民法択一 債権各論 契約各論 売買


・売買契約に基づく代金支払請求訴訟において、履行期の定めを請求原因として主張する必要はない←売買契約は諾成契約

・売買契約に基づく目的物引渡請求訴訟において、契約の締結の当時目的物の所有権が売主に帰属していたことを請求原因として主張立証する必要はない!!!
←他人物売買も債権的には有効であり、目的物の所有権が売主に帰属していることは契約の本質的要素ではないから!!
+(他人の権利の売買における売主の義務)
第560条
他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。

・期限の合意を、売買契約の付款であり、売買契約の成立要件とは区別される可分なものと考える見解に立った場合、売買契約に代金支払期限が付されているときは、代金支払請求をする原告は、請求原因において期限の合意およびその期限の到来を主張立証する必要はなく、期限の合意が抗弁となり、その期限の到来したことが再抗弁となる!!!!

・売買代金支払請求をする場合には、目的物を引き渡したことは、同時履行の抗弁に対する再抗弁として主張すれば足りる!

遅延損害金を請求する場合には、請求原因で売買契約の存在を主張立証すると、同時履行の抗弁権の存在が基礎付けられてしまうが、同時履行の抗弁権の存在は履行遅滞の違法性阻却事由であるので請求原因において、目的物の引渡しの提供(=不動産の場合は目的物の所有権移転手続きの提供)を主張立証して、相手方の同時履行の抗弁権を失わせる必要がある!!!!!!

・売買契約に基づき売買契約の支払いを請求する場合において、法律行為の付款である条件をそれが付された法律行為の成立要件とは区分される可分なものと考える見解によると、売買契約に停止条件が付されているときは、停止条件が成就したことが再抗弁となる!!!
←付款の主張立証責任は、付款によって利益を受ける者が負担すべし

・プラスで・・・。
法律行為の付款である期限をそれが付された法律行為の成立要件とは区分されない不可分のものと考える見解(否認説)によると、売買契約に弁済期が定められているときは、付款の存在については売買契約に基づき売買代金の支払いを求める原告に主張立証責任があり、弁済期が到来していないことは、これに対する被告による否認になる!!
・・・

・XY間の売買契約において手付が交付された場合、Yが手付を放棄して売買契約を解除したと訴訟において主張するためには、YはXとの間で売買契約に付随して解約手付の趣旨で手付金を交付する合意をしたことを主張する必要はない!!!
←手付は特別の意思表示がない限り、557条に定めている効力、すなわちいわゆる解約手付としての効力を有するとして、これと異なる効力を有する手付であることを主張する者は、特別の意思表示が存在することを主張立証すべき責任がある!!!
+(手付)
第557条
1項 買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
2項 第545条第3項の規定は、前項の場合には、適用しない。

・手付解除の抗弁に対して、当該手付が違約手付であることを再抗弁として主張することは主張自体失当である!!ホーーー
←違約の場合手付の没収又は倍返しをするという約束は民法の規定による解除の留保を少しも妨げないとして、反対の意思表示がない限り、違約手付としての性質と解約手付としての性質は並存し得る。=再抗弁とならない!
+(S24.10.4)
上告理由は末尾添附別紙記載の通りである。
よつて案ずるに売買において買主が売主に手附を交付したときは売主は手附の倍額を償還して契約の解除を為し得ること民法第五五七条の明定する処である。固より此規定は任意規定であるから、當事者が反対の合意をした時は其適用のないこというを待たない。しかし、其適用が排除される為めには反対の意思表示が無ければならない。原審は本件甲第一号証の第九条が其反対の意思であると見たものの様でめる。固より意思表示は必しも明示たるを要しない。黙示的のものでも差支ないから右九条が前記民法の規定と相容れないものであるならばこれを以て右規定の適用を排除する意思表示と見ることが出来るであらう。しかし右第九条の趣旨と民法の規定とは相容れないものではなく十分両立し得るものだから同条はたとえ其文字通りの合意が眞実あつたものとしてもこれを以て民法の規定に対する反対の意思表示と見ることは出来ない違約の場合手附の没収又は倍返しをするという約束は民法の規定による解除の留保を少しも妨げるものではない解除権留保と併せて違約の場合の損害賠償額の予定を為し其額を手附の額によるものと定めることは少しも差支なく、十分考へ得べき処である。
其故右九条の様な契約条項がある丈けでは(特に手附は右約旨の為めのみに授受されたるものであることが表われない限り)民法の規定に対する反対の意思表示とはならない。されば原審が前記第九条によつて直ちに民法五五七条の適用が排除されたものとしたことは首肯出来ない。(しかのみならず被上告人自身原審において右第九条は坊間普通に販売されて居る売買契約用例の不動文字であつて本件契約締結當時當事者双方原審の認定したる様な趣旨のものと解して居たのではなくむしろ普通の手附倍返しによる解除権留保の規定の様に解して居るものと見られる様な趣旨の供述をして居ること論旨に摘示してある通りであり其他論旨に指摘する各資料によつても當事者が右第九条を以て民法第五五七条の規定を排除する意思表示としたものと見るのは相當無理の様にも思われる)なお原審は本件売買の動機を云々して居るけれどもそれが民法規定の適用排除の意思表示とならないのは勿論必しも原審認定の一資料たり得るものでもないとは論旨の詳細に論じて居る通りである(殊に被上告人が本件売買締結の以前から同じく京都内にある他の家屋買入の交渉をして居り遂にこれを買取つて居る事実並に本件家屋には當時賃借人が居住して居た事実被上告人子女の轉校が必ずしも本件売買成立の為めであると見るベべきでないこと等に関する所論は注目すべきものである)。要するに原審の挙示した資料では前記民法規定の適用排除の意思表示があつたものとすることは出来ないのであつて此点において論旨は理由があり原判決は破毀を免れないよつて上告を理由ありとし民事訴訟法第四〇七条に従つて主文の如く判決する。

