民事訴訟法 基礎演習 補助参加人の権限と判決効・訴訟告知の効力


1.補助参加人の訴訟上の地位
補助参加人は、自分の利益を守るために参加が認められているので、当事者に意思に反してでも自分の名と計算において訴訟に関与する地位を有する(補助参加人の独立的性格)

+(補助参加人の訴訟行為)
第45条
1項 補助参加人は、訴訟について、攻撃又は防御の方法の提出、異議の申立て、上訴の提起、再審の訴えの提起その他一切の訴訟行為をすることができるただし、補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができないものは、この限りでない
2項 補助参加人の訴訟行為は、被参加人の訴訟行為と抵触するときは、その効力を有しない
3項 補助参加人は、補助参加について異議があった場合においても、補助参加を許さない裁判が確定するまでの間は、訴訟行為をすることができる。
4項 補助参加人の訴訟行為は、補助参加を許さない裁判が確定した場合においても、当事者が援用したときは、その効力を有する。

・従来の通説は参加人は、参加の時点で被参加人が既にできない訴訟行為や、被参加人の行為と抵触する行為のほか、訴訟自体を処分・変更する行為や、被参加人に不利な行為(裁判上の自白等)も行うことはできない。

・参加人に独自の上訴期間が認められるか?

+判例(S37.1.19)
理由
上告人補助参加人代理人仁藤一、同菅生浩三の上告理由について。
補助参加人は、独立して上訴の提起その他一切の訴訟行為をなしうるが、補助参加の性質上、当該訴訟状態に照らし被参加人のなしえないような行為はもはやできないものであるから、被参加人(被告・控訴人・上告人)のために定められた控訴申立期間内に限つて控訴の申立をなしうるものと解するを相当とする(最高裁昭和二四年(オ)第三二一号同二五年九月八日第二小法廷判決、民集四巻三五九頁参照)。所論は、これと異る見解を前提とするものであつて、採用できない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九四条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

2.補助参加の効果

・+(補助参加人に対する裁判の効力)
第46条
補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。
一 前条第1項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき。
二 前条第2項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき。
三 被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき。
四 被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき。

←関連紛争の統一的解決を図ろうとする趣旨

・参加的効力
=敗訴責任の負担
被参加人敗訴の場合のみ、被参加人と参加人との間に限って生じる!

+判例(S45.10.22)
理由
上告代理人土田吉清の上告理由一ないし四、八および九について。
まず、民訴法七〇条の定める判決の補助参加人に対する効力の性質およびその効力の及ぶ客観的範囲について考えるに、この効力は、いわゆる既判力ではなく、それとは異なる特殊な効力、すなわち、判決の確定後補助参加人が被参加人に対してその判決が不当であると主張することを禁ずる効力であつて、判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でなされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものと解するのが相当である。けだし、補助参加の制度は、他人間に係属する訴訟の結果について利害関係を有する第三者、すなわち、補助参加人が、その訴訟の当事者の一方、すなわち、被参加人を勝訴させることにより自己の利益を守るため、被参加人に協力して訴訟を追行することを認めた制度であるから、補助参加人が被参加人の訴訟の追行に現実に協力し、または、これに協力しえたにもかかわらず、被参加人が敗訴の確定判決を受けるに至つたときには、その敗訴の責任はあらゆる点で補助参加人にも分担させるのが衡平にかなうというべきであるし、また、民訴法七〇条が判決の補助参加人に対する効力につき種々の制約を付しており、同法七八条が単に訴訟告知を受けたにすぎない者についても右と同一の効力の発生を認めていることからすれば、民訴法七〇条は補助参加人につき既判力とは異なる特殊な効力の生じることを定めたものと解するのが合理的であるからである。
そこで、本件についてみるに、原審が適法に確定したところによれば、訴外兵庫建設株式会社(旧商号兵庫県住宅建設株式会社)が、本件建物は同会社の所有であると主張して、被上告人株式会社テレビ西日本(以下被上告会社という。)に対し、その建物の一部である本件貸室の明渡などを請求した別件訴訟(大阪地裁昭和三四年(ワ)第五八三号、大阪高裁昭和三八年(ネ)第五三二号、同第六七七号、最高裁昭和三九年(オ)第一二〇九号)において、上告人は、その訴訟が第一審に係属中に、被上告会社側に補助参加し、以来終始、本件建物の所有権は、上告人が被上告会社に本件貸室を賃貸した昭和三三年五月三一日当時から、訴外兵庫建設株式会社にではなく、上告人に属していたと主張して、右請求を争う被上告会社の訴訟の追行に協力したが、それにもかかわらず、被上告会社は、その訴訟の結果、本件建物の所有権は、右賃貸当時から、訴外兵庫建設株式会社に属し、上告人には属していなかつたとの理由のもとに、全部敗訴の確定判決を受けるに至つたというのである。
してみれば、右別件訴訟の確定判決の効力は、その訴訟の被参加人たる被上告会社と補助参加人たる上告人との間においては、その判決の理由中でなされた判断である本件建物の所有権が右賃貸当時上告人には属していなかつたとの判断にも及ぶものというべきであり、したがつて、上告人は、右判決の効力により、本訴においても、被上告会社に対し、本件建物の所有権が右賃貸当時上告人に属していたと主張することは許されないものと解すべきである。
以上と同旨に出た原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。なお、民訴法七〇条所定の判決の補助参加人に対する効力に関する所論引用の大審院判例(昭和一四年(オ)第一二〇五号・同一五年七月二六日判決・民集一九巻一三九五頁)は、前記判示の限度において、変更すべきものである。したがつて、論旨は、ひつきよう、独自の見解に立つて原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。
同五ないし七について。
原判決に所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよう、上告人が原審において主張しなかつた事項について原判決を非難し、または、独自の見解に立つて原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 岩田誠 裁判官 大隅健一郎 裁判官 藤林益三)

・衡平の理由に基づくことから、職権調査事項ではなく、当事者の援用があった場合にのみ考慮される!!

