・産婦人科医師である甲は、妊婦の依頼を受け、法律上堕胎することが許されない時期に入った胎児の堕胎を行い、堕胎により出生したした未熟児乙に適切な医療を受けさせれば生育する可能性のあることを認識し、かつ、そのための措置をとることが迅速容易にできたにもかかわらず、同児をバスタオルにくるんで院内に放置し約54時間後に死亡するに至らしめた。この場合、判例によると、甲には業務上堕胎致死罪は成立せず、業務上堕胎罪及び保護責任者遺棄致死罪が成立する!!!!!
+判例(S63.1.19)
弁護人池宮城紀夫、同新里恵二、同上間瑞穂連名の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、所論引用の各判例はいずれも事案を異にし本件に適切でなく、その余の点は、すべて単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。なお、保護者遺棄致死の点につき職権により検討すると、原判決の是認する第一審判決の認定によれば、被告人は、産婦人科医師として、妊婦の依頼を受け、自ら開業する医院で妊娠第二六週に入つた胎児の堕胎を行つたものであるところ、右堕胎により出生した未熟児(推定体重一〇〇〇グラム弱)に保育器等の未熟児医療設備の整つた病院の医療を受けさせれば、同児が短期間内に死亡することはなく、むしろ生育する可能性のあることを認識し、かつ、右の医療を受けさせるための措置をとることが迅速容易にできたにもかかわらず、同児を保育器もない自己の医院内に放置したまま、生存に必要な処置を何らとらなかつた結果、出生の約五四時間後に同児を死亡するに至らしめたというのであり、右の事実関係のもとにおいて、被告人に対し業務上堕胎罪に併せて保護者遺棄致死罪の成立を認めた原判断は、正当としてこれを肯認することができる。
よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
++解説、理由付けがほしいところ。
+(業務上堕胎及び同致死傷)
第214条
医師、助産師、薬剤師又は医薬品販売業者が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたときは、3月以上5年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させたときは、6月以上7年以下の懲役に処する。
+(遺棄等致死傷)
第219条
前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。