行政法 基本行政法 行政上の義務履行確保の手法


総説 行政上の義務履行確保手段の種類と位置づけ

1.義務履行強制
・行政上の強制執行
←法律上の根拠がある場合に限って認められる!!

行政代執行法
+第一条  行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。
第二条  法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。

・1条の「法律」には条令を含まない!!

(1)行政代執行

ア 「法律に基づき行政庁により命ぜられた行為」

+判例(大阪高決S40.10.5)
理  由
一、抗告人の抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。
二、当裁判所の判断
抗告人主張の茨木市庁舎の相手方に対する一部使用は、行政財産たる公有公用物の使用としてその用途または目的を妨げない限度で許されるものであることはいうまでもないが、これが公法関係に属することは、使用について公共団体の長の許可形態をとるとともに許可取消による使用の終了を規定していること(地方自治法二三八条の四、三項、五項)、借地法、借家法の適用がないことを明定していること(同条四項)、行政財産を使用する権利に関する処分についての不服申立の規定を設けていること(同法二三八条の七)などの点よりみて明らかであるとともに、右使用許可取消処分に対し、抗告訴訟が許されることも亦明白である。
本件では、抗告人が昭和三九年一二月一五日相手方に対し、従来茨木市庁舎の一部を組合事務所として使用することの許可をしていたのを取消す旨の処分をし、ついで、昭和四〇年一月一七日相手方に対し右組合事務所内の存置物件搬出についての行政代執行法上の戒告をするに至つたので、相手方は右庁舎使用許可の取消処分と戒告の各取消を求める抗告訴訟を提起するとともに、(1)庁舎(組合事務所)使用許可取消処分の効力の停止と(2)右取消処分に基く、相手方組合事務所内存置物件搬出についての行政代執行法上の戒告ならびにこれに続く行政代執行手続の続行停止を求め、原審は右(2)の申立を認容し、これと同趣旨の決定をしたものである。
そこでまず庁舎使用許可の取消処分に基いて行政代執行法による代執行ができるかどうかを考えてみる。
本件庁舎の管理権者たる抗告人が、相手方に対する庁舎の使用許可を取消すときは、庁舎の使用関係はこれによつて終了し、抗告人が管理権に基いて相手方に対し庁舎の明渡ないし立退きを求めることができ、相手方はこれに応ずべき義務あることはいうまでもないが、右義務は行政代執行によつてその履行の確保が許される行政上の義務ではない。けだし、行政代執行による強制実現が許される義務は、行政代執行法第二条によつて明らかな如く、法律が直接行為を命じた結果による義務であるかまたは行政庁が法律に基き行為を命じた結果に基く義務に限定されているのである。ところで、本件の如き庁舎使用許可取消処分については、処分があれば、庁舎の明渡ないしは立退きをなすべき旨を直接命じた法律の規定はない。また右使用許可取消処分は単に庁舎の使用関係を終了せしめるだけで、庁舎の明渡ないしは立退きを命じたものではないし、またこれを命じうる権限を与えた法律の規定もないからである。
抗告人の相手方に対する前記明渡し、立退き要求は、庁舎管理権に基く事実行為に過ぎないし、また相手方のこれに応ずべき義務は、使用関係の終了に伴い権利主体(茨木市)に対して生ずる公法上の義務であつて、これを以て法律が直接命じた義務とすることはできないのである。
抗告人は行政代執行が公法上の義務をそのまゝの形において実現するのであつて、これにつき直接的な法律の根拠規定を必要としないことを理由に代替的な公法上の作為義務はすべて代執行に親しむかのように主張するのであるが、右の所論は行政代執行法二条の規定に反し、失当であることはいうまでもない。 
しかのみならず、行政代執行により履行の確保される行政上の義務は、いわゆる「為す義務」たる作為義務のうち代替的なものに限られるのであつて、庁舎の明渡しないしは立退きの如き、いわゆる「与える義務」は含まれないものと解すべきである。
これらの義務の強制的実現には実力による占有の解除を必要とするのであつて、法律が直接強制を許す場合においてのみこれが可能となるのである。
もつとも、抗告人が相手方に対してなした行政代執行の前提たる戒告は、前記の如く、庁舎内にある相手方組合事務所の存置物件の搬出についてであつて、組合事務所の明渡しないしは立退きについてではないが、組合事務所存置物件の搬出は組合事務所の明渡しないしは立退き義務の履行に伴う必然的な行為であり、それ自体独立した義務内容をなすものではなく、况んや、法律が直接命じた義務あるいは法律に基ずく行政処分により命じた義務でないこと勿論である。従つて、組合事務所の明渡しないしは立退きについて前記の如く代執行が許されないからといつて、組合事務所存置物件の搬出のみを取り上げ、これが物件の搬出という面では代替的な作為義務に属することの故に、代執行の対象とするが如きことが許されないのは、いうまでもない
そうであるから、前記庁舎使用許可取消処分に基ずく行政代執行は、その執行の範囲を相手方組合事務所内の存置物件搬出に限定すると否とを問はず、行政代執行法二条の要件を欠き違法であるといわなければならない。
右の如き庁舎の明渡しないしは立退き請求については、庁舎の権利主体たる茨木市より相手方に対し、公法上の法律関係に関する訴えたる、当事者訴訟を提起し、その確定判決に基く強制執行によるか、あるいは仮処分によるなど、民訴法上の強制的実現の方法に出ずべきものである。
右庁舎の明渡しないし立退き請求は、前記の如く公法上の請求権ではあるが、その実質において私法上の賃貸借、使用貸借の終了による返還請求と異るところはないのであるから、民訴法の強制執行ないしは仮処分の規定の類推適用が許されるものと解すべきである。また庁舎所有権に基き、相手方の不法占拠を理由に明渡しないしは立退きを求める民訴法上の訴えを提起し、あるいは仮処分を求めて、その強制的実現をはかる方法もないではなく、行政代執行を許さないからといつて、不当な結果を生ずるものではない。