・+判例(H14.1.22)

理由
上告代理人洪性模、同許功、同安由美の上告理由について
1 本件訴訟は、被上告人が上告人に対し、家具等の商品(以下「本件商品」という。)の売買代金の支払を求めるものである。原審の確定した事実関係の概要等は、次のとおりである。
(1) 上告人は、カラオケボックス(以下「本件店舗」という。)建築のため、平成六年一〇月、白柳美佐男との間で店舗新築工事請負契約を締結した。
(2) 被上告人は、白柳に対し、本件商品を含む家具等の商品を販売したとして、平成七年九月一八日、和歌山地方裁判所にその残代金の支払を求める訴えを提起した(同裁判所平成七年(ワ)第四六六号。以下、同訴訟を「前訴」という。)。
前訴において、白柳は、被上告人が本件店舗に納入した本件商品を含む商品について、施主である上告人が被上告人から買い受けたものであると主張したことから、被上告人は、上告人に対し、平成八年一月二七日送達の訴訟告知書により訴訟告知をした。しかし、上告人は、前訴に補助参加しなかった
(3) 前訴につき、本件商品に係る代金請求部分について、被上告人の請求を棄却する旨の判決が言い渡され確定したが、その理由中に、本件商品は上告人が買い受けたことが認められる旨の記載がある

2 以上の事実関係の下において、原審は、旧民訴法七八条、七〇条所定の訴訟告知による判決の効力が被告知人である上告人に及ぶことになり、上告人は、本訴において、被上告人に対し、前訴の判決の理由中の判断と異なり、本件商品を買い受けていないと主張することは許されないとして、被上告人の請求を認容した。

3 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
(1) 旧民訴法七八条、七〇条の規定により裁判が訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対しても効力を有するのは、訴訟告知を受けた者が同法六四条にいう訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られるところ、ここにいう法律上の利害関係を有するとは、当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される(最高裁平成一二年(許)第一七号同一三年一月三〇日第一小法廷決定・民集五五巻一号三〇頁参照)。
また、旧民訴法七〇条所定の効力は、判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものであるが(最高裁昭和四五年(オ)第一六六号同年一〇月二二日第一小法廷判決・民集二四巻一一号一五八三頁参照)、この判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは、判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって、これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではないと解される。けだし、ここでいう判決の理由とは、判決の主文に掲げる結論を導き出した判断過程を明らかにする部分をいい、これは主要事実に係る認定と法律判断などをもって必要にして十分なものと解されるからである。そして、その他、旧民訴法七〇条所定の効力が、判決の結論に影響のない傍論において示された事実の認定や法律判断に及ぶものと解すべき理由はない
(2) これを本件についてみるに、前訴における被上告人の白柳に対する本件商品売買代金請求訴訟の結果によって、上告人の被上告人に対する本件商品の売買代金支払義務の有無が決せられる関係にあるものではなく、前訴の判決は上告人の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすものではないから、上告人は、前訴の訴訟の結果につき法律上の利害関係を有していたとはいえない。したがって、上告人が前訴の訴訟告知を受けたからといって上告人に前訴の判決の効力が及ぶものではない。しかも、前訴の判決理由中、白柳が本件商品を買い受けたものとは認められない旨の記載は主要事実に係る認定に当たるが、上告人が本件商品を買い受けたことが認められる旨の記載は、前訴判決の主文を導き出すために必要な判断ではない傍論において示された事実の認定にすぎないものであるから、同記載をもって、本訴において、上告人は、被上告人に対し、本件商品の買主が上告人ではないと主張することが許されないと解すべき理由もない
4 以上によれば、前訴の判決の理由中に本件商品は上告人が被上告人から買い受けたことが認められる旨の記載があるからといって、前訴の判決の効力が上告人に及び、上告人が本件商品の買主であるとして売買代金の支払を認めるべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、上告人の本件商品の売買代金支払債務の有無について更に審理を遂げさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 千種秀夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田昌道)