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解約手付
いったん締結した契約を、理由のいかんにかかわらず、後で解除することができる手付を解約手付といいます。相手方が履行に着手する前までは、手付金を支払った者は手付金を放棄し(手付流し)、相手方は手付金の2倍の額を返却すれば(手付倍返し)、契約を解除することができます。履行の着手とは、買主が代金の一部として内金を支払ったり、売主が物件の引渡しや登記の準備を始めたことなどをいいます。手付には、解約手付の他に、契約成立を証する「証約手付」、債務不履行の際の損害賠償の予定、または、違約罰としての「違約手付」があります。

違約手付
当事者に契約違反(違約)があった場合に、損害賠償とは別に違約の「罰」として没収することができる手付けをいいます。

証約手付
契約の締結を証することを目的として授受される手付けをいいます。

・売主Xと買主Yとの間の売買契約において手付が交付された。YのXに対する目的物引渡請求訴訟において、Xが手付による解除の抗弁を主張する場合、YはXとYが解除権の留保をしない旨の合意をしたことを再抗弁として主張することができる!!!!!!
←557条の規定は任意規定であるから、当事者が解除権の留保を排除する旨の合意をすれば、手付による解除はできず、当該合意の主張は、手付による解除の抗弁に対する再抗弁となる!!!

・上記事案において、XもしくはYがXの解除の意思表示に先立ち履行に着手したことを再抗弁として主張することはできない!!!!=「Yが」だったら大丈夫たよね!
相手方が履行に着手するまでは履行に着手した当事者からの解除を認めている。=Xが解除の意思表示に先立ち履行に着手した事実の主張は主張自体失当!

+判例(S40.11.24)イイネ!
同第二点および上告会社代表者Aの上告理由について。
論旨は、要するに、被上告人と大阪府との間で本件売買契約の目的物件である本件不動産についての払下契約が締結された時点あるいは右不動産について上告人主張の仮登記仮処分手続がなされた時点において、被上告人又は上告人が民法五五七条一項にいう契約の履行に着手したものというべきである旨の上告人の主張を排斥した原判決は、右法条の解釈適用を誤つた違法がある、というに帰する。
よつて按ずるに、民法五五七条一項にいう履行の着手とは、債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指す!!!!!!!!!ものと解すべきところ、本件において、原審における上告人の主張によれば、被上告人が本件物件の所有者たる大阪府に代金を支払い、これを上告人に譲渡する前提として被上告人名義にその所有権移転登記を経たというのであるから、右は、特定の売買の目的物件の調達行為にあたり、単なる履行の準備行為にとどまらず、履行の着手があつたものと解するを相当とする。従つて、被上告人のした前記行為をもつて、単なる契約の履行準備にすぎないとした原審の判断は、所論のとおり、民法五五七条一項の解釈を誤つた違法があるといわなければならない。(なお、本件の事情のもとに、上告人主張の仮登記仮処分手続がなされたことをもつては所論の履行の着手があつたものとみることができない旨の原判決の判断は正当である。)
しかしながら、右の違法は、判決に影響を及ぼすものではなく、原判決破棄の理由とはなしがたい。その理由は、次のとおりである。
解約手附の交付があつた場合には、特別の規定がなければ、当事者双方は、履行のあるまでは自由に契約を解除する権利を有しているものと解すべきである。然るに、当事者の一方が既に履行に着手したときは、その当事者は、履行の着手に必要な費用を支出しただけでなく、契約の履行に多くの期待を寄せていたわけであるから、若しかような段階において、相手方から契約が解除されたならば、履行に着手した当事者は不測の損害を蒙ることとなる。従つて、かような履行に着手した当事者が不測の損害を蒙ることを防止するため、特に民法五五七条一項の規定が設けられたものと解するのが相当である。
同条項の立法趣旨を右のように解するときは、同条項は、履行に着手した当事者に対して解除権を行使することを禁止する趣旨と解すべく、従つて、未だ履行に着手していない当事者に対しては、自由に解除権を行使し得るものというべきである。このことは、解除権を行使する当事者が自ら履行に着手していた場合においても、同様である。すなわち、未だ履行に着手していない当事者は、契約を解除されても、自らは何ら履行に着手していないのであるから、これがため不測の損害を蒙るということはなく、仮に何らかの損害を蒙るとしても、損害賠償の予定を兼ねている解約手附を取得し又はその倍額の償還を受けることにより、その損害は填補されるのであり、解約手附契約に基づく解除権の行使を甘受すべき立場にあるものである。他方、解除権を行使する当事者は、たとえ履行に着手していても、自らその着手に要した出費を犠牲にし、更に手附を放棄し又はその倍額の償還をしても、なおあえて契約を解除したいというのであり、それは元来有している解除権を行使するものにほかならないばかりでなく、これがため相手方には何らの損害を与えないのであるから、右五五七条一項の立法趣旨に徴しても、かような場合に、解除権の行使を禁止すべき理由はなく、また、自ら履行に着手したからといつて、これをもつて、自己の解除権を放棄したものと擬制すべき法的根拠もない。 !!!!
ところで、原審の確定したところによれば、買主たる上告人は、手附金四〇万円を支払つただけで、何ら契約の履行に着手した形跡がない。そして、本件においては、買主たる上告人が契約の履行に着手しない間に、売主たる被上告人が手附倍戻しによる契約の解除をしているのであるから、契約解除の効果を認めるうえに何らの妨げはない。従つて、民法五五七条一項にいう履行の着手の有無の点について、原判決の解釈に誤りがあること前に説示したとおりであるが、手附倍戻しによる契約解除の効果を認めた原判決の判断は、結論において正当として是認することができる。論旨は、結局、理由がなく、採用することができない。

