合であっても、敷金に関する敷金交付者の権利義務関係は、敷金交付者において賃貸人との間で敷金をもって新賃借人の債務の担保をすることを約し又は新賃借人に対して敷金返還請求権を譲渡するなど特段の事情のない限り、新賃借人に承継されない!!
+判例(S53.12.22)
上告代理人木村保男、同的場悠紀、同川村俊雄、同大槻守、同松森彬、同坂和章平の上告理由第一点及び第二点について
土地賃貸借における敷金契約は、賃借人又は第三者が賃貸人に交付した敷金をもつて、賃料債務、賃貸借終了後土地明渡義務履行までに生ずる賃料額相当の損害金債務、その他賃貸借契約により賃借人が賃貸人に対して負担することとなる一切の債務を担保することを目的とするものであつて、賃貸借に従たる契約ではあるが、賃貸借とは別個の契約である。そして、賃借権が旧賃借人から新賃借人に移転され賃貸人がこれを承諾したことにより旧賃借人が賃貸借関係から離脱した場合においては、敷金交付者が、賃貸人との間で敷金をもつて新賃借人の債務不履行の担保とすることを約し、又は新賃借人に対して敷金返還請求権を譲渡するなど特段の事情のない限り、右敷金をもつて将来新賃借人が新たに負担することとなる債務についてまでこれを担保しなければならないものと解することは、敷金交付者にその予期に反して不利益を被らせる結果となつて相当でなく、敷金に関する敷金交付者の権利義務関係は新賃借人に承継されるものではないと解すべきである。なお、右のように敷金交付者が敷金をもつて新賃借人の債務不履行の担保とすることを約し、又は敷金返還請求権を譲渡したときであつても、それより以前に敷金返還請求権が国税の徴収のため国税徴収法に基づいてすでに差し押えられている場合には、右合意又は譲渡の効力をもつて右差押をした国に対抗することはできない。 he—-
これを本件の場合についてみるに、原審の適法に確定したところによれば、(1) 訴外山下興業株式会社は、上告人から本件土地を賃借し、敷金として三〇〇〇万円を、賃貸借が終了し地上物件を収去して本件土地を明渡すのと引換えに返還を受ける約定のもとに、上告人に交付していた、(2) 被上告人は、同会社の滞納国税を徴収するため、国税徴収法に基づいて同会社が上告人に対して有する将来生ずべき敷金返還請求権全額を差し押え、上告人は昭和四六年六月二九日ころその通知書の送達を受けた、(3) 同会社が本件土地上に所有していた建物について競売法による競売が実施され、同四七年五月一八日訴外太平産業株式会社がこれを競落し、右建物の所有権とともに本件土地の賃借権を取得した、(4) 上告人は同年六月ころ同会社に対し右賃借権の取得を承諾した、(5) 右承諾前において、山下興業株式会社に賃料債務その他賃貸借契約上の債務の不履行はなかつた、というのであり、右事実関係のもとにおいて、上告人は太平産業株式会社の賃借権取得を承諾した日に山下興業株式会社に対し本件敷金三〇〇〇万円を返還すべき義務を負うに至つたものであるとし、上告人が右承諾をした際に太平産業株式会社との間で、敷金に関する権利義務関係が同会社に承継されることを前提として、賃借権移転の承諾料一九〇〇万円を敷金の追加とする旨合意し、山下興業株式会社がこれを承諾したとしても、右合意及び承諾をもつて被上告人に対抗することはできないとして、これに関する上告人の主張を排斥し、被上告人の上告人に対する右三〇〇〇万円の支払請求を認容した原審の判断は、前記説示と同趣旨にでたものであつて、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
・賃貸借契約において、当該建物の所有権移転に伴い賃貸人たる地位に承継があった場合、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、未払賃料債務があればこれに当然充当され、残額についてその権利義務関係が新賃貸人に承継される!