++解説
《解  説》
一 本件は、家具販売等を業とする会社である原告が、被告が施主となって建築されたカラオケボックスに納入したテーブル等(本件商品)の売買代金一〇〇万円余りの支払を求めた代金請求の事案である(なお、本件は旧民訴法適用の事案である。)。
原告は、本件訴訟に先立ち、同カラオケボックスの建築業者に対し、同建築業者からの注文によりカラオケボックスに本件商品を含む家具等を納入したとして、商品残代金五五〇万円余りの支払を求める別件訴訟を提起したところ、同建築業者は、この納入商品の一部について、注文者は自分ではなく、施主である被告が直接注文したものであるとして争ったため、原告は、被告に対し、訴訟告知をしたが、被告は補助参加しなかった。別件訴訟は、本件商品に係る代金請求部分については請求が棄却されて確定したが、その判決の理由中において、本件商品は別件訴訟の被告である建築業者が購入したものではなく、本件訴訟の被告が購入したものであるとの認定がされた。
二 本件訴訟において、原審は、参加的効力が判決理由中の事実認定や法律判断等にも及ぶ旨を述べる最一小判昭45・10・22民集二四巻一一号一五八三頁、本誌二五五号一五三頁を引用し、訴訟告知による参加的効力(旧民訴法七八条、七〇条)により、被告は、別件訴訟判決の理由中の判断である本件商品の買主が被告であるとの判断と異なる主張をすることは許されないとして、本件商品の買主が被告であるか否かという点について認定をすることなく、原告の本件商品代金請求を認容すべきとした。
これに対し、本判決は、本件訴訟の被告には別件訴訟の参加的効力が及ばないこと、しかも、参加的効力は、傍論において示された判断には及ばないことを述べて、原判決を破棄すべきものとした。なお、本件の判示部分は、このうち、後者の参加的効力の客観的範囲について述べた部分である。
三 訴訟告知による参加的効力は参加利益ある者にのみ生ずると解されるが、その補助参加の利益は、訴訟の結果について「利害関係」を有する場合に認められる(民訴法四二条、旧六四条)。この「利害関係」は、事実上の利害関係では足りず、法律上の利害関係であることを要するとする点では、判例・学説上ほぼ一致しており、最近では、取締役に対し提起された株主代表訴訟において株式会社が取締役を補助するため訴訟に参加することの許否について判断した最一小決平13・1・30民集五五巻一号三〇頁、本誌一〇五四号一〇六頁がその旨を述べている。また、同最高裁決定は、法律上の利害関係を有する場合とは、当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解されるとしている。本件では、別件訴訟において、原告の建築業者に対する本件商品の売買代金請求が認められないということが決まるだけでは、被告に何ら事実上の影響をも与えるものではなく、被告が法律上の利害関係を有するものとはいえないものといえ、被告には参加的効力が及ぶものではないことになろう。
なお、補助参加の利益が認められる場合の「訴訟の結果」については、終局判決の主文で判断される訴訟物たる権利関係の存否を指すとする訴訟物限定説と、これに限らず、判決理由中の判断も含まれるとする訴訟物非限定説との争いがあるところであるが、本件判決は、訴訟物限定説によった場合は勿論、訴訟物非限定説によっても説明できるものと解され、いずれにしても、本判決は、この点について、いずれの見解に立つものかは明らかにしていないものと思われる。
四 また、前述の昭和四五年最高裁判決は、参加的効力は、判決理由中の事実認定や法律判断にも及ぶ旨を述べるところであるが、この判決の理由とは、判決書の必要的記載事項として挙げられている「理由」(民訴法二五三条一項三号、旧一九一条一項三号)をいうものと解され、これは、主文に掲げる結論を導き出した判断過程をいうものであるから、主文を導き出すために判断を要する攻撃防御方法についての事実認定と法律判断等をもって必要にして十分ということになる。そうであるから、事実認定や判断についての説得力を増すため、あるいは当事者の納得を得るために、判断を要する攻撃防御方法以外の関連事項について示された判断、いわゆる傍論について参加的効力が及ぶものではないといえる。このことは、傍論を説示するか、傍論としていかなる事項を取り上げるのかも判決裁判所の一存に係っていることを考えると、傍論に参加的効力を肯定することは、被告知者の地位を著しく不安定にすることになるもので妥当でないことからも肯定できるものといえる。
なお、学説においては、参加的効力が及ぶのは、前訴における主要事実の存否の判断についてであるとする見解(兼子一ほか編・判例民事法(上)〔増補〕三〇五頁、上原敏夫・注釈民事訴訟法(2)二九七頁等)と、必ずしも主要事実の判断には限らないとすると思われる見解(井上治典・多数当事者訴訟の法理三八一頁等)とがある。
五 本件の判示部分は、旧民訴法についていうものであるが、現行民訴法四六条の参加的効力についても同様にいえるものと解され、参加的効力の客観的範囲についていう前述の昭和四五年最高裁判決の内容を更に明確にし、学説においても見解が分かれていた点について最高裁としての判断を示したものであって、今後の実務の参考になるものと思われる。

3.訴訟告知とその効力

・+(訴訟告知)
第53条
1項 当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができる。
2項 訴訟告知を受けた者は、更に訴訟告知をすることができる。
3項 訴訟告知は、その理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出してしなければならない。
4項 訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、第46条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす

・被告知者が告知者の相手側に参加した場合にも、告知者との後訴で参加的効力を生ずるかが問題となる。

+判例(仙台高判S55.1.28)
事実
控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人は控訴人Aに対し金二〇五万三三三三円、その余の控訴人らに対し各金六八万四四四四円及び右各金員に対する昭和四六年一〇月二二日以降完済まで年五分の割合による金員の支払いをせよ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。
当事者双方の主張及び証拠の関係は、左記のほか原判決事実摘示のとおりである(ただし、原判決七枚目表一一行目の「否認する」を「知らない」と改める。)から、これを引用する。
(控訴人らの陳述)
民事訴訟法第七八条、第七〇条によれば、訴訟告知者とその相手方との間の訴訟の確定判決の判決理由中に示された事実の認定及び先決的権利関係の存否に関する判断は、訴訟告知の当事者を拘束し、訴訟告知者と被告知者との間にその後提起された訴訟において、被告知者が前訴判決の示した判断と異なる事実又は法律関係を主張することは許されない(最高裁判所第一小法廷昭和四五年一〇月二二日判決・民集二四巻一一号一五八三頁参照)。
原判決は、訴訟告知者と被告知者との利害が一致する事項についてのみ右の効力が生じる旨判示するが、右の効力をそのように狭く解すべき根拠はない。
本件において、前訴確定判決は、被控訴人がHの代理人として訴外Iに対し本件係争地を売渡した事実を認定するとともに、被控訴人が本件土地の売却につきHから代理権を与えられた事実を認定しえないと判断したのであるから、被控訴人は本訴において右の認定判断と異なる事実を主張することは許されないのである。
(被控訴人の陳述)
訴訟告知の効力の客観的範囲に関する原判決の理論は正当であつて、この点に関する控訴人らの主張は失当である。
かりに控訴人らの主張するとおり、被控訴人の代理行為につき表見代理の効果を認めた前訴判決の認定判断が本訴において被控訴人を拘束するとしても、前訴判決は被控訴人の無権代理及び故意、過失につきなんら判断をしていないから、被控訴人の代理行為が控訴人に対する不法行為に当たると即断することはできない。
(証拠関係)(省略)
理由
一 控訴人AがHの妻であること及びHが昭和四一年一月七日死亡したことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一号証の一、二によれば、その余の控訴人らはいずれもHと控訴人Aとの間の子であることを認めることができる。右の諸事実及び弁論の全趣旨によれば、控訴人らはHの遺産を法定相続分すなわち控訴人Aは三分の一、その余の控訴人らは各九分の一の割合により共同相続したものということができる。
二 成立に争いのない甲第二号証の一、二及び甲第三号証によれば、Hはもと福島市a町b番畑c反四歩を所有していたが、右土地は昭和三七年二月二四日同所b番c畑五畝四歩(本件係争地)及び同所同番d畑五畝歩に分筆登記され、本件係争地は昭和三九年五月七日同所同番c宅地一五四坪四合と変更登記され、更にその後地積の表示が五一〇・四一平方メートルと改められたこと、後記前訴判決において本件係爭地は右同所同番c宅地五一〇・四一平方メートル(一五四坪四〇)と表示されでいること並びに本件係争地につき昭和三七年一二月二七日Iのため、同三九年九月一〇日Jのため、順次所有権移転登記手続がなされた事実を認めることができる(右各事実のうち、本件係争地につきHからIに、同人からJに、順次所有権移転登記が存する事実は、当事者間に争いがない。)。
三 控訴人らは、被控訴人がHから代理権を与えられたことがないにもかかわらず同人の代理人として右Iに対し昭和三七年一一月二六日本件係争地を売渡し、同人に対し右所有権移転登記手続をした旨及び被控訴人は福島地方裁判所昭和四四年(ワ)第二九八号土地所有権確認等請求事件(前訴)における訴訟告知の効果により本訴において右無権代理行為と異なる事実を主張しえない旨主張するのに対し、被控訴人は右各主張を争い、本件係争地は被控訴人がHから買受けてIに転売し、登記手続は被控訴人を中間省略したものである旨及び仮定的に被控訴人はHから本件係争地の売却につき代理権を与えられ右代理権に基づきIに売渡したものである旨主張する。そこで、前訴の訴訟告知の効果につき判断する。

1 先ず、次の諸事実は当事者間に争いがない。
(一) 前訴の原告は控訴人ら、被告は前記Jであつで、控訴人らは、本件係争地はHの所有であつたが、同人の死亡に因りその共同相続人である控訴人らが法定の相続分に従つて本件係争地を共有するに至つたと主張し、Jに対し本件係争地の共有持分権の確認を求めるとともに、真正な登記名義の回復のための共有持分移転登記手続を請求した。
(二) Jは、右に対する抗弁として、本件係争地はHからIに売渡されたことによりHはその所有権を失つた旨及び右売買についてはHが被控訴人に代理権を与え、被控訴人がHの代理人としてIに売渡したのであるが、かりに被控訴人が右代理権を与えられでいなかつたとしても、民法一一〇条の表見代理が成立する旨を主張した。
(三) 控訴人らは前訴の係属中被控訴人を被告知者とする訴訟告知をなし、その訴訟告知書は昭和四四年一一月一五日被控訴人に送達されたところ、被控訴人は同年同月二六日Jを被参加人とする補助参加をした。
(四) 前訴裁判所は右表見代理の仮定抗弁を容れ、昭和四六年七月一六日控訴人ら敗訴の判決を言渡し、右判決は確定した。

