1.小問1(1)について
+(即時取得)
第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
・無償行為を除外していない!
2.小問1(2)について(基礎編)
+(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
+(贈与者の担保責任)
第五百五十一条 贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。
2 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
・他人の物の贈与契約も有効
+判例(S44.1.31)
理由
上告代理人中川利吉の上告理由第一、二点について。
所論の点に関する原審の事実認定は、これに対応する原判決挙示の証拠関係に照らして是認するに足りる。そして、原審は、被上告人ら主張のように、被上告人北里の先代憲夫と訴外道本時雄とが共同買主となつて、上告人との間に、上告人が当時阿蘇郡南小国村および山田村内に所有していた土地、ならびにかつて所有していたが当時国に買収されていた土地の全部について売買契約を成立させた事実を認定したものであることを、その判文によつて窺うに足りるからこの点につき異見をいう所論はすでに前提を欠く。原判決にはなんら所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断および事実の認定を非難するにすぎないものであつて、採用することができない。
上告代理人下飯坂潤夫の上告理由について
原判決は所論第三次契約について、右契約は、被上告人北里と上告人との間に、新たに第一次契約と同一の売買物件を目的として締結された旨を認定判示しているのであつて、たんに、第一次契約を復活した旨判示するにとどまるものではないから、原判決に所論理由不備の違法があるとはいえない。そして、自作農創設特別措置法に基づいて国が買収し、すでにその所有権を取得した土地を目的とし、右土地の被買収者が第三者との間で売買契約を締結することは、民法五六〇条にいう「他人ノ権利ヲ以テ売買ノ目的ト為シタルトキ」にあたるものであつて、かかる売買契約も有効に成立するものと解すべきであり(当裁判所昭和二四年(オ)第三〇六号、同二五年一〇月二六日第一小法廷判決、民集四巻一〇号四九七頁参照)、また、他人の財産権をもつて贈与の目的とすることも可能であつて、かような場合には、贈与義務者はみずからその財産権を取得して受贈者にこれを移転する義務を負担するもので、かかる贈与契約もまた有効に成立するものと解すべきところ、原審の確定したところによれば、本件第三次契約においては、上告人は、被上告人北里に対し、本件一九二九番山林、一九二九番の一山林および一九二三番の一山林の所有権については、買収解除後、即時これを被上告人北里に移転することを承諾していたが、同被上告人は、右買収解除前に被上告人坂田由之に対して一九二五番山林および右三筆の山林を売り渡し、同被上告人は、さらにこれを被上告人坂田盛雄に贈与したというのであるから、一九二九番、同番の一および一九二三番の一の各山林の所有権は、買収が解除されて国から上告人に復帰すると同時に、被上告人北里、同坂田由之を経て同坂田盛雄に帰属したものと解すべきであつて、これと同旨の原審の判断は正当である。これと異なる見解に立つ所論は採用しえない。なお、所論は、原判決が被上告人北里を経て同坂田由之から同坂田盛雄に贈与された旨認定した土地とその後所有権移転登記手続がなされた旨認定した土地との間に喰い違いがあるというが、原判決の挙示する証拠関係に照らすと、一九二五番山林についても同時に原判示の他の二筆の山林とともに登記手続が行なわれた事実が窺われ、原判決としては、本訴において抹消登記手続請求の目的となつている右二筆の山林についてのみ登記申請が上告人の意思に基づいてなされたことを確定した趣旨と解することができるから、原判決に所論の違法はない。また、不動産の登記の申請にあたつては、所有権の登記名義人が登記義務者として登記を申請するときは、同人の印鑑証明書を提出しなければならないことは所論のとおりであるけれども(不動産登記法施行細則四二条)、右は虚偽の登記の発生を予防するために、その登記の申請が登記義務者の真意に基づくことを証明させる手段として定められたものであつて、裁判所は、登記の申請が登記権利者および義務者の意思に基づくことを確定すれば足り、必ずしも、登記義務者の印鑑証明書がその意思に基づいて提出されたことまでをも判決理由中に判示する必要はないと解すべきであるから、原判決に所論の違法はない。したがつて、論旨はすべて採用に値しない。
上告代理人宮瀬洋一の上告理由第一点の一について。