・Aが解除する場合、本件契約を手付により解除する旨の通知がBに到達したとしても、Aが手付の倍額をBに提供しなければ、解除の効果は発生しない!!!
+判例(H6.3.22)
上告代理人山本博文の上告理由について
民法五五七条一項により売主が手付けの倍額を償還して契約の解除をするためには、手付けの「倍額ヲ償還シテ」とする同条項の文言からしても、また、買主が同条項によって手付けを放棄して契約の解除をする場合との均衡からしても、単に口頭により手付けの倍額を償還する旨を告げその受領を催告するのみでは足りず、買主に現実の提供をすることを要するものというべきである。しかるに、原審の適法に確定したところによれば、上告人の手付倍額の償還は、いずれの場合も口頭の提供をしたのみであるというのであり、記録によれば、売主である上告人は、買主である被上告人に対して手付けの倍額を支払う旨口頭で申し入れた旨を主張するにとどまり、それ以上に現実の提供をしたことにつき特段の主張・立証をしていないのであるから、原審が契約の解除の効果をもたらす要件の主張を欠くものとして、売買契約解除の意思表示が無効であるとしたのは正当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に基づき又は原審で主張していない事実に基づいて原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官千種秀夫の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
裁判官千種秀夫の補足意見は、次のとおりである。
民法五五七条一項にいう手付けの倍額の「償還」の意義について、若干補足しておきたい。
売主が手付けの倍額を償還して契約の解除をする場合の手付けの倍額の償還は、金銭を相手方に交付するという行為の外形からすれば、債務不履行の責めを免れるための弁済の提供に類似する面があるけれども、手付けの償還は、売買契約の解除という権利行使の積極要件であるから、債権者の受領を前提とした弁済の提供とはおのずからその性格を異にし、相手方の態度いかんにかかわらず、常に現実の提供を要するものというべきである。もとより現実の提供といっても、相手方の対応等によりその具体的な態様は異ならざるを得ないのであって、買主に対して手付けの倍額に相当する現金を交付する場合もあれば、今日のように銀行取引の発達した社会においては、取引の状況によっては、いわゆる銀行保証小切手を交付するなど現金の授受と同視し得る経済上の利益を得さしめる行為をすれば足りる場合もあるであろう。しかし、いずれにしろこれを相手方の支配領域に置いたと同視できる状態にしなければならないのであって、これが同条項にいう「償還」の語意にも合致するゆえんであると考える。
従来、とかく、その外形の類似性から、手付けの「償還」に関して、債務の履行としての弁済の提供と明確に区別をすることなく論じられているかにみえることに鑑み、一言補足する次第である。

・土地の一部を分筆する登記手続は、売買目的物の登記移転という履行の提供をするために欠くことのできない前提行為に当たる!!=解除できない。

・AがC所有の土地を購入する契約を締結する行為は、本件契約の履行行為とは関係がなく、履行行為の一部をなし又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為とはいえない。=解除できる。
←客観的に外部から認識し得るってとこにひっかかったかね(笑)

・不動産の所有者たる第三者に代金を支払い、これを買主に譲渡する前提として売主名義にその所有権移転登記を経た行為は、特定の売買の目的物権の調達行為に当たり、単なる履行の準備行為にとどまらず、557条1項前段にいう履行の「着手」があったものといえる!=解除できない。

・Aは甲土地をBに売却する契約を締結し、BはAに手付を交付した。本件契約においては、売買代金の支払について履行期が定められていたが、Bは、その履行期前に売買代金をAに提供した。Bが履行に着手したといえることもあり、解除できない場合もある。
+判例(S41.1.21)
上告代理人岡田実五郎、同佐々木凞の上告理由第三点について。
民法五五七条一項にいう履行の着手とは、債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし、または、履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指すものと解すべく、債務に履行期の約定がある場合であつても、当事者が、債務の履行期前には履行に着手しない旨合意している場合等格別の事情のない限り、ただちに、右履行期前には、民法五五七条一項にいう履行の着手は生じ得ないと解すべきものではない
しかるに、原判決は、売買代金の提供が民法第五五七条に定める売買契約の履行の着手となるためには、その当時履行期が到来していることを要するものと解すべきであるとし、履行期到来の立証がない以上、履行の着手があつたとする上告人の主張は理由がない旨判断して上告人の本訴請求を排斥するものであって、原判決の右判断は、民法第五五七条一項の解釈適用を誤まり、ひいて理由不備の違法をおかしたものといわざるを得ない。論旨は理由がある。そこで爾余の論旨に対する判断をまつまでもなく原判決は破棄を免かれず、更に審理を尽させるため、原審に差し戻すべきものとする。