そこで庁舎使用許可取消処分に基く代執行が許されないのにかゝわらず、抗告人が代執行の前提である戒告をなし、代執行の強制手段に出ること確実であると認められる場合において、その行政処分の違法を理由に取消訴訟を提起するとともに、処分の執行停止を求め、これにより違法な執行を停止することができるかどうかを考察するに、庁舎使用許可取消の行政処分は、前記の如く庁舎の使用関係を終了せしめる効果を生ぜしめるに過ぎないのである。かような観念的な法律状態の形成を目的とする行政処分には執行はありえないのであつて、従つて執行停止もありえないのである(もつとも処分の効力の停止は考えられるし、相手方はその効力の停止の申請をもしているようであるが、原審はこの点についての判断を示していない。かりに申請棄却の趣旨であるとしても、相手方より抗告の申立がないのであるから、当裁判所はこの点についての審理はしない。)。かつ行政処分取消訴訟に伴う執行停止制度は、本案の取消訴訟の判決確定に相当の日時を要し、その間に行政処分の執行がなされて回復し難い損害を生じたときには、折角本案勝訴の確定判決を得ても、これが画餠に帰するおそれあることを考慮した救済規定であるから、行政処分が執行に親しむものであることを当然の前提とするものであり、当該行政処分が執行の観念を容れる余地のない性質のものであるのに、その処分を根拠にして違法な執行がなされた場合の救済は右執行停止制度の関知しないところである。
右の如く行政処分の執行そのものが違法であるときは、むしろ当該執行の違法を理由にその取消を求める抗告訴訟を提起し(行政代執行が行政事件訴訟法三条の公権力の行使にあたる事実行為であり、これに対する抗告訴訟が許されることは同条の規定ならびに旧行政代執行法七条の規定との沿革的な関係に照して明らかなところである。)、執行手続の続行を停止する意味での執行停止を求めるべきである。
本件では、相手方は抗告人のなした前記戒告に対しても取消訴訟を提起しているのである。もつとも戒告は代執行そのものではなく、またこれによつて新な義務ないし拘束を課する行政処分ではないが、代執行の前提要件として行政代執行手続の一環をなすとともに、代執行の行われることをほぼ確実に示す表示でもある。そして代執行の段階には入れば多くの場合直ちに執行は終了し、救済の実を挙げえない点よりすれば、戒告は後に続く代執行と一体的な行為であり、公権力の行使にあたるものとして、これに対する抗告訴訟を許すべきである。そうであれば、前記の如く戒告に対する抗告訴訟の提起がある以上、行政事件訴訟法二五条により戒告に続く代執行手続の続行を停止する意味での執行停止が許されるものといわなければならない(もつとも相手方の申立書によると組合事務所使用許可取消処分に基く戒告その他の代執行手続の続行停止を求めるかのような体裁になつているが、組合事務所使用許可取消処分についてその効力の停止を求めている点よりすれば、「組合事務所使用許可取消処分に基ずく戒告その他の代執行手続」という表現は、抗告人の発した戒告書の文言にそつたまでで、その真意は戒告その他代執行手続の違法を理由にその執行停止を求める趣旨であることは本件記録に照して容易に推知しうるところである。)。そして本件記録によれば、抗告人の違法な代執行により相手方は場所的に有利な組合事務所の利用ができなくなり、回復し難い損害を生ずることならびに右損害を回避するためその執行を停止すべき緊急の必要性あることが疎明せられ、かつ右執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすものとは認め難いから、執行停止をなすべき要件に欠けるところはないものといわなければならない。
抗告人は組合事務所使用許可取消処分及び戒告の各取消を求める本案請求は理由がないと主張するが、少くとも本件に直接関係をもつ戒告の取消を求める部分については、理由がないとみえる場合に該当しないこと前説示のとおりであるから、右主張は採用できない。
さらに抗告人は、本件組合事務所の移転先として庁舎の別の一部を相手方に提供する旨申出でているのであるから、相手方は本件事務所を失つたからといつて、回復し難い損害を被る筈はなく、従つて、執行停止を求める緊急の必要性を欠くと主張するのであるが、抗告人が本件組合事務所の移転先として相手方に提供を申出でた庁舎の一部は、従来の窮屈な事務所よりも多少狭い上に、相手方組合から分裂した第二、第三、第四組合の各事務所が隣合せに存在し、かつ裏側は茨木警察署に隣接しており、かくては相手方組合の運動方針、企画など組合運営に関する秘密が漏洩察知されることが懸念され、また相手方の組合活動の中心たる組合事務所が敵対的な分裂組合の事務所に囲まれていては組合活動も自ら制約されて萎縮し、はては強固な団結の維持も困難となり、組合員の脱退あるいは再分裂による組合の脆弱化ないしは崩潰が憂慮される状況にあることは、甲第三ないし六号証、同第七号証の一、二、同第八号証の一ないし四、同第一一号証、原審での相手方組合代表者原田保に対する審尋の結果によつて疎明できるから、本件代執行により相手方の被る回復し難い損害ならびにこれを避けるための緊急な必要性を否定することはできないものというべく、この点に関する抗告人の主張も亦採用し難い
そうであれば、本件は前記戒告取消訴訟の判決確定に至るまで、戒告に続く代執行手続(代執行令書の発行及び代執行)の続行を停止すべきである。原決定は「組合事務所使用許可取消処分に基く戒告その他の代執行手続の続行停止」を命じ、使用許可取消処分に基く代執行が許されることを前提とするかの如く解せられ、かつ戒告はすでになされてしまつた行為であり、もはや執行停止の余地がないのにかゝわらず、これを執行停止の対象としたかの如く解せられる点において失当であるから、これを変更すべきものとする。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法九六条、九二条但書を適用し、主文のとおり決定する。
(裁判官 金田宇佐夫 日高敏夫 中島一郎)