+判例(S44.7.17)
上告代理人鈴木権太郎の上告理由について。
原判決が昭和三六年三月一日以降同三九年三月一五日までの未払賃料額の合計が五四万三七五〇円である旨判示しているのは、昭和三三年三月一日以降の誤記であることがその判文上明らかであり、原判決には所論のごとき計算違いのあやまりはない。また、所論賃料免除の特約が認められない旨の原判決の認定は、挙示の証拠に照らし是認できる。
しかして、上告人が本件賃料の支払をとどこおつているのは昭和三三年三月分以降の分についてであることは、上告人も原審においてこれを認めるところであり、また、原審の確定したところによれば、上告人は、当初の本件建物賃貸人訴外亡Aに敷金を差し入れているというのである。思うに、敷金は、賃貸借契約終了の際に賃借人の賃料債務不履行があるときは、その弁済として当然これに充当される性質のものであるから、建物賃貸借契約において該建物の所有権移転に伴い賃貸人たる地位に承継があつた場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、賃借人の旧賃貸人に対する未払賃料債務があればその弁済としてこれに当然充当され、その限度において敷金返還請求権は消滅し、残額についてのみその権利義務関係が新賃貸人に承継されるものと解すべきである。したがつて、当初の本件建物賃貸人訴外亡Aに差し入れられた敷金につき、その権利義務関係は、同人よりその相続人訴外Bらに承継されたのち、右Bらより本件建物を買い受けてその賃貸人の地位を承継した新賃貸人である被上告人に、右説示の限度において承継されたものと解すべきであり、これと同旨の原審の判断は正当である。論旨は理由がない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
・AはBとの間で、A所有の甲建物について賃貸借契約を締結し、甲建物をBに引き渡した。Aは、Cに対して、向こう6か月のBに対する賃料債権を譲渡し、AはBに対してその旨通知した。この場合において、BがAに対して賃貸借契約を締結するに際して敷金を差し入れていたときは、AB間の賃貸借契約が終了し、Bが甲建物を明け渡した時に、延滞となったAのBに対する資料債権は敷金の充当によりその限度で消滅する!!!
←賃借人が、賃貸人に対して敷金を差し入れていた場合、賃料債権が第三者に譲渡された場合にも、賃借人が異議をとどめない承諾をしたのでない限り(468条1項参照)、賃貸借契約が終了すると、延滞賃料債権は当然に敷金額だけ減少する。本件は通知されただけで承諾ない。
+(指名債権の譲渡における債務者の抗弁)
第468条
1項 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。
2項 譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
・処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が建物の賃貸借をする場合、当該賃貸借の期間は3年をこえることができないが、更新をすることはできる!
+(短期賃貸借)
第602条
処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。
1号 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
2号 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
3号 建物の賃貸借 三年
4号 動産の賃貸借 六箇月
+(短期賃貸借の更新)
第603条
前条に定める期間は、更新することができる。ただし、その期間満了前、土地については一年以内、建物については三箇月以内、動産については一箇月以内に、その更新をしなければならない。
・建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において、期間の定めがないとき、賃貸人は、解約申し入れにより契約を終了させることはできない。=機関の定めがないときは一律30年になる。
+借地借家法
(定義)
第2条
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。
二 借地権者 借地権を有する者をいう。
三 借地権設定者 借地権者に対して借地権を設定している者をいう。
四 転借地権 建物の所有を目的とする土地の賃借権で借地権者が設定しているものをいう。
五 転借地権者 転借地権を有する者をいう。
+(借地権の存続期間)
第3条
借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
・借地借家法の適用を受ける土地の賃貸借契約において、契約を最初に更新する場合にあっては、その期間は更新の日から20年とされる。
+借地借家法
(借地権の更新後の期間)
第4条
当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は、更新の日から十年(借地権の設定後の最初の更新にあっては、二十年)とする。ただし、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
・土地の賃貸人が借地契約の更新拒絶をするためには、正当の事由がなければならないほか、契約期間の満了の1年前から6か月前までの間に賃借人に対して更新しない旨の通知は不要!=遅滞なく異議をのべればよい。
+借地借家法
(借地契約の更新請求等)
第5条
1項 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。
2項 借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。
3項 転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする土地の使用の継続を借地権者がする土地の使用の継続とみなして、借地権者と借地権設定者との間について前項の規定を適用する。
+(借地契約の更新拒絶の要件)
第6条
前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
・借地借家法の適用を受ける土地賃貸借契約の当事者間で地代等自動改定特約がある場合は、同特約の基準を定めるにあたって基礎となっていた事情に変更があったとき、当事者は同特約に拘束されず、地代等増額請求権を行使することができる!