+判例(H5.3.16)イイネ!
上告代理人飯原一乗、同高橋伸二の上告理由について
一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
1 亡Aは、その所有に係る第一審判決添付物件目録記載の土地建物(以下「本件土地建物」という)及びその長男である上告人の所有に係る土地建物を売却し、その代金をもって上告人の居住する日野市豊田駅付近に新たに住宅地を購入してその家族と同居したいと考え、昭和六一年二月頃、本件土地建物の売却及び新住宅地の購入の媒介を住友不動産販売株式会社に依頼した。
2 被上告人は、勤務先の社宅に入居していたが、その社宅管理規程では、満四五歳に達する日の属する月の末日に社宅の貸与が終了するとされているところ、その時期が近づいてきたため、転居先を求めていた。
3 A及び被上告人は、昭和六一年三月一日、住友不動産販売の仲介により、Aを売主、被上告人を買主とし、売買代金八五〇〇万円、内金一〇〇万円を契約締結時に、残金八四〇〇万円を同六二年一二月二五日にそれぞれ支払う、本件土地の契約面積を登記簿上の地積二六四・〇七平方メートルとするとの約定で、本件土地建物についての売買契約(以下「本件売買契約」という)を締結し、右契約当日、被上告人から一〇〇万円が手付金として支払われたが、Aの本件土地建物売却の目的が前示住居の買換えにあることについては、契約締結の際作成された同年二月二八日付けの不動産売買契約書にも後記4のとおり記載されたほか、専任媒介契約書にもその旨記載されており、被上告人もこれを了知していた。
4 本件売買契約においては、本件土地の面積として一応、登記簿上の地積(二六四・〇七平方メートル)を前提とするものの、本件土地が古い分譲地であったところから、被上告人の申出により、契約締結後改めて実測し、実測面積に基づいて最終的な代金額を決めることとし、(一)Aは所有権移転登記申請の時までに本件土地の境界を被上告人立会いの上確定させる、本件土地建物の売買面積は実測によるものとし、契約後、被上告人の費用で土地を実測し、登記簿上の地積との差については後記内入金支払の際清算する旨の特約条項が付されたほか、履行期に関し、(二)Aは本件売買契約締結後、別に住居を探すこととし、その希望する物件が決まったときは、被上告人は、右代金支払時期の約定にかかわらず、右希望物件についての契約締結時までに内入金七〇〇万円、同契約締結日より一か月以内に残金をそれぞれ支払う、本件土地建物の所有権は代金完済時に被上告人に移転するが、その場合、Aは昭和六二年一二月二五日を限度として右代金完済後も五か月間本件土地建物の引渡しを延期することができる旨の特約条項が付された。
5 被上告人は、昭和六一年三月八日、約旨に基づき、本件土地の境界確定に立ち会い、自らの費用で本件土地を実測し、その結果、本件土地の地積は二六七・五一平方メートル、本件売買代金総額は八六〇九万八八八〇円と確定した。なお、右実測に要した費用は、売買代金額に比較して少額であった。
6 Aは、本件売買契約締結の前後頃から上告人とともに住友不動産販売に依頼するなどして移転先を探したが、昭和六一年から翌六二年にかけての首都圏の地価の上昇により、本件売買代金額をもっては新住宅の購入が困難であると感じるようになり、本件売買契約の解消を考えるに至った。そこで、Aの意を受けた住友不動産販売の担当者が、同六一年一〇月二九日に被上告人と本件売買契約の解消について話し合い、手付倍返しによる契約解除を申し出た。
7 しかしながら、被上告人は、右申出に応ぜず、前年の八月に山林を売却して所持していた四一〇〇万円、手持ちの株式及び預金のほか必要な資金については勤務先から融資を受ける手続をした上、Aに対し、昭和六一年一〇月三〇日到達の書面により本件売買契約の履行を請求した。
8 そこで、Aの代理人である弁護士木村峻郎及び同池原毅和が、被上告人に対し、同年一一月一四日到達の書面で、手付の倍額の金員を支払う旨口頭の提供をした上、本件売買契約を解除する旨の意思表示をした。
9 被上告人は、昭和六一年一一月二七日、川崎市所在の別の宅地建物を代金六五〇〇万円で購入し、以後、家族とともにこれに居住している。

二 原審は、右事実関係の下において、本件売買契約締結に際して被上告人からAに交付された一〇〇万円が解約手付の趣旨を含むものであり、昭和六一年一一月一四日にAより右手付倍返しによる解除の意思表示がされたことを認めながら、本件土地についての前記一5の実測による契約面積及び売買代金額の確定等が、本件売買契約に基づき、客観的に外部から認識し得るような形でその履行ないしその履行のために欠くことのできない前提行為をした場合に当たり、その後にされた同7の履行請求等が本件売買契約の履行の着手に当たるものとして、解除の効果の発生を認めず、残代金の支払と引換えに本件土地建物についての所有権移転登記手続を求める被上告人の請求を認容すべきものとして、これと同旨の第一審判決に対する上告人の控訴を棄却した。