イ 「法律の委任に基づく・・・条令」

+第二条  法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。

この条例にはすべての条例が含まれる・・・。

ウ 代替的作為義務

エ 代執行の戒告とその処分性

+第三条  前条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない。
○2  義務者が、前項の戒告を受けて、指定の期限までにその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもつて、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知する。
○3  非常の場合又は危険切迫の場合において、当該行為の急速な実施について緊急の必要があり、前二項に規定する手続をとる暇がないときは、その手続を経ないで代執行をすることができる。

(2)その他の行政上の強制執行手段
ア 行政上の直接強制
ほぼなし。
イ 執行罰~行政上の間接強制
過料
砂防法のみ。
ウ 行政上の強制徴収
国税徴収法

(3)行政上の強制執行の機能不全
簡易迅速にできない・・・

(4)民事手続による強制

・行政上の強制執行制度が利用可能である場合には、それによるべきであって、民事手続きは利用できない
+判例(S41.2.23)
理由
上告代理人大谷政雄の上告理由について。
農業災害補償法八七条の二によれば、農業共済組合は、農作物共済もしくは蚕繭共済にかかる共済掛金又は賦課金を滞納する者がある場合には、督促状により期限を指定してこれを督促することを要し、その督促を受けた者が指定期限までにこれを完納しないときは、市町村に対し、その徴収を請求することができ、市町村は、右請求に応じて地方税の滞納処分の例によりこれを処分すべく、若し市町村が右請求を受けた日から三〇日以内にその処分に着手せず、又は九〇日以内にこれを終了しないときは、農業共済組合は、都道府県知事の認可を受けて、自ら地方税の滞納処分の例により処分することができることになつており、右徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとされる等、その債権の実現について、特別の便宜が与えられている。また、きよ出金の滞納についても、農業共済基金法四六条により、前示農業災害補償法八七条の二の規定が準用され、右と同じ取扱いが認められている。かように、農業共済組合が組合員に対して有するこれら債権について、法が一般私法上の債権にみられない特別の取扱いを認めているのは、農業災害に関する共済事業の公共性に鑑み、その事業遂行上必要な財源を確保するためには、農業共済組合が強制加入制のもとにこれに加入する多数の組合員から収納するこれらの金円につき、租税に準ずる簡易迅速な行政上の強制徴収の手段によらしめることが、もつとも適切かつ妥当であるとしたからにほかならない。
論旨は、農業災害補償法八七条の二がこれら債権に行政上の強制徴収の手段を認めていることは、これら債権について、一般私法上の債権とひとしく、民訴法上の強制執行の手段をとることを排除する趣旨ではないと主張する。
しかし農業共済組合が、法律上特にかような独自の強制徴収の手段を与えられながら、この手段によることなく、一般私法上の債権と同様、訴えを提起し、民訴法上の強制執行の手段によつてこれら債権の実現を図ることは、前示立法の趣旨に反し、公共性の強い農業共済組合の権能行使の適正を欠くものとして、許されないところといわなければならない。
論旨は、また、農業共済組合連合会がその会員たる各農業共済組合に対して有する保険料債権に関しては、法は何ら特別の徴収方法を認めておらず、したがつてその徴収は、民訴法に基づく以外方法がないものとし、第一審判決を引用する原判決が公法上の金銭債権である共済掛金等の実現は民訴法に基づく強制執行にわることは許されない旨判示したのは矛盾であるというが、この点につき原判決の引用する第一審判決は、法が特に行政上の強制徴収を認めた債権について、右の判示をしたものであることその判文上明らかであるから、所論の非難は当らない。
ちなみに、本件は、農業共済組合連合会が、その会員たる農共済組合に代位して、農業共済組合の組合員に対し、右各債権訴求したものであるが、元来、農業共済組合自体が有しない権能を農業共済組合連合会が代位行使することは許されないと解すべきである。
なお、その余の論旨は、何れも本件各債権に関する法条の趣旨を正解したものとは認めがたく、採用することができない。
論旨は、何れも理宙がない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見により、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横田喜三郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 長部謹吾 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田誠 裁判官 下村三郎)

+判例(H14.7.9)
理由
1 本件は、地方公共団体である上告人の長が、宝塚市パチンコ店等、ゲームセンター及びラブホテルの建築等の規制に関する条例(昭和58年宝塚市条例第19号。以下「本件条例」という。)8条に基づき、宝塚市内においてパチンコ店を建築しようとする被上告人に対し、その建築工事の中止命令を発したが、被上告人がこれに従わないため、上告人が被上告人に対し同工事を続行してはならない旨の裁判を求めた事案である。第1審は、本件訴えを適法なものと扱い、本件請求は理由がないと判断して、これを棄却し、原審は、この第1審判決を維持して、上告人の控訴を棄却した。
2 そこで、職権により本件訴えの適否について検討する。
行政事件を含む民事事件において裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」、すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる(最高裁昭和51年(オ)第749号同56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁参照)。国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たるというべきであるが、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許されるものと解される。そして、行政代執行法は、行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、同法の定めるところによるものと規定して(1条)、同法が行政上の義務の履行に関する一般法であることを明らかにした上で、その具体的な方法としては、同法2条の規定による代執行のみを認めている。また、行政事件訴訟法その他の法律にも、一般に国又は地方公共団体が国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟を提起することを認める特別の規定は存在しない。したがって、【要旨1】国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たらず、これを認める特別の規定もないから、不適法というべきである。
【要旨2】本件訴えは、地方公共団体である上告人が本件条例8条に基づく行政上の義務の履行を求めて提起したものであり、原審が確定したところによると、当該義務が上告人の財産的権利に由来するものであるという事情も認められないから、法律上の争訟に当たらず、不適法というほかはない。そうすると、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上によれば、第1審判決を取り消して、本件訴えを却下すべきである。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田昌道 裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田豊三)

++解説
《解  説》
一 本件は、宝塚市長が、宝塚市パチンコ店等、ゲームセンター及びラブホテルの建築等の規制に関する条例(宝塚市昭和五八年条例第一九号。以下「本件条例」という。)八条に基づき、市内においてパチンコ店を建築しようとするYに対し、建築工事の中止命令を発したが、これに従わないため、X(宝塚市)がYに対し同工事を続行してはならない旨の裁判を求めた事案である。本件においては、一審以来、①行政主体が私人に対して行政上の義務の履行を求める訴訟を提起することが許されるか、②パチンコ店の建築を規制する本件条例は風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律及び建築基準法に違反しないか、③本件条例は職業の自由を保障する憲法二二条一項及び財産権を保障する憲法二九条二項に違反しないか、という点が争われていた。一審(判時一六一三号三六頁)及び二審(判時一六六八号三七頁)は、ともに、①の論点について判断しないまま、②の論点につき、本件条例は風営法及び建築基準法に違反するとの判断を示し、Xの請求を棄却すべきものとした。