2 成立に争いのない甲第三号証によれば、前訴判決は、「Hは昭和三五年ころ以降しばしば被控訴人に対し所有土地の売却方を委任したが、本件係争地については、いずれ被控訴人に処分方を委せることと予定されてはいたものの、明確には定められていなかつたにもかかわらず、被控訴人は昭和三七年一二月二七日ころHから売却方を委任されていた他の土地と共に本件係争地をも一括してIに売渡し、右他の土地の売却等のため控訴人Aから預かつていたHの実印を売買契約書に押印した。」旨の事実を認定したうえ、「Hにおいて被控訴人に本件係争地の売却についての代理権を授与しでいたとまで認定することは困難である」が、前訴被告Jの表見代理の主張は理由がある旨判示していることを認めることができる。

3 右1、2の諸事実によれば、第一に、前訴係属時において、かりに控訴人らが勝訴すれば、JはIに対し支払代金額相当の不当利得の返還を、同人は被控訴人に対し民法一一七条による損害賠償又は不当利得の返還を、順次請求する法律関係が生じ、また、かりにJが勝訴すれば被控訴人は控訴人らから不法行為に因る損害賠償を請求される法律関係が生ずることが当然予想されえたものというべく、したがつて、被控訴人は前訴の当事者双方との間において民事訴訟法六四条所定の「訴訟ノ結果ニ付利害関係ヲ有スル第三者」に該当したものということができ、第二に、したがつて、控訴人らは前訴係属時において同法七六条所定の訴訟告知をなしうる当事者に該当したものということができ、第三に、前訴における控訴人らの訴訟告知に対し、被控訴人は控訴人らのための補助参加をしなかつたのであるから、同法七八条により、被控訴人は前訴の係属中に控訴人らのため補助参加をしたものとみなされ、第四に、その結果同法七〇条により前訴の裁判は被控訴人に対してもその効力を有するものであるところ、同条にいう裁判とは、判決の主文のみならず、判決理由中に示された認定、判断をも含むものと解すべきである。したがつて、前記前訴判決主文の効力すなわち控訴人らが本件係争地につき共有持分権を有しないこと及びJに対し共有持分移転登記請求権を有しないことについてはもとより、前記前訴判決理由中に示された「Hの被控訴人に対する本件係争地の売却方委任については、予定されてはいたが明確には定められていなかつた」旨及び「Hにおいて被控訴人に本件係争地の売却についての代理権を授与していたとまで認定することは困難である」旨の認定判断は、本訴において被控訴人を拘束し、被控訴人は右と異なる事実を主張することができないものといわなければならない。