三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
1 解約手付が交付された場合において、債務者が履行期前に債務の履行のためにした行為が、民法五五七条一項にいう「履行ノ著手」に当たるか否かについては、当該行為の態様、債務の内容、履行期が定められた趣旨・目的等諸般の事情を総合勘案して決すべき!!!である。そして、「債務に履行期の約定がある場合であっても……ただちに、右履行期前には、民法五五七条一項にいう履行の着手は生じ得ないと解すべきものではない」こと判例(最高裁昭和三九年(オ)第六九四号同四一年一月二一日第二小法廷判決・民集二〇巻一号六五頁)であるが、履行の着手の有無を判定する際には、履行期が定められた趣旨・目的及びこれとの関連で債務者が履行期前に行った行為の時期等もまた、右事情の重要な要素として考慮されるべきである。
以上に説示するところに従い、本件において履行期が定められた趣旨・目的、履行の着手に当たるとされる債務者(被上告人)のした行為の時期及びその態様につき、以下、順次検討することとする。
2 まず、本件において履行期が定められた趣旨・目的について見るのに、売主Aによる本件土地建物の売却の動機が、その長男である上告人らと同居するための新住宅兼店舗地購入代金の調達にあり、希望物件が見付かれば(その時期はもとより未確定である)、売主Aは本件売却代金を被上告人より受領して希望物件の購入代金に充てる必要を生じ、他面、本件売却代金の受領と同時に本件土地建物を被上告人に明け渡すことは困難であるので、そのための猶予期間を置き、ただし、買主たる被上告人の立場をも考慮して、買主の代金支払及び売主の本件土地建物明渡しの約定期限たる昭和六二年一二月二五日をもって最終履行期とする合意が当事者間に成立した経緯を知ることができる(なお、以上の約定が、原判決指摘のように、売主の利益に偏しているといえるか否かについては、契約時八五〇〇万円の総代金中わずか一〇〇万円をもって手付金としたこと前記のとおりで、これが買主にとって有利であったことはいうまでもなく、解約手付としての倍返しの額が少ないのは、このような有利性の反面にほかならず、原判決のいう売主に偏した有利さとのバランスが手付金の額によって保たれたものといえよう)。
3 要するに、最終履行期を昭和六二年一二月二五日とする約定は、移転先を物色中の売主Aにとっては死活的重要性を持つことが明らかであり、同六一年三月一日契約締結、最終履行期翌六二年一二月二五日という異例の取決めの中に、本件売買契約の特異性が集約されているということができ、被上告人の主張する「履行ノ著手」の時期が、(一)契約直後の同六一年三月八日の土地測量及び(二)同年一〇月三〇日到達の書面による口頭の提供が、最終履行期に先立つこと一年九か月余ないし一年二か月弱の時期になされたものであることに、特段の留意を要するのである。
4 次に、被上告人がその債務の「履行ノ著手」ありと主張する行為の態様について見ると、その(一)は前述の契約直後の土地測量である。実測の結果、地積が三・四四平方メートル増となったが、実測の結果、公簿面積より地積が減少する場合も予測されていたことは、契約書七条二項の文面よりして明らかであるのみならず、この実測及びその費用(記録によれば一三万八〇〇〇円)の買主負担は、本件売買契約の内容を確定するために必要であるとはいえ、買主(被上告人)の売主(A)に対する確定した契約上の債務の履行に当たらないことは、いうまでもないところである。
その(二)は、買主たる被上告人が、昭和六一年一〇月三〇日到達の書面をもって、「残代金をいつでも支払える状態にして売主たるAに本契約の履行を催告したこと」である。右は、もとより、売買残代金の現実の提供又はこれと同視すべき預金小切手の提供等の類ではなく、単なる口頭の提供にすぎない。
およそ金銭の支払債務の履行につき、その「著手」ありといい得るためには、常に金銭の現実の提供又はこれに準ずる行為を必要とするものではなく、すでに履行期の到来した事案において、買主(債務者)が代金支払の用意をした上、売主(債権者)に対し反対債務の履行を催告したことをもって、買主の金銭支払債務につき「履行ノ著手」ありといい得る場合のあることは否定できないとしても、他面、約定の履行期前において、他に特段の事情がないにもかかわらず、単に支払の用意ありとして口頭の提供をし相手方の反対債務の履行の催告をするのみで、金銭支払債務の「履行ノ著手」ありとするのは、履行行為としての客観性に欠けるものというほかなく、その効果を肯認し難い場合のあることは勿論である。
5 以上これを要するに、被上告人が「履行ノ著手」ありと主張する、その(一)土地の測量はその時期及び性質上、買主たる被上告人の本件売買契約上の確定した債務の履行に当たらないことが明らかであり、また、その(二)昭和六一年一〇月三〇日到達の書面による履行の催告も、最終履行期が翌六二年一二月二五日と定められた本件の前記認定の事実関係の下においては、これをもって買主としての残代金支払債務の「履行の著手」に当たらないことは、ほとんど疑いを容れないところといわなければならない。