二 本判決は、職権をもって、「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、裁判所法三条一項にいう法律上の争訟に当たらず、これを認める特別の規定もないから、不適法というべきである。」とした上、「本件訴えは、地方公共団体であるXが本件条例八条に基づく行政上の義務の履行を求めて提起したものであり、原審が確定したところによると、当該義務がXの財産的権利に由来するものであるという事情も認められないから、法律上の争訟に当たらず、不適法というほかない。」として、原判決を破棄し、一審判決を取り消して本件訴えを却下した。

三 行政上の義務の履行を確保するための法制度には、行政の自力執行の方法による行政的執行制度と裁判所の介入による実現を図る司法的執行制度とがある。戦前の我が国では、国税徴収法と行政執行法を中心とする行政的執行制度が構築されていた。戦後、公法上の金銭債権に関しては、強制徴収による行政的執行の仕組みに変更はなかったが、それ以外の行政上の義務に関しては、昭和二三年に行政執行法が廃止され、これに代わる行政上の義務の履行確保に関する一般法として制定された行政代執行法は、行政代執行のみを認め、直接強制及び執行罰については個別立法の規定に委ねることにした。ところが、実際には、個別立法において直接強制や執行罰の規定が置かれることはほとんどなかったこともあって、国又は地方公共団体が行政上の義務の履行を求める仮処分等を提起する例が現われるようになり、その許否が論じられるようになった。

四 この点について、学説や下級審裁判例の中には、行政主体と私人の間には行政上の義務の履行を求める債権債務関係がある、あるいは、行政主体は行政上の権限に由来する履行請求権を有するなどとして、これに基づく履行請求訴訟を提起することができるとして、これを肯定する見解がある一方(細川俊彦「公法上の義務履行と強制執行」民商八二巻五号六四一頁、磯野弥生「行政上の義務履行確保」現代行政法大系(2)二五二頁、阿部泰隆「行政上の義務の民事執行」行政法の解釈三二二頁、村上順・判評三三二号一二頁、岐阜地決昭43・2・14訟月一四巻四号三八四頁、岐阜地判昭44・11・27判時六〇〇号一〇〇頁、大阪高決昭60・11・25判時一一八九号三九頁、横浜地決平1・12・8本誌七一七号二二〇頁、富山地決平2・6・5訟月三七巻一号一頁、神戸地伊丹支決平6・6・9判自一二八号六八頁等)、①戦後の法改正の趣旨は、戦前における行政機関による強制が過剰であったという反省から、これを大幅に縮減するという点にあったのであり、その際、行政的執行に代わるものとして司法的執行を認めるという選択が立法者によって行われたわけではないこと、②裁判所の権限の原則的範囲を定める憲法七六条一項及び裁判所法三条一項の規定も、司法的執行を包含するまでに裁判所の権限を拡大する趣旨であったとはいえないこと、③法令又は行政処分によって国民に何らかの行政上の義務が課されたからといって、直ちに行政主体が当該義務の履行を求める実体法上の請求権を有するとはいい難いこと等の問題点を指摘するものもあり(小早川光郎「行政による裁判の作用」法教一五一号一〇六頁、芝池義一・行政法総論講義〔第3版〕二〇二頁、ジュリ増刊行政強制一八頁、最高裁判所事務総局編・行政資料第六二号二二〇頁、宇賀克也・高田裕成「行政上の義務履行確保」法教二五三号一一頁等)、消極説に立つ下級審裁判例もみられた(神戸地伊丹支決昭60・10・18判時一一八九号四二頁、神戸地伊丹支決平9・9・9本誌九六二号一三三頁等)。

