会社法 事例で考える会社法 事例4 その行為、誰の権限、誰の負担


Ⅰ はじめに

Ⅱ 本件賃貸借契約について
1.前提となる法律関係

+第二十五条  株式会社は、次に掲げるいずれかの方法により設立することができる。
一  次節から第八節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式(株式会社の設立に際して発行する株式をいう。以下同じ。)の全部を引き受ける方法
二  次節、第三節、第三十九条及び第六節から第九節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法
2  各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。

・発起人組合

+判例(S35.12.9)
理由
上告代理人長谷川勉、同沢荘一、同音喜多賢次の上告理由第一点について。
本訴の訴旨は、発起人組合がその本来の目的に属しない石炭売買取引を行つた事実を主張し、各組合員らに対し商法五一一条一項に基き右売買代金の連帯支払を求めるにあり、商法一九四条一項に基き会社不成立の場合における発起人の責任を追及するものではない。従つて、右取引後に会社が設立されたか否かは、本訴請求の当否に何ら関係なく、この点に関する原判示にたとえ所論の違法があつても、原判決の結果に影響しない。されば、論旨は採用し難い。
同第二点について。
本訴の訴旨は、論旨第一点に関し説示したとおりであり、従つて、本論旨摘録の原判示もまた、上告人らは中外石炭株式会社設立の目的を以て発起人組合を結成したが、右組合本来の目的でない石炭売買の事業を「中外石炭株式会社」名義で営み、そのため本件売買取引を行つたものと認定した趣旨と解すべきである。
所論はすべて、これと相容れない見解に立脚するものであつて、理由がない。
同第三点について。
原判決は、本件石炭売買取引の実際にあつたのが上告人A、同B、同C、同Dの四名にすぎないことは当事者間に争いのないところであるが、右売買の法律上の効果は本件組合員たる上告人ら七名全員について生じたものと判断した趣旨と解すべきであり、右判断は正当である。何故ならば、組合契約その他により業務執行組合員が定められている場合は格別、そうでないかぎりは、対外的には組合員の過半数において組合を代理する権限を有するものと解するのが相当であるからである。されば、論旨は理由がない。
同第四点について。
所論乙第一三号証の成立は、被上告人が不知を以て争うところであり、原審はこれが真正に成立したことを認めていないのであるから、同号証につき特に判示をしなくても所論の違法はなく、論旨は理由がない。よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、九三条、八九条に従い、主文のとおり判決する。
この判決は、裁判官河村大助の反対意見があるほか全裁判官一致の意見によるものである。

+反対意見
裁判官河村大助の反対意見は次のとおりである。
本件石炭売買の衝に実際当つたのが、上告人A、同B、同C、同Dの四名にすぎないことは、当事者間に争のない事実である(原判決引用にかかる第一審判決事実摘示参照)。ところが、原判決は、上告人らは「共同して」昭和二七年一〇月二九日被上告会社から本件石炭を買受ける契約をし、同月三〇日から翌月一日までの間に右石炭一九八・五五〇トンの引渡を受けたことが認められる旨判示している。若し、右判示が、上告人ら七名共同して取引の衝に当つたと認定した趣旨ならば、当事者間に争いなき事実と異る事実を認定した違法を免れない。また、若し、右判示が、取引の衝に当つたのは前記上告人Aら四名にすぎないが、その法律上の効果は上告人ら組合員全員について生じたと判断した趣旨であるならば、このように判断すべき理由の説示を欠く点において、これまた理由不備の違法があるものといわなければならない。
元来組合の業務執行と組合代理とは区別すべきものであるが、組合契約その他により、特定の組合員に業務執行を委任した場合において、その業務が第三者と法律行為を為す必要あるものについては、別段の定めのない限り右委任に代理権授与の契約をも包含するものと解すべきである。又業務執行者の定めのない場合において組合の常務に属しない或特定の事項を特定の組合員又は第三者に委任しようとする場合は、民法六七〇条一項により組合員の過半数を以て決することを要するものと解すべきであるが、その特定事項が対外関係に属する場合は、別段の定めのない限り右委任に代理権の授与も包含するものと解するを相当とする。しかして同条の「組合員の過半数を以て決す」とは総組合員に決議に参与する機会を与え、その過半数の同意によつて業務執行の方法を決定することを要する趣旨と解すべきであつて、各組合員に対し賛否の意見を表する機会を与えることなく単に組合員の過半数の者において、業務執行を為し得ることを決めたものではない。この理は代理の場合においても同様であつて、多数者が少数者に意見を述べる機会を与えることなくして、総組合員を代理する権限を有するに由ないことも当然の帰結である。然るに多数意見が組合の過半数の者は当然に総組合員を代理して法律行為を為す権限ありと判断し、組合員七名中の四名が組合を代理して為した行為は、他の三名の者が意見表示の機会を与えられたと否とを問わず、これらの者に当然その効力が及ぶものと解せられたことには賛成できない。けだし、常務にあらざる業務につき組合員が予めその計画を知るにおいては、自己の不利益と思う債務負担行為等につき、これを阻止するための手段を講じ、場合によつては組合を脱退する機会もあるに拘らず、かかる機会を与えられることなく、一部の組合員の独断専行による代理行為により、全く関知しない組合員がその責任を負わなければならないような結果は到底認容できないからである。
そうとすれば、本件上告論旨第三点は結局理由があり、原判決はこの点において破棄を免れない。
(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