四 以上のとおり、本件売買契約において履行期が定められた趣旨・目的、被上告人の行った行為の時期及びその態様等に照らすと、被上告人による本件土地の実測及びAに対する履行の請求等は、これらを総合してみても、履行の着手に当たらないものと解すべきところ、これを肯定した原審の判断には、民法五五七条一項の解釈適用を誤った違法があり、この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。この点の違法をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れず、前示事実関係に照らすと、本件売買契約は有効に解除されたものというべきであり、被上告人の本件請求は棄却するのが相当である。
よって、原判決を破棄し、第一審判決を取り消した上、被上告人の請求を棄却することとし、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

・Bが手付のほか内金をAに支払った後に、Bが本件契約を手付により解除する場合、BはAに対し内金の返還を請求することができる!!
←解約手付による解除については、原則として540条以下の解除の規定が適用される。そして、内金とは、代金の一部支払いのために交付される金銭をいい、手付とは区別される。したがって、買主は原状回復請求(545条1項本文)によって内金の返還を請求することができる!!

・Yが手付を放棄して契約を解除した場合、X及びYに損害賠償義務は生じない!!!
←557条2項
+(手付)
第557条
1項 買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
2項 第545条第3項の規定は、前項の場合には、適用しない

+(解除の効果)
第545条
1項 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2項 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3項 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない

・売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払いについても同一の期限を付したものと推定されるにすぎず、同一の期限を付したものとみなされるわけではない!!!
+(代金の支払期限)
第573条
売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定する。

・売主は、売主が売買の目的物の引渡義務を遅滞している場合、売買の目的物から生じた果実を収取することができる!!!!!ヘーーーー
←売主が引渡債務を遅滞している場合でも、575条1項が適用される!!!!
+(果実の帰属及び代金の利息の支払)
第575条
1項 まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。
2項 買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない。

・買主が目的物の引渡しを受けた場合でも、代金の支払いに期限があるときには、その期限が到来するまでは、買主は利息を支払う義務を負わない!!!←575条2項

・Aが何ら権限なくA名義でB所有の土地をCに売却した場合において、売買契約を締結した後Aが死亡し、BがAを単独で相続したときでも、Bは、当該売買契約に基づくCの履行請求を拒絶することはできる!!!!
+判例(S49.9.4)
上告人らの上告理由について。
他人の権利を目的とする売買契約においては、売主はその権利を取得して買主に移転する義務を負い、売主がこの義務を履行することができない場合には、買主は売買契約を解除することができ買主が善意のときはさらに損害の賠償をも請求することができる。他方、売買の目的とされた権利の権利者は、その権利を売主に移転することを承諾するか否かの自由を有しているのである。
ところで、他人の権利の売主が死亡し、その権利者において売主を相続した場合には、権利者は相続により売主の売買契約上の義務ないし地位を承継するが、そのために権利者自身が売買契約を締結したことになるものでないことはもちろん、これによつて売買の目的とされた権利が当然に買主に移転するものと解すべき根拠もない。また、権利者は、その権利により、相続人として承継した売主の履行義務を直ちに履行することができるが、他面において、権利者としてその権利の移転につき諾否の自由を保有しているのであつて、それが相続による売主の義務の承継という偶然の事由によつて左右されるべき理由はなく、また権利者がその権利の移転を拒否したからといつて買主が不測の不利益を受けるというわけでもない。それゆえ、権利者は、相続によつて売主の義務ないし地位を承継しても、相続前と同様その権利の移転につき諾否の自由を保有し、信義則に反すると認められるような特別の事情のないかぎり、右売買契約上の売主としての履行義務を拒否することができるものと解するのが、相当である。
このことは、もつぱら他人に属する権利を売買の目的とした売主を権利者が相続した場合のみでなく、売主がその相続人たるべき者と共有している権利を売買の目的とし、その後相続が生じた場合においても同様であると解される。それゆえ、売主及びその相続人たるべき者の共有不動産が売買の目的とされた後相続が生じたときは、相続人はその持分についても右売買契約における売主の義務の履行を拒みえないとする当裁判所の判例(昭和三七年(オ)第八一〇号同三八年一二月二七日第二小法廷判決・民集一七巻一二号一八五四頁)は、右判示と牴触する限度において変更されるべきである。
そして、他人の権利の売主をその権利者が相続した場合における右の法理は、他人の権利を代物弁済に供した債務者をその権利者が相続した場合においても、ひとしく妥当するものといわなければならない。
しかるに、原判決(その引用する第一審判決を含む。)は、亡Aが被上告人に代物弁済として供した本件土地建物が、Aの所有に属さず、上告人Bの所有に属していたとしても、その後Aの死亡によりBが、共同相続人の一人として、右土地建物を取得して被上告人に給付すべきAの義務を承継した以上、これにより右物件の所有権は当然にBから被上告人に移転したものといわなければならないとしているが、この判断は前述の法理に違背し、その違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。
以上のとおりであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れないところ、本件土地建物がだれの所有に属するか等につきさらに審理を尽くさせる必要があるので、本件を原審に差し戻すのを相当とする。
よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

・無権利者が事故に権利が帰属するとして土地を売却した場合において、真実の権利者が後日この売買を追認したときは、当該売買契約は、契約時に遡って効力を生じる!!!←116条類推
+(無権代理行為の追認)
第116条
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

