制限行為能力者 取消しによる遡及効と第三者


1.被保佐人と買主との売買契約の締結により所有権はいったん買主に移転している。しかし、保佐人が当該契約の取消しを主張しているから(120条1項)、本件絵画の所有権は遡及的に被保佐人に帰属することになる(121条本文)。とすると、買主は無権利者であったことになり、買主から質権の設定を受けたものは質権を取得しえないのが原則である。
しかし、買主のもとにある物に質権の設定を受けているのだから保護されないのは不都合である。そこで、取消後の第三者が保護されるための法律構成が問題となる。

2.取り消すまでは意思表示は有効であるから、取消しにより復帰的物権変動が生じたといえる。そこで、178条の趣旨に鑑み、取消後の第三者は、引渡しを受けた場合には保護されると解する。

3.→質権の設定を受けたものが現実の引渡し(182条1項)を受けていた場合は質権を取得する。