五 行政代執行法の規定や制定経緯等に照らすと、同法は、行政上の義務の履行確保の一般的手段としては行政代執行に限って認める趣旨で制定された法律であることは明らかであるから、行政上の義務の履行確保の手段が不十分なのは不都合であるという制度の必要性のみから、行政上の義務の履行請求訴訟を認めようとする積極説の立場は、法解釈論としては問題がある。また、行政上の義務には、法令により直接命じられるものと、行政庁が法令に基づいて発した行政処分によって命じられるものとがあるが、いずれの場合であっても、その根拠となる行政上の権限は、通常、公益確保のために認められているにすぎないのであって、行政主体がその実現について主観的な権利を有するとは解し難い。
ところで、通説・判例によると、①憲法七六条一項にいう「司法権」とは、具体的な争訟事件について法を適用し宣言することによってこれを解決する国家作用である、②裁判所法三条一項にいう「法律上の争訟」の概念は、このような司法権の本質的な要素である具体的事件・争訟性の要件を表現したものである、③行政訴訟のうち、個人的な権利利益の保護救済を目的とする主観訴訟は、「法律上の争訟」として裁判所の本来的な裁判権の範囲に属するが、個人の権利利益の侵害を前提としない客観訴訟は、司法権の当然の内容を成すものではなく、裁判所法三条一項後段にいう「その他法律において特に定める権限」として立法政策的に裁判所の裁判権の範囲に属せられたものである、と解されている(佐藤幸治〔第3版〕二九八頁、注釈日本国憲法(下)一一二七頁、最高裁判所事務総局編・裁判所法逐条解説(上)二四頁、兼子一165C竹下守夫・裁判法〔第4版〕六五頁、杉本良吉・行政事件訴訟法の解説二五頁、一三三頁、南博方編・条解行政事件訴訟法一八八頁、二二一頁、八五九頁、塩野宏・行政法Ⅱ〔第2版〕二一四頁、芦部信喜・憲法〔新版〕三〇二頁、最一小判昭28・5・28民集七巻五号六〇一頁、最二小判昭28・6・12民集七巻六号六六三頁、最三小判昭41・2・8民集二〇巻二号一九六頁、本誌一九〇号一二六頁、最三小判昭56・4・7民集三五巻三号四四三頁等)。そこで、このような見地から行政上の義務の履行請求訴訟について検討すると、国や地方公共団体が財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合は別として、国や地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の主観的な権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではないと考えられる。本判決は、このような観点から、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として私人に対して行政上の義務の履行を求める訴訟の適法性を否定したものであり、実務上、重要な意義を有するものと思われる。

2.義務違反に対する制裁
(1)刑罰と反則金

+判例(S57.7.15)
理由
上告代理人中田明男、同井上善雄、同山川元庸の上告理由について
所論は、道路交通法一二七条一項の規定による警視総監又は道府県警察本部長(以下「警察本部長」という。)の反則金の納付の通告は抗告訴訟の対象とはなりえないから本件訴えは不適法であるとした原判決の判断は、憲法三一条、三二条、七六条二項後段に違反する、というのである。
交通反則通告制度は、車両等の運転者がした道路交通法違反行為のうち、比較的軽微であつて、警察官が現認する明白で定型的なものを反則行為とし、反則行為をした者に対しては、警察本部長が定額の反則金の納付を通告し、その通告を受けた者が任意に反則金を納付したときは、その反則行為について刑事訴追をされず、一定の期間内に反則金の納付がなかつたときは、本来の刑事手続が進行するということを骨子とするものであり、これによつて、大量に発生する車両等の運転者の道路交通法違反事件について、事案の軽重に応じた合理的な処理方法をとるとともに、その処理の迅速化を図ろうとしたものである。