4 被控訴人は、訴訟告知の効力の客観的範囲に関する原判決の理論は正当であると主張し、これを援用するので、原判決の理由説示につき検討する。
(一) 原判決は、次のとおり説く。
「訴訟告知の効果は、被告知者において告知者に補助参加する利益を有する場合に、民事訴訟法七〇条に規定する参加的効力を受けることにほかならない。ところで、参加的効力は、補助参加人が被参加人を勝訴させることによつて自己自身の利益を守る立場にあることを前提として、被参加人敗訴の場合に、その責任を分担させようとするものであるから、訴訟告知の場合に被告知者が参加的効力を受けるのは、被告知者において告知者と協同して相手方に対し攻撃防禦を尽くすことにつき利害が一致し、そうすることを期待できる立場にあることが前提となるものというべく、そのような場合に、右のように告知者と利害が一致し協同しうる争点に限つて、訴訟告知の効果が被告知者に及ぶものと解すべきである。」
(二) しかし訴訟告知の制度は、「被告知者において告知者に補助参加する利益を有する場合」のために設けられたものと解すべきではない。訴訟告知の制度は、告知者が被告知者に訴訟参加をする機会を与えることにより、被告知者との間に告知の効果(民事訴訟法七八条)を取得することを目的とする制度であり、告知者に対し、同人が係属中の訴訟において敗訴した場合には、後日被告知者との間に提起される訴訟において同一争点につき別異の認定判断がなされないことを保障するものである。したがつて、同法七六条にいう「参加をなしうる第三者」に該当する者であるか否かは、当該第三者の利益を基準として判定されるべきではなく、告知者の主観的利益を基準として判定されるべきである。
(三) 次に原判決は、参加的効力を規定する同法七八条は「補助参加人が被参加人を勝訴させることによつて自己自身の利益を守る立場にあることを前提」とすると説く右の説示は訴訟告知に基づかず、単純に同法六四条により補助参加をした者と被参加人との間については妥当であろうが、訴訟告知者と被告知者との間については必らずしも妥当しない。けだし、前述のとおり、被告知者が参加をなしうる第三者であることは告知者がその主観において決定するものであり、右の主観が客観的に理由あるものであれば、当該訴訟告知は有効であつて、被告知者の主観上告知者のために参加すべき場合であることを要しないからである。
(四) したがつて、「被告知者において告知者と協同して相手方に対し攻撃防禦を尽くすことにつき利害が一致し、そうすることを期待できる立場にある」場合にのみ被告知者に対して参加的効力が及ぶとする原判決の理論は、採用することができない。旧民事訴訟法五九条一項は「原告若クハ被告若シ敗訴スルトキハ第三者ニ対シ担保又ハ賠償ノ請求ヲナシ得ヘシト信シ又ハ第三者ヨリ請求ヲ受ク可キコトヲ恐ルル場合ニ於テハ」告知をなしうる旨を規定していたが、現行法はその適用範囲を広げるべく改正されたものと解されているところ、右旧規定においてさえ、被告知者は告知者の主観的利害を基準として定められるべきものとされでいることが明らかである。
(五) もとより、係属中の訴訟における争点であつても、被告知者が当該訴訟に参加してその主張、立証をすることができない法律関係又は事実については、かかる事項についての判決理由中の認定判断の効力を被告知者に及ぼすことは衡平に反するものといわなければならない。しかし、被告知者は必ず告知者のために参加すべき法律上の義務を負うものではなく、被告知者の主観による利害が告知者の主観による利害と反するときは、敢て告知者の相手方たる当事者のために補助参加し、又は民事訴訟法七一条、七三条もしくは七五条による参加をすることによつて、自己に有利な主張、立証を尽くすことができるのである。したがつて、被告知者は、かような参加が可能であるにもかかわらず参加を怠つた場合には、訴訟告知により参加の機会を与えられながらその権利を行使しないことによる不利益を受けでも衡平に反するとは言えないものといわなければならない。
(六) これを本件についてみるに、本件前訴において、控訴人らは本件係争地につき共同相続に因る共有持分権を有すると主張し、前訴被告Jに対し右持分権の確認及び真正な登記名義の回復のための共有持分移転登記手続を請求したのに対し、前訴被告は、控訴人らの被相続人であるHがIに対し本件係争地を売渡して所有権移転登記手続をした旨及び右売買については被控訴人がHから代理権を与えられその代理人として契約をしたものである旨を主張したので、控訴人らは右各主張事実を否認したうえ、被控訴人を被告知者として訴訟告知をしたのであつて、右の諸事実によれば、前訴係属中控訴人らの主観においては被控訴人は右代理権を有せず、かつ右代理行為は存しなかつたものというべきである。したがつて、控訴人らは、一方において被控訴人に対し右代理権及び代理行為の各不存在の立証(反証)を求めるために補助参加を求める利益を有し、他方において、仮に被控訴人が右代理権を有し、かつ右代理行為をしたことを理由として敗訴するときは、場合により被控訴人に対しその受領した代金の支払を求め、或いは受領すべかりし代金額相当の損害賠償を請求することができ、また、仮に右代理権は存在しないが代理行為は存在し、かつ表見代理が成立するとの理由で敗訴するときは、被控訴人に対し不法な無権代理行為に因る損害賠償を請求しうる立場にあつたものということができるから、控訴人らは、敗訴のときをおもんばかり、右代理権及び代理行為の各存否につき、被控訴人に対し参加的効力を及ぼすために本件訴訟告知をする利益を有したものというべく、右の判断は、控訴人らの主観においてのみならず、客観的にも正当である。
更に、被告知者たる被控訴人は、その主観において前記代理権が存在しないと信ずるときは控訴人らのために補助参加することにより、また、これが存在すると信ずるときは前訴被告のため補助参加することによつて、その主張立証を尽くすことができる地位にあつたものというべきであり、また、被控訴人がその主観において前記代理行為が存しなかつたと信ずるときは控訴人らのため、これが存したと信ずるときは前訴被告のため、それぞれ補助参加をして主張立証を尽くしうる立場にあつたものというべきであつて、被控訴人がこれらの補助参加をすることを阻害した事実の存在については、主張も立証もないのみならず、現に、被控訴人はその主観に従い前訴被告のために補助参加をしたのである。
(七) 以上説示したとおり、控訴人らは本件訴訟告知により被控訴人の代理権及び代理行為の存否につき被控訴人に参加的効力を及ぼす主観的、客観的な利益を有し、かつ、被控訴人は右の各争点につき前訴において補助参加をすることが可能であつたのであるから、右各争点に関する前訴判決理由中の認定判断は、本件訴訟において被控訴人を拘束するものといわなければならない。したがつて、被控訴人は、本訴において、代理行為の不存在(転売人である旨の主張)及び代理権の存在を主張することは許されないものというべきであり、これと異なる原判決の見解は左袒することを得ない。

5 被控訴人は、前訴判決は被控訴人の代理行為につき民法一一〇条の適用を肯定したにとどまり、被控訴人が代理権を有しなかつたことを認定したものではないと主張する。しかし、前記認定のとおり、前訴判決は「本件土地については、いずれ被控訴人に処分方をまかせることと予定されてはいたが、その点については明確には定められなかつた。」「以上認定した事実によれば、Hにおいて被控訴人に本件土地の売却についての代理権を授与していたとまで認定することは困難である」と認定判断し、被控訴人が代理権を有したとする前訴被告の主張を排斥したのであるから、民事訴訟法七八条、七〇条により、被控訴人は本訴において控訴人らに対し自己の代理権を主張しえず、したがつて被控訴人の代理行為は無権代理行為であるとの控訴人らの主張を甘受しなければならないものというべきである。