原判決が、上告人と被上告人北里との間で締結された第三次契約について、その対象とした物件のうち、当時自創法に基づいて国に買収されていた土地に関しては民法五六〇条にいう「他人ノ権利ヲ以テ売買ノ目的ト為シタル」場合にあたるものと解した趣旨であることは、その判文に照らして明らかであり、かつ、かかる契約が有効であることは、すでに上告代理人下飯坂潤夫の上告理由について述べたとおりであるから、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。
同第一点の二について。
記録を精査しても、被上告人らの主張をもつて、所論のような趣旨に解しなければならないものとは認められないから、所論は前提を欠くものであつて、排斥を免れない。
同第一点の三について。
記録によれば、第三次契約の目的物件について、上告人は山田村不津原一九二五番原野ほか六筆と主張し、被上告人らは右土地ほか二二筆と主張したことは、論旨指摘のとおりである。したがつて、原判決が第一次契約および第三次契約の目的物件として、一九二九番山林、一九二九番の一山林、一九二三番の一山林が含まれていたとの点を除くほかは、契約内容についても当事者間に争がない趣旨を判示したことは不正確のそしりを免れない。しかし、原審が右売買契約の目的物件をもつて被上告人らの主張に従つた認定をした趣旨に解しうることは、すでに上告代理人中川利吉の上告理由について述べたとおりであり、かつ、本訴において争点となつているのは、右各契約の目的物件として前記各山林が含まれていたかどうかであつて、これらの点に関する原審の事実認定が是認するに足りることもすでに上告代理人中川利吉の上告理由について述べたとおりであるから、右の誤りは原判決に影響を及ぼさないものといわれなければならない。したがつて、論旨は理由がない。
同第二点について。
所論中、被上告人盛雄のなした本件一九二九番および同番の一の各山林に対する所有権取得登記が上告人の意思に基づかずにされたとする部分は、原審の裁量に属する証拠の取捨判断について異見を述べるものにすぎない。また、所論は、原判決が一九二五番山林に関する事実認定を除外しているというが、同山林は原判示第一次契約の目的物件中に含まれていたものであり、したがつて、原判決は第一次契約と同一の売買物件を目的として第三次契約を締結した旨判示することによつて、右一九二五番山林も売買の目的となつたことを判示したものであることが明らかである。そして、右一九二五番山林の売買について、所論のように現地における指示、引渡の有無等についてまで認定しなければならないものではないから、この点に関する所論も理由がない。また、不動産所有権の移転は不動産の占有を基準とすべきものではないことは明らかであるから、本件一九二三番の一山林に対する現地の占有の移転について判断を加えなかつたからといつて、原判決に所論の違法はない。なお、所論甲第一九号証は、原本の存在および成立に争のある書証であり、原判決が乙第一四号証を採用した以上その排斥の理由はおのずから明らかであるから、いちいち排斥の理由を明示する必要はない。したがつて、論旨はすべて採用するに足りない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(草鹿浅之助 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎 村上朝一)
・551条1項は債務不履行責任を制限する規定!
3.小問1(2)について(応用編)
動機の錯誤の一般論を超えて錯誤無効の主張を認めるべきか。
4.小問2について
+(他人の権利の売買における善意の売主の解除権)
第五百六十二条 売主が契約の時においてその売却した権利が自己に属しないことを知らなかった場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは、売主は、損害を賠償して、契約の解除をすることができる。
2 前項の場合において、買主が契約の時においてその買い受けた権利が売主に属しないことを知っていたときは、売主は、買主に対し、単にその売却した権利を移転することができない旨を通知して、契約の解除をすることができる。
+(有償契約への準用)
第五百五十九条 この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
⇔贈与契約は無償契約だから準用されない!!
でも、売主にさえ認められているのであるから、贈与の場合にも認めてよいのでは!
・+(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第四百条 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
なお受領遅滞後は軽減。
・+(特定物の現状による引渡し)
第四百八十三条 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。
+(弁済の費用)
第四百八十五条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。
・危険負担は双務契約であることが前提とされている!!!!
片務契約である贈与契約には妥当しない!!!!