このような見地から、道路交通法は、反則行為に関する処理手続の特例として、警察官において、反則者があると認めるときは、その者に対し、すみやかに反則行為となるべき事実の要旨及び当該反則行為が属する反則行為の種別等を告知し(一二六条一項)、警察官から報告を受けた警察本部長は、告知を受けた者が当該告知に係る種別に属する反則行為をした反則者であると認めるときは、その者に対し、当該反則行為が属する種別に係る反則金の納付を書面で通告し(一二七条一項)、通告を受けた者は、反則行為に関する処理手続の特例の適用を受けようとする場合には、当該通告を受けた日の翌日から起算して一〇日以内に通告に係る反則金を国に対して納付しなければならず(一二八条一項、一二五条三項)、右反則金を納付した者は、当該通告の理由となつた行為に係る事件について、公訴を提起されないことになり(一二八条二項)、反則者は、当該反則行為についてその者が当該反則行為が属する種別に係る反則金の納付の通告を受け、かつ、前記一〇日の期間が経過した後でなければ、当該反則行為に係る事件について、公訴を提起されないこと(一三〇条)等を定めている。
右のような交通反則通告制度の趣旨とこれを具体化した道路交通法の諸規定に徴すると、反則行為は本来犯罪を構成する行為であり、したがつてその成否も刑事手続において審判されるべきものであるが、前記のような大量の違反事件処理の迅速化の目的から行政手続としての交通反則通告制度を設け、反則者がこれによる処理に服する途を選んだときは、刑事手続によらないで事案の終結を図ることとしたものと考えられる。道路交通法一二七条一項の規定による警察本部長の反則金の納付の通告(以下「通告」という。)があつても、これにより通告を受けた者において通告に係る反則金を納付すべき法律上の義務が生ずるわけではなく、ただその者が任意に右反則金を納付したときは公訴が提起されないというにとどまり、納付しないときは、検察官の公訴の提起によつて刑事手続が開始され、その手続において通告の理由となつた反則行為となるべき事実の有無等が審判されることとなるものとされているが、これは上記の趣旨を示すものにほかならない。してみると、道路交通法は、通告を受けた者が、その自由意思により、通告に係る反則金を納付し、これによる事案の終結の途を選んだときは、もはや当該通告の理由となつた反則行為の不成立等を主張して通告自体の適否を争い、これに対する抗告訴訟によつてその効果の覆滅を図ることはこれを許さず、右のような主張をしようとするのであれば、反則金を納付せず、後に公訴が提起されたときにこれによつて開始された刑事手続の中でこれを争い、これについて裁判所の審判を求める途を選ぶべきであるとしているものと解するのが相当である。もしそうでなく、右のような抗告訴訟が許されるものとすると、本来刑事手続における審判対象として予定されている事項を行政訴訟手続で審判することとなり、また、刑事手続と行政訴訟手続との関係について複雑困難な問題を生ずるのであつて、同法がこのような結果を予想し、これを容認しているものとは到底考えられない
右の次第であるから、通告に対する行政事件訴訟法による取消訴訟は不適法というべきであり、これと趣旨を同じくする原審の判断は正当である。
所論は、憲法三二条違反をいうが、通告が通告に係る反則金納付の法律上の義務を課するものではなく、また、通告の理由となつた反則行為となるべき事実の有無等については刑事手続においてこれを争う途が開かれていることは前記のとおりであるから、通告自体に対する不服申立ての途がないからといつて、所論憲法の条規に違反するものではなく、このことは従来の判例の趣旨に徴して明らかである(最高裁判所昭和三八年(オ)第一〇八一号同三九年二月二六日大法廷判決・民集一八巻二号三五三頁参照)。また、所論中憲法三一条、七六条二項後段違反をいう点は、通告は、前記のような性質の行政行為であつて、刑罰を科するものではなく、行政機関のする裁判でもないから、いずれもその前提を欠くものというべきである。
論旨はすべて理由がなく、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 団藤重光 裁判官 藤﨑萬里 裁判官 本山亨 裁判官 中村治朗 裁判官 谷口正孝)