+判例(S37.8.10)
上告代理人池田和夫の上告理由第一、二点について。
或る物件につき、なんら権利を有しない者が、これを自己の権利に属するものとして処分した場合において真実の権利者が後日これを追認したときは、無権代理行為の追認に関する民法一一六条の類推適用により、処分の時に遡つて効力を生ずるものと解するのを相当とする(大審院昭和一〇年(オ)第六三七号同年九月一〇日云渡判決、民集一四巻一七一七頁参照)。本件において原審が、挙示の証拠を綜合して上告人は、昭和三〇年六月頃に至り、その長男Aが上告人所有の本件不動産につき、無断で所有権移転登記の手続および本件抵当権の設定をしている事実を知つたのであるが、その後遅くとも同年一二月中、被上告人に対し、右抵当権は当初から有効に存続するものとすることを承認し、前記Aのなした本件抵当権の設定を追認したことを認めた上、前記判示と同趣旨の見解のもとに、右不動産の所有者である上告人がこれを追認した以上、これにより、右抵当権の設定は上告人のために効力を生じたものと判断したのは正当である。論旨第一点は、原判決を正解せず独自の見解にもとづき原判決を非難するものであり、論旨第二点は、ひつきようするに原審が適法になした証拠の取捨判断及び事実認定を非難するに帰し、いずれも採用することができない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

・Aがその所有するギターをBに貸していたところ、Cがこれを盗み、自分の物だと称してDに売却した。DはギターがCの所有物だと過失なく信じてその引渡しを受けた。AはCD間の売買契約を追認しても、Dに代金を請求できるわけではない。
←買主に代金請求できるのは契約の当事者であるC

・(権利を失うおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶)
第576条
売買の目的について権利を主張する者があるために買主がその買い受けた権利の全部又は一部を失うおそれがあるときは、買主は、その危険の限度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。
=全部の支払いを拒むことができるわけではない!!!

・AB間で、甲不動産を購入する売買の予約をした。この場合、売買の予約時に、Aが予約完結の意思表示をした時における時価をもって甲不動産の売買代金とすると定めることもできる!!!!
←売買の一方の予約は、目的物の代金等、将来成立するべき売買の内容の主要な部分が確定され、又は解釈により確定され得る程度に示されていれば足りる!!!!=売買の代金を確定しなくとも、時価によるという趣旨の売買の予約も有効である!

・Aは、Bとの間で、甲不動産を目的とする売買の予約をした。甲不動産がCの所有物である場合でも、AB間における甲不動産の売買の予約は有効である!
←売買の一方の予約は、売買契約として成立が可能であればよく、第三者の所有する物についても、売買の一方の予約をすることは可能である。

+++解説
売買は、上記民法第555条記載の通り、「財産権の相手方への移転」と「その代金を支払うこと」を合意内容とする契約です。基本は財産権の移転と代金の支払合意ですが、財産権の特定程度、代金金額特定程度、代金支払時期、財産権移転時期等の定めを巡って売買の成立の有無が争いになることがしばしばあり、更に、売買契約が成立しなくても民法第556条売買予約が成立したかどうかが争いになることがあります。
売買の予約は、「相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。」と規定され、「売買の一方の予約」とは、売主又は買主のいずれか一方に、本契約である売買を成立させる意思表示をする権利(予約完結権)を与え、これによって相手方に対し、本契約を成立させるとの意思表示(予約完結の意思表示)をすれば、相手方の承諾がなくても本契約である売買が成立することをあらかじめ約束することです。
民法第556条に規定されるのは「売買の一方の予約」で、売主又は買主のいずれか一方にだけ予約完結権を与え、且つ、予約完結権行使で当然に売買が成立するものですが、売主・買主双方又は一方に予約完結権を与える「一般的な予約」契約も出来ます。この一般的な予約では、一方が予約完結権を行使した場合、相手方はこれを承諾する義務を負うことをあらかじめ定める契約ですが、相手方が承諾しない場合、承諾を求める訴えを提起しなければなりません(昭和35年5月24日最高裁判決)。
民法第556条の「売買の一方の予約」の法的性質については、判例は「純然たる一個の予約」とし(大正8年6月10日大審院判決)、学説は、相手方の予約完結意思表示を停止条件とする売買そのものであると見る見解が有力です。「予約」というか「売買そのもの」というかの言葉の違いだけのような気もしますが、更にその違いを検討します。
売買の一方の予約成立のためには、本契約の売買詳細まで特定しておく必要はないとされ、代金額も時価による程度の特定でも可能と解説されていますが、実際、成立の有無が争いなった時は、ケースバイケースで内容の検討が必要になります。
「予約(売買)完結権」は、その意思表示のみによって売買を生じさせる権利で、一種の形成権で、財産上の権利ですから、相手方の承諾なくして譲渡でき、完結の意思表示によって売買は当然に成立します。

+(売買)
第555条
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

+(売買の一方の予約)
第556条
1項 売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。
2項 前項の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う。