四 控訴人らは、被控訴人の前記無権代理行為はHに対する不法行為を構成する旨主張し、これに対し被控訴人は、無権代理行為即不法行為ということはできない旨主張する。
しかし、前記認定の前訴判決理由によれば、被控訴人はHから他の土地については売却の委任を受けたが本件係争地については売却方の委任を受けていなかつたにもかかわらず、これを右受任にかかる他の土地と共に一括して売却したのであるから、本件係争地の売却については、少くとも代理権を与えられたと軽信した点に過失があるといわなければならない。
成立に争いのない乙第六号証並びに原審及び当審における被控訴人本人尋問の結果中被控訴人が本件係争地の売却についても代理権を与えられたと信ずるにつき過失がなかつたことを伺わせるような記載・供述部分は、成立に争いのない甲第三三号証並びに原審及び当審における控訴人A本人尋問の結果に比して措信し難く、他に右の過失の認定を左右するに足る的確な証拠はない。
以上認定判断したところによれば、Hは被控訴人の不法行為に因り本件係争地の所有権を失い、同土地の価格相当の損害を被つたものということができる。
五 被控訴人は、本件係争地につき被控訴人とIとの間に売買契約が成立した昭和三七年二月二六日当日、Hは被控訴人の不法行為に因る損害発生の事実を知つた旨主張し、同日から三年の経過によりHの損害賠償請求権につき消滅時効が完成したと主張する。
しかし、成立に争いのない乙第五号証、原審証人Iの証言並びに、原、当審における被控訴人本人尋問の結果中、本件係争地及びその隣地である前掲b番dの土地の売買交渉時及び農地法五条の規定による許可申請に対する係官の現地見分に際し、Hが本件係争地についても境界を指示し、或いはIから境界の変更について相談を受けた旨の記載及び供述部分は、いずれも前記前訴判決の認定事実と対比して措信し難く、他に右主張事実を認めるに足る証拠はない。したがつて、右時効の抗弁は採用することができない。
六 そこで進んでHの被つた本件係争地の価格相当の損害額につき判断する。
控訴人らは、本件訴訟を提起した昭和四六年一〇月当時における本件係争地の時価は金六一六万円であり、控訴人らは右金額相当の損害を被つた旨主張する。
前掲乙第六号証によれば、被控訴人は前記本件不法行為当時福島市において不動産取引業を営んでいた事実を認めることができ、右の事実によれば、被控訴人は本件不法行為時において将来本件係争地の価格が上昇することを予見しえたものということができる。しかし、被控訴人の本件不法行為に因る被害者はHであることは前記認定のとおりであり、控訴人らはHの取得した被控訴人に対する損害賠償請求権を相続に因り承継したのであるから、たとえHの死亡後も本件係争地の価格が上昇を続けたとしても、Hの損害額はその死亡時における価格相当額であると言わざるをえない。
そこで、Hの死亡した昭和四一年一月七日当時における本件係争地の価格につき検討する。前掲甲第三号証によれば、前訴判決はその理由において、Hは昭和三七年二月二〇日ごろ被控訴人に依頼して福島市a町b番畑三〇四坪を本件係争地及び同所同番d畑一五〇坪に分筆したうえ、同土地を代金四五万円で売却した事実を認定したことを認めうるので、右認定事実は本件訴訟において控訴人らを拘束するものというべきである。よつて、右認定事実を基礎として本件係争地の昭和四一年一月七日当時の価格を検討する。
成立に争いのない甲第二号証の一、二、同第二四号証、同第二八号証、乙第三号証に当審における鑑定の結果の一部を総合すると、
1 前記分筆前のb番の土地はほゞ南北に長い長方形の土地で、短辺である北辺のみが道路と接していたこと、
2 右土地から本件係争地が分筆された結果、本件係争地は右土地の南側部分であるため、いわゆる盲地となつたこと、
3 盲地である本件係争地の価格を評価する方法としては、分筆前の一筆の土地の価格から前記b番dの土地の価格を差引いた価格の七五%と算定するのが適当であるところ、分筆前の一筆の土地全体の価格は、その形状上利用効率が悪いため、その単位面積当たり価格は前記b番dの土地のそれに比して九%低落すること、
4 前記b番dの土地の実測面積は四九六・九五平方メートル(一五〇坪三合三勺)、本件係争地の実測面積は五一〇・四一平方メートルであること、
5 Hが前記b番dの土地を売却した当時の本件係争地の価格を前記3の方式で算出すると、
{(四五万円÷四九六・九五)×(四九六・九五+五一〇・四一)×〇・九一-四五万円}×〇・七五=二八万五〇六八円
となること
6 Hが前記b番dの土地を売却した時から被控訴人の不法行為時を経て昭和三七年一二月末までの間に本件係争地の価格が上昇した事実を認めるに足る証拠はないが、本件係争地の価格は、右時点を一〇〇とすれば昭和四〇年一二月末は一四〇であつた。したがつて、昭和四〇年一二月末における本件係争地の価格は
二八万五〇六八円×一・四=三九万九〇九五円
となること、
以上のとおり認めることができる。したがつて、Hの死亡時における本件係争地の価格も右と同一の三九万九〇〇〇円(一〇〇円未満切捨)であつたと認めることができる。
もつとも、前掲甲第二八号証によれば、Iは昭和三九年に至り前記b番dの土地を更に同番のd、eに分筆したこと及び新b番dの土地は分筆前のb番dの土地の西側及び南側を』形に分割したものである事実を認めることができ、右の事実によれば、新b番dの土地は本件係争地から道路に通ずるための私道敷として分筆されたものと推定することができ、したがつて、Hの死亡時における本件係争地の客観的価格は前記認定価格よりも高額であつたと認められるが、右はIが自己の費用で私道敷を設けたことによるのであるから、かかる措置をとることなく旧b番dの土地を売却したHの損害額を算定するに当たつては、右の事実を考慮すべきではない。
当審における鑑定の結果中前記認定に副わない部分は、その基礎とする事実が前記前訴判決の認定事実と異なるので採用することができず、他に前記認定を左右するに足る的確な証拠はない。