(2)過料~行政上の秩序罰

(3)加算税
+判例(S33.4.30)
理由
上告代理人青木一男、池田義秋の上告理由
第一点について。
法人税法(昭和二二年法律二八号。昭和二五年三月三一日法律七二号による改正前のもの。以下単に法という)四三条の追徴税は、申告納税の実を挙げるために、本来の租税に附加して租税の形式により賦課せられるものであつて、これを課することが申告納税を怠つたものに対し制裁的意義を有することは否定し得ないところであるが、詐欺その他不正の行為により法人税を免れた場合に、その違反行為者および法人に科せられる同法四八条一項および五一条の罰金とは、その性質を異にするものと解すべきである。すなわち、法四八条一項の逋脱犯に対する刑罰が「詐欺その他不正の行為により云々」の文字からも窺われるように、脱税者の不正行為の反社会性ないし反道義性に着目し、これに対する制裁として科せられるものであるに反し、法四三条の追徴税は、単に過少申告・不申告による納税義務違反の事実があれば、同条所定の已むを得ない事由のない限り、その違反の法人に対し課せられるものであり、これによつて、過少申告・不申告による納税義務違反の発生を防止し、以つて納税の実を挙げんとする趣旨に出でた行政上の措置であると解すべきである。法が追徴税を行政機関の行政手続により租税の形式により課すべきものとしたことは追徴税を課せらるべき納税義務違反者の行為を犯罪とし、これに対する刑罰として、これを課する趣旨でないこと明らかである。追徴税のかような性質にかんがみれば、憲法三九条の規定は刑罰たる罰金と追徴税とを併科することを禁止する趣旨を含むものでないと解するのが相当であるから所論違憲の主張は採用し得ない。