・AはBとの間で、Bの所有する甲不動産を目的とする売買の予約をした。Aの予約完結権が仮登記によって保全されている場合において、Aが予約完結権をDに譲渡したときは、仮登記に権利移転の付記登記をするだけで、第三者に対する対抗要件とすることができる!!!!
=予約完結権は相手方の承諾がなくてもこれを譲渡することができる!!!
+判例(S35.11.24)
同第二点について。
不動産売買予約上の権利を不動産登記法二条二号の仮登記によつて保全した場合に、右予約上の権利の譲渡を予約義務者その他の第三者に対抗するためには、仮登記に権利移転の附記登記をなせば足りるのであり、債権譲渡の対抗要件を具備する必要はないと解するのが相当である。そして、右附記登記がなされたときは、その順位は主登記たる仮登記の順位によることとなるのであるから、仮登記後附記登記前に同一不動産に対し第三者により仮差押の登記がなされたとしても、その後右不動産につき売買予約完結の意思表示がなされ、これに基いて所有権移転の本登記がなされた以上、右所有権の取得は仮登記の順位によつて保全される結果、仮差押債権者の登記は所有権取得者の登記に遅れ、これに対抗しえないこととなるのである。
本件において、原審は、訴外株式会社研青社は、昭和二九年一二月二五日頃その所有の原判示不動産を訴外Aに対し判示約定をもつて売り渡す旨の売買の予約をなし、Aの取得した売買予約完結権については、昭和三〇年一月二一日所有権移転請求権保全の仮登記がなされたこと、被上告人は同年七月一〇日Aから右予約完結権を譲り受け、同年八月一七日前記仮登記について権利移転の附記登記を経由し、株式会社研青社に対し売買予約完結の意思表示をなすとともに、同日前記仮登記の本登記をしたこと、一方上告人は、株式会社研青社に対する貸金債権の執行を保全するため、大阪地方裁判所の仮差押決定をえ、その執行として右仮登記後附記登記前である同年八月二日右不動産につき仮差押の登記をしたことをそれぞれ確定したものであつて、右事実によれば、前記仮登記によつて保全された本件不動産の売買予約上の権利を譲り受け、売買予約完結の意思表示をして所有権移転の本登記を了した被上告人は、その登記事項をもつて、右仮登記後同一不動産について仮差押登記を経由した上告人に対抗しうるものというべく、右と同趣旨の下に、本件不動産に対し上告人のなした仮差押の執行の排除を求める被上告人の請求を認容した原判決は正当であり、これと異る所論は採るをえない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

・Aの予約完結権が仮登記によって保全されている場合において、Aの予約完結の意思表示をする前に、Bが甲不動産をDに譲渡したときは、AはBに対して予約完結の意思表示をすべきである!!!
=予約完結の意思表示は当初の予約義務者に対してすべきである!!!!!!

・買戻しについて期間を定めたときは、その後に伸長することはできない!
+(買戻しの期間)
第580条
1項 買戻しの期間は、十年を超えることができない。特約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は、十年とする。
2項 買戻しについて期間を定めたときは、その後にこれを伸長することができない
3項 買戻しについて期間を定めなかったときは、五年以内に買戻しをしなければならない。

・買い戻し特約付不動産売買において、売主は、買主が支払った代金及び契約の費用を償還して、売買の解除をすることができる。代金の利息を償還する必要はない!
+(買戻しの特約)
第579条
不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす

・買戻特約付不動産売買の買主が目的不動産を第三者に譲渡し、所有権移転登記を具備した場合、当初の売買契約の売主が買戻権の行使をすべき相手方は、当該譲受人である!!!!!=転得者に対してなすべき。
+判例(S36.5.30)
上告代理人仙波種春の上告理由について。
買戻約款付売買契約により不動産を買受けた者が約款所定の買戻期間中に更にその不動産を第三者に売渡し且つ右売買に因る所有権移転に付更に登記を経由した場合は、その不動産の売主が買戻権を行使するには、右転得者に対してこれを為すべきものであつて、この趣旨の大審院判例(大審院明治三八年(オ)第二三号、明治三九年七月四日第二民事部判決)を変更する必要がないから、これと同趣旨に出でた原判決に所論の違法はなく、論旨は採用できない。

・再売買の予約完結権の消滅時効は、原則として、その権利が成立したときから進行する!!!!
+判例(S33.11.6)
同第二点について。
原判決が「本件は、単純な再売買一方の予約ではなくして、債務が弁済された場合に売渡担保物の所有権を債権者から債務者に復帰させる方法として再売買の予約の形式が踏まれたものであることは、原判決(第一審判決)の説示のとおりであるから、本件貸金債務の弁済期限が到来する迄は、右債務を弁済して予約完結権を行使し得べく、したがつて弁済期が延長せられれば予約完結権の行使の期間も延長せられ、債務の履行期限と予約完結権行使の期間とを一致させる約旨のものであつたといわなければならない。」と判示して控訴人らの時効の抗弁を排斥したことは、所論のとおりである。
しかし消滅時効は、権利を行使し得るときより進行するものであつて、その権利の行使につき特に始期を定め、又は、停止条件を附したものでない限りは、その権利成立の時より行使し得べきものであるから、消滅時効もまたその時より進行するものと解するを相当とする。しかるに、原判決の前記判示は、当事者が同判示の予約完結権の行使につき特に始期を定め又は停止条件を附した約束をした趣旨の判示とは解することができない。されば、原判示の予約完結権は、その予約完結権成立の時より行使し得べき筋合であるから、原判決の理由だけでたやすく控訴人らの時効の抗弁を排斥したのは失当であるといわなければならない。従つて、論旨は、結局その理由があつて、原判決は、破棄を免れない。そして、被上告人は原審で時効中断等。の主張をしているのであるから、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。


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