七 被控訴人は、右Hの損害の発生についてはHにも過失があると主張するので、この点につき判断する。
原審証人Iの証言により成立を認めうる乙第一号証の五、成立に争いのない同号証の六、甲第三三号証に右証人Iの証言、原審及び当審における控訴人A及び被控訴人各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると、前記分筆前のb番dの土地と本件係争地のIに対する所有権移転登記手続は同時になされたが、その際Hの権利を証する証書が存在しなかつたため、Iはその弟及び母に依頼して右二筆の土地がHの所有であることを証する保証書を作成し、これを所有権移転登記申請書に添付しで登記手続をしたところ、所轄の福島地方法務局登記官吏はHに対し、右申請につき不動産登記法四四条ノ二第一項に基づき確認を求める昭和三七年一二月一二日付のはがきを郵送し、右はがきには、不動産の表示として本件係争地の表示が明記されたうえ「外土地一筆」と記載され、更に登記原因売買、登記の目的所有権移転、登記権利者Iと明記されでいたにもかかわらず、その頃右はがきの配達を受けたHからこれを示された控訴人Aは、前記分筆前のb番dの土地一筆のみにつき確認を求められたものと誤信し、Hのため保管していた同人の印章を同人を代理して右はがきの確認欄に押印して、これを福島地方法務局に返送した事実を認めることができる。
当審における控訴人A本人尋問の結果中、同控訴人が右のように誤信したのは被控訴人から右問い合わせのはがきはHが売却を依頼した旧b番の土地のうちの半分のみに関するものであると告げられていたからである旨の供述部分は、前掲甲第三三号証及び原審における被控訴人本人尋問の結果と対比して措信し難く、他に右の認定を左右するに足る証拠はない。
右の事実によれば、H又はその代理人であつた控訴人Aが登記官吏の問い合わせに対し的確な返答をしたならば、本件係争地についてIに対する所有権移転登記を阻止し、損害の発生を未然に防止することができたにもかかわらず、右両名は右問い合わせは本件係争地に関するものでないと軽信し、その所有権移転登記を許容したのであるから、前記認定の損害の発生についてはHにも過失があつたものと言わなければならない。
なお、被控訴人は、Hは本件係争地につき福島県知事に対し農地法五条に基づく許可申請をなし、また司法書士に対し登記申請用委任状を交付した点にも過失があると主張する。しかし、弁論の全趣旨により成立を認めうる乙第一号証の一、四(同号証の一のうち官署作成部分の成立は争いがない。)によれば、右許可申請書及び登記申請書は、いずれも一通の書面に本件係争地及び前記分筆前のb番dの土地の二筆の土地の表示を記載し、司法書士Lが申請代理人となつて作成されたものであることを認めることができるところ、原審における証人Kの証言並びに控訴人A及び被控訴人各本人尋問の結果によれば、右許可申請は被控訴人から依頼を受けたKがL司法書士に依頼してなされたものであり、右登記申請は被控訴人がH名義の委任状を同司法書士に交付しで依頼したものであつて、Hも控訴人Aも右各申請の委任状に自ら押印したことはなく、Hの印章を保管していた控訴人Aは被控訴人に対し前記分筆前のb番dの土地の売却手続に使用させるためHの印章を預けていたものであることを認めることができ、前掲乙第六号証並びに原審及び当審における被控訴人本人尋問の結果中右の認定に反する部分はいずれも措信し難い。乙第一号証の三のうち登記申請用委任状のうちH名下の印影が同人の印章により顕出されたものであることは当事者間に争いがないが、右認定事実によれば、右印影がHにより押印されたものと推定することはできず、却つて被控訴人によつて押印されたものと推定するに十分である。したがつて、被控訴人の前記各主張を採用することはできない。
前記認定したH及びその代理人であつた控訴人Aの過失を考慮するときは、前記Hの損害額のうち被控訴人に請求しうべき金額は金二七万円と認めるのが相当である。したがつて、Hの死亡に因る相続により、被控訴人に対し控訴人Aは金九万円、その余の控訴人らはそれぞれ金三万円及び右各金員に対するHの死亡後完済まで民法所定の年五分の利率による遅延損害金の請求権を取得したものということができる。
八 以上認定判断したところによれば、控訴人らの本訴請求中被控訴人に対し控訴人Aは金九万円、その余の控訴人らはそれぞれ金三万円及び右各金員に対する相続開始後である昭和四六年一〇月二二日以降完済まで年五分の割合による金員の各支払を求める部分は理由があるからこれを認容すべきであるが、その余の各請求は理由がないからこれを棄却すべきであつて、右と異なり控訴人らの請求を全部棄却した原判決は一部失当である。
よつて、原判決を右認定の限度で変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。
民事第2部
(裁判長裁判官 大和勇美 裁判官 桜井敏雄 裁判官 渡辺公雄)


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