+(地代等増減請求権)
第11条
1項 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2項 地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3項 地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
+判例(H15.6.12)
上告代理人遠藤光男、同高須順一、同高林良男の上告受理申立て理由について
1 本件は、本件各土地を被上告人から賃借した上告人が、被上告人に対し、地代減額請求により減額された地代の額の確認を求め、他方、被上告人が、上告人に対し、地代自動増額改定特約によって増額された地代の額の確認を求める事案である。
2 原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
(1) 上告人は、大規模小売店舗用建物を建設して株式会社ダイエーの店舗を誘致することを計画し、昭和62年7月1日、その敷地の一部として、被上告人との間において、被上告人の所有する本件各土地を賃借期間を同月20日から35年間として借り受ける旨の本件賃貸借契約を締結した。
(2) 被上告人及び上告人は、本件賃貸借契約を締結するに際し、被上告人の税務上の負担を考慮して、権利金や敷金の授受をせず、本件各土地の地代については、昭和62年7月20日から上告人が本件各土地上に建築する建物を株式会社ダイエーに賃貸してその賃料を受領するまでの間は月額249万2900円とし、それ以降本件賃貸借契約の期間が満了するまでの間は月額633万1666円(本件各土地の価格を1坪当たり500万円と評価し、その8%相当額の12分の1に当たる金額)とすることを合意するとともに、「但し、本賃料は3年毎に見直すこととし、第1回目の見直し時は当初賃料の15%増、次回以降は3年毎に10%増額する。」という内容の本件増額特約を合意し、さらに、これらの合意につき、「但し、物価の変動、土地、建物に対する公租公課の増減、その他経済状態の変化により甲(被上告人)・乙(上告人)が別途協議するものとする。」という内容の本件別途協議条項を加えた。
(3) 本件賃貸借契約が締結された昭和62年7月当時は、いわゆるバブル経済の崩壊前であって、本件各土地を含む東京都23区内の土地の価格は急激な上昇を続けていた。したがって、当事者双方は、本件賃貸借契約とともに本件増額特約を締結した際、本件増額特約によって、その後の地代の上昇を一定の割合に固定して、地代をめぐる紛争の発生を防止し、企業としての経済活動に資するものにしようとしたものであった。
(4) ところが、本件各土地の1㎡当たりの価格は、昭和62年7月1日には345万円であったところ、平成3年7月1日には367万円に上昇したものの、平成6年7月1日には202万円に下落し、さらに、平成9年7月1日には126万円に下落した。
(5) 上告人は、被上告人に対し、前記約定に従って、昭和62年7月20日から昭和63年6月30日までの間は、月額249万2900円の地代を支払い、上告人が株式会社ダイエーより建物賃料を受領した同年7月1日以降は、月額633万1666円の地代を支払った。
(6) その後、本件各土地の地代月額は、本件増額特約に従って、3年後の平成3年7月1日には15%増額して728万1416円に改定され、さらに、3年後の平成6年7月1日には10%増額して800万9557円に改定され、上告人は、これらの地代を被上告人に対して支払った。
しかし、その3年後の平成9年7月1日には、上告人は、地価の下落を考慮すると地代を更に10%増額するのはもはや不合理であると判断し、同日以降も、被上告人に対し、従前どおりの地代(月額800万9557円)の支払を続け、被上告人も特段の異議を述べなかった。
(7) さらに、上告人は、被上告人に対し、平成9年12月24日、本件各土地の地代を20%減額して月額640万7646円とするよう請求した。しかし、被上告人は、これを拒否した。
(8) 他方、被上告人は、上告人に対し、平成10年10月12日ころ、平成9年7月1日以降の本件各土地の地代は従前の地代である月額800万9557円を10%増額した月額881万0512円になったので、その差額分(15か月分で合計1201万4325円)を至急支払うよう催告した。しかし、上告人は、これを拒否し、かえって、平成10年12月分からは、従前の地代を20%減額した額を本件各土地の地代として被上告人に支払うようになった。
3 本件において、上告人は、被上告人に対し、本件各土地の地代が平成9年12月25日以降月額640万7646円であることの確認を求め、他方、被上告人は、上告人に対し、本件各土地の地代が平成9年7月1日以降月額881万0512円であることの確認を求めている。
4 前記事実関係の下において、第1審は、上告人の請求を一部認容し、被上告人の請求を棄却したが、これに対して、被上告人が控訴し、上告人が附帯控訴したところ、原審は、次のとおり判断して、被上告人の控訴に基づき、第1審判決を変更して、上告人の請求を棄却し、被上告人の請求を認容するとともに、上告人の附帯控訴を棄却した。
(1) 本件増額特約は、昭和63年7月1日から3年ごとに本件各土地の地代を一定の割合で自動的に増額させる趣旨の約定であり、本件別途協議条項は、そのような地代自動増額改定特約を適用すると、同条項に掲げる経済状態の変化等により、本件各土地の地代が著しく不相当となる(借地借家法11条1項にいう「不相当となったとき」では足りない。)ときに、その特約の効力を失わせ、まず当事者双方の協議により、最終的には裁判の確定により、相当な地代の額を定めることとした約定であると解すべきである。