第二点ないし第一二点について、
法人税の未納が逋脱犯を構成する場合においても、逋脱犯が成立すること自体が課税の原因となるわけではなく、逋税犯が成立する場合には、同時に課税の原因となるべき事実が存在し、そのことが一般の規定による課税権発動の原因となるに過ぎないのであるから、法四八条所定の詐欺その他不正の行為により法人税を逋脱した場合は、その基本の性格において、法二九条以下の過少申告・不申告の一の場合にほかならないものと解すべぎであり、従つて法四八条三項の規定によつてなされる課税標準の更正又は決定も当然法二九条以下の課税標準の更正又は決定の手続によつてなさるべきものであり、この場合に法四三条の追徴税の徴収を排除すべき理由はない。しかも法が申告納税の実を挙げるため法四八条の刑罰を以つて臨むだけでは十分でないとして、別に追徴税の制度を設けた趣旨にかんがみれば、法人税の未納が逋脱犯を構成するかどうかにかかわらず、徴税庁は、その独自の認定により未納税額を認定し、これを基礎として追徴税を課し得るものとする趣旨であることは明らかであつて、逋脱犯として処罰されたからといつて、追徴税を免れしめる理由はない。そして、この場合の更正又は決定が、一般の過少申告・不申告の一の場合である以上、徴税庁が課税標準を更正又は決定するについては、必ずしも刑事裁判の確定した逋脱税額に拘束せられるものでなく、また、徴税庁のした更正又は決定の処分に対しては、法三六条以下の規定により審査、訴願および訴訟をなすことができ、その結果民事裁判と刑事裁判が課税標準額について一致しない場合を生ずることがあつても、両者はその目的と手続を異にする以上、また已むを得ないものといわねばならぬ。
すなわち、法四八条三項の法意は、同条一項の逋脱犯があつた場合において、その逋脱税額が未徴収であるときは徴税庁は直ちに、その課税標準を更正又は決定して、その税金を徴収すべきことを規定したに止り、この場合徴税庁は刑事裁判の確定した逋脱税額に拘束され、その額のみを徴収すべく、法四三条の追徴税の徴収を許さない趣旨と解すべきものではない。所論は右判示と異り、法四八条三項に定める課税標準の更正又は決定は、法二九条以下の更正又は決定の手続とは別個な特殊な徴税手続であつて、刑事裁判によつて確定された逋脱税額に拘束され、その税額のみを直ちに徴収すべきものであり、その場合法四三条の追徴税の徴収は許されないものであるとの見解に立脚して、原判決の示した法律判断を縷々論難するに帰し採用することを得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官下飯坂潤夫の補足意見があるほか裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
裁判官下飯坂潤夫の補足意見は次のとおりである。
論旨第一点に関する判決理由を補足する意味合において卑見を左に開陳する。
わが国における納税制度は直接税に関する限り昭和二二年を境として一変した。すなわち従来の賦課制度から申告納税制度に改められたのである。申告納税制度とは一口に言えば納税義務者が自己の課税標準と税額を自主的に計算しこれを税務署に申告するとともに、その税額を自発的に納入する制度である。しかし、多数の納税義務者の中には利己的な立場から、これれに協力しない者がないわけではなく、これを法人税について言えば、(イ)所定の期限内に申告書を提出しなかつたり、(ロ)期限内に申告書を提出しても税額が過少であつたり、(ハ)課税標準や欠損金額の計算の基そとなる事実を隠ぺい又は仮装して申告したりする者があるのである。そこで法律はかかる利己的納税義務者に対処して申告納税制度を確保すべく、それらの納税義務者に対しては更に重率の税金を課することとし、右(イ)の者からは無申告加算税、(ロ)の者からは過少申告加算税、(ハ)の者からは重加算税をそれぞれ徴収すべきものと定めているのである。そしてこの最後の(ハ)に属するものが現行法人税法の重加算税に該当するものであり、本件における問題の追徴税なのである。従つて追徴税と言つても、また重加算税と言つても、ひとしく法人税そのものであり、しかも独立科目の税種ではないのである。このことは旧法人税法四三条が明規している「前略……割合を乗じて算出した金額に相当する税額の法人税を追徴する」との文言によつても明らかであろう。因に、改正前の所得税法にいわゆる追徴税も、また現行所得税法にいう重加算税も、法人税に於けると同じように所得税そのものであつて、それ以外の何ものでもないのである。(これら税金の徴収は国税徴収法所定の手続によるべきであるに反し罰金、科料は刑事訴訟法により裁判の執行として納付されるものであることを記憶する必要がある。)
上叙のとおりであるからわが法律体系の下において所論追徴税は税金そのものであり、憲法三九条後段にいう刑事上の責任を、刑罰そのものと解しても、また学者のいわゆる二重の危険と解しても、そのいずれの範ちゆうにも属しないものなのである。もし所論追徴税を強いて憲法上の論議の対象とするならば、国民の納税義務に関する憲法三〇条ないしは正当手続の保障に関する憲法三一条が取上げらるべきであろう。これを要するに私は所論が憲法三九条後段を論拠とする限り到底首肯し難いものとするのである。
(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 小谷勝重 裁判官 島保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 入江俊郎 裁判官 垂水克己 裁判官 河村大助 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 奥野健一)

(4)課徴金

(5)制裁的公表
ア 設問4(1)~制裁的公表と条例
侵害留保説からは、情報提供目的の公表には法律の根拠は不要

行政代執行法
+第一条  行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。
=行政上の義務履行確保の手段に含まれるとすれば、条例で定めることはできないことになる!
→含まれない。
←超自治の理念

イ 制裁的公表の争い方
当事者訴訟→勧告の違法確認

3.即時強制
相手方の義務の存在を前提とせずに、行政機関が直接に身体または財産に実力を行使して行政上望ましい状態を実現すること

・条例によっても即時強制を定めることも可能
←義務履行確保手段ではないので、行政代執行法1条の適用はない。


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