(2)ア 本件各土地の価格は、昭和62年7月1日以降、平成3年ころまでは上昇したものの、その後は下落を続けている。
イ しかしながら、総理府統計局による消費者物価指数(全国総合平均)は、昭和62年度を100とすると、平成3年度が109.66に、平成6年度が113.69に、平成9年度が115.75に、それぞれ上昇している。また、日本銀行調査統計局による卸売物価指数は、昭和62年度を100とすると、平成3年度が104、平成6年度が100、平成9年度が98であり、それほど大幅には変動していない。また、本件各土地の公租公課(固定資産税・都市計画税)は、昭和62年7月1日には1㎡当たり6000円であったのが、平成3年7月1日には同6740円に、平成6年7月1日には同8090円に、それぞれ上昇しており、本件各土地のうち面積が最も広い地番141番51の土地の固定資産税・都市計画税の合計は、平成6年度には84万4103円であったのが、平成9年度には117万4570円となり、約40%も上昇している。さらに、本件各土地の平成9年7月1日の時点における継続地代の適正額についての第1審の鑑定結果は月額785万8000円であり、本件増額特約を適用した地代の月額881万0512円は、その1.12倍にとどまる。
ウ 以上の事実を考慮すると、平成9年7月1日時点において、本件各土地の地代が著しく不相当になったとまではいえないから、本件増額特約が失効したと断じることはできない。
(3) そうすると、本件増額特約に基づき、平成9年7月1日以降の本件各土地の地代は月額881万0512円(従前の月額800万9557円を10%増額した金額)に増額されたと認めるのが相当である。
(4) 本件増額特約のような地代自動増額改定特約については、借地借家法11条1項所定の諸事由、請求の当時の経済事情及び従来の賃貸借関係その他諸般の事情に照らし著しく不相当ということができない限り、有効として扱うのが相当であるところ、その反面として、同項に基づく地代増減請求をすることはできず、その限度で、当事者双方の意思表示によって成立した合意の効力が同項に基づく当事者の一方の意思表示の効力に優先すると解すべきである。
(5) 平成9年12月24日の時点において、いまだ、本件増額特約そのものをもって著しく不相当ということはできないし、これを適用すると著しく不相当ということもできない(したがって、本件別途協議条項を適用する余地もない。)から、上告人は、本件各土地につき、借地借家法11条1項に基づく地代減額請求をすることはできない。
5 しかし、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
(1) 建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約の当事者は、従前の地代等が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、借地借家法11条1項の定めるところにより、地代等の増減請求権を行使することができる。これは、長期的、継続的な借地関係では、一度約定された地代等が経済事情の変動等により不相当となることも予想されるので、公平の観点から、当事者がその変化に応じて地代等の増減を請求できるようにしたものと解するのが相当である。この規定は、地代等不増額の特約がある場合を除き、契約の条件にかかわらず、地代等増減請求権を行使できるとしているのであるから、強行法規としての実質を持つものである(最高裁昭和28年(オ)第861号同31年5月15日第三小法廷判決・民集10巻5号496頁、最高裁昭和54年(オ)第593号同56年4月20日第二小法廷判決・民集35巻3号656頁参照)。
(2) 他方、地代等の額の決定は、本来当事者の自由な合意にゆだねられているのであるから、当事者は、将来の地代等の額をあらかじめ定める内容の特約を締結することもできるというべきである。そして、地代等改定をめぐる協議の煩わしさを避けて紛争の発生を未然に防止するため、一定の基準に基づいて将来の地代等を自動的に決定していくという地代等自動改定特約についても、基本的には同様に考えることができる。
(3) そして、地代等自動改定特約は、その地代等改定基準が借地借家法11条1項の規定する経済事情の変動等を示す指標に基づく相当なものである場合には、その効力を認めることができる。
しかし、【要旨】当初は効力が認められるべきであった地代等自動改定特約であっても、その地代等改定基準を定めるに当たって基礎となっていた事情が失われることにより、同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には、同特約の適用を争う当事者はもはや同特約に拘束されず、これを適用して地代等改定の効果が生ずるとすることはできない。また、このような事情の下においては、当事者は、同項に基づく地代等増減請求権の行使を同特約によって妨げられるものではない。
(4) これを本件についてみると、本件各土地の地代がもともと本件各土地の価格の8%相当額の12分の1として定められたこと、また、本件賃貸借契約が締結された昭和62年7月当時は、いわゆるバブル経済の崩壊前であって、本件各土地を含む東京都23区内の土地の価格は急激な上昇を続けていたことを併せて考えると、土地の価格が将来的にも大幅な上昇を続けると見込まれるような経済情勢の下で、時の経過に従って地代の額が上昇していくことを前提として、3年ごとに地代を10%増額するなどの内容を定めた本件増額特約は、そのような経済情勢の下においては、相当な地代改定基準を定めたものとして、その効力を否定することはできない。しかし、土地の価格の動向が下落に転じた後の時点においては、上記の地代改定基準を定めるに当たって基礎となっていた事情が失われることにより、本件増額特約によって地代の額を定めることは、借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなったというべきである。したがって、土地の価格の動向が既に下落に転じ、当初の半額以下になった平成9年7月1日の時点においては、本件増額特約の適用を争う上告人は、もはや同特約に拘束されず、これを適用して地代増額の効果が生じたということはできない。また、このような事情の下では、同年12月24日の時点において、上告人は、借地借家法11条1項に基づく地代減額請求権を行使することに妨げはないものというべきである。
6 以上のとおり、平成9年7月1日の時点で本件増額特約が適用されることによって増額された地代の額の確認を求める被上告人の上告人に対する請求は理由がなく、また、同年12月24日の時点で本件増額特約が適用されるべきものであることを理由に上告人の地代減額請求権の行使が制限されるということはできず、論旨は理由がある。これと異なる原審の前記判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。そこで、原判決を破棄し、被上告人の上告人に対する請求についての本件控訴を棄却するとともに、上告人の被上告人に対する請求について、上告人が地代減額請求をした平成9年12月24日の時点における本件各土地の相当な地代の額について、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
・期間の定めのある建物の賃貸借契約が法定更新された場合、従前の契約と同一の条件で更新されたものとみなされる。期間については、定めがないものとされる!
+(建物賃貸借契約の更新等)
第26条
1項 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
2項 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
3項 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。
・建物賃貸借について期間の定めがある場合、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知をしたときには、賃貸借は期間満了により終了する。もっとも、通知をした場合であっても、建物の賃貸期間が満了した後賃借人が使用を継続する場合に、賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときには、賃貸借は更新されたものとみなされる!!
・期間を3年とする事務用貸室の賃貸借契約において、賃貸人又は賃借人は期間中いつでも2か月前の予告により契約を解約できるとの条項がある場合でも、賃貸人は、正当の事由の有無にかかわらず、この条項に従って契約を解除することはできない!!←40条の場合ではないから借地借家法の適用アリ。
+(一時使用目的の建物の賃貸借)
第40条
この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない。
+(解約による建物賃貸借の終了)
第27条
1項 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
2項 前条第2項及び第3項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。
+(強行規定)
第30条
この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
・期間の定めのない建物の賃貸借契約は、賃貸人による解約の申し入れの日から6か月の経過によって終了するが、子の解約の申し入れには正当事由が必要である!!!
+(解約による建物賃貸借の終了)
第27条
1項 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
2項 前条第2項及び第3項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。
+(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第28条
建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
・正当の事由の有無にかかわらず契約の更新がないこととする建物賃貸借契約の類型もある!!
+(定期建物賃貸借)
第38条
1項 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2項 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
3項 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
4項 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
5項 第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
6項 前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
7項 第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。