2.本件賃貸借契約の締結
(1)本件賃貸借契約の当事者

+民法
(業務の執行の方法)
第六百七十条  組合の業務の執行は、組合員の過半数で決する。
2  前項の業務の執行は、組合契約でこれを委任した者(次項において「業務執行者」という。)が数人あるときは、その過半数で決する。
3  組合の常務は、前二項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでない。

+(業務執行組合員の辞任及び解任)
第六百七十二条  組合契約で一人又は数人の組合員に業務の執行を委任したときは、その組合員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。
2  前項の組合員は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によって解任することができる。

(2)本件賃貸借契約にかかる費用負担

・発起人負担とする場合
+(組合員の損益分配の割合)
第六百七十四条  当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、その割合は、各組合員の出資の価額に応じて定める。
2  利益又は損失についてのみ分配の割合を定めたときは、その割合は、利益及び損失に共通であるものと推定する。

・会社の負担にする場合
+第二十八条  株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。
一  金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第三十二条第一項第一号において同じ。)
二  株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
三  株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
四  株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)

・設立手続きにおいて生じた費用が会社の負担として認められるのは、それが会社設立のために必要不可欠であるから。

+(定款の記載又は記録事項に関する検査役の選任)
第三十三条  発起人は、定款に第二十八条各号に掲げる事項についての記載又は記録があるときは、第三十条第一項の公証人の認証の後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。
2  前項の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければならない。
3  裁判所は、前項の検査役を選任した場合には、成立後の株式会社が当該検査役に対して支払う報酬の額を定めることができる。
4  第二項の検査役は、必要な調査を行い、当該調査の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を裁判所に提供して報告をしなければならない。
5  裁判所は、前項の報告について、その内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、第二項の検査役に対し、更に前項の報告を求めることができる。
6  第二項の検査役は、第四項の報告をしたときは、発起人に対し、同項の書面の写しを交付し、又は同項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供しなければならない。
7  裁判所は、第四項の報告を受けた場合において、第二十八条各号に掲げる事項(第二項の検査役の調査を経ていないものを除く。)を不当と認めたときは、これを変更する決定をしなければならない。
8  発起人は、前項の決定により第二十八条各号に掲げる事項の全部又は一部が変更された場合には、当該決定の確定後一週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができる。
9  前項に規定する場合には、発起人は、その全員の同意によって、第七項の決定の確定後一週間以内に限り、当該決定により変更された事項についての定めを廃止する定款の変更をすることができる。
10  前各項の規定は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項については、適用しない。
一  第二十八条第一号及び第二号の財産(以下この章において「現物出資財産等」という。)について定款に記載され、又は記録された価額の総額が五百万円を超えない場合 同条第一号及び第二号に掲げる事項
二  現物出資財産等のうち、市場価格のある有価証券(金融商品取引法 (昭和二十三年法律第二十五号)第二条第一項 に規定する有価証券をいい、同条第二項 の規定により有価証券とみなされる権利を含む。以下同じ。)について定款に記載され、又は記録された価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合 当該有価証券についての第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項
三  現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士(外国公認会計士(公認会計士法 (昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項 に規定する外国公認会計士をいう。)を含む。以下同じ。)、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価。以下この号において同じ。)を受けた場合 第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項(当該証明を受けた現物出資財産等に係るものに限る。)
11  次に掲げる者は、前項第三号に規定する証明をすることができない。
一  発起人
二  第二十八条第二号の財産の譲渡人
三  設立時取締役(第三十八条第一項に規定する設立時取締役をいう。)又は設立時監査役(同条第三項第二号に規定する設立時監査役をいう。)
四  業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者
五  弁護士法人、監査法人又は税理士法人であって、その社員の半数以上が第一号から第三号までに掲げる者のいずれかに該当するもの

・賃料滞納の場合
設立手続きが完了しても発起人に対して請求すべき・・・。

Ⅲ 本件特許権の帰属について
1.現物出資・財産引受
+33条10項

+(出資された財産等の価額が不足する場合の責任)
第五十二条  株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額(定款の変更があった場合にあっては、変更後の価額)に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。
2  前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、発起人(第二十八条第一号の財産を給付した者又は同条第二号の財産の譲渡人を除く。第二号において同じ。)及び設立時取締役は、現物出資財産等について同項の義務を負わない。
一  第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項について第三十三条第二項の検査役の調査を経た場合
二  当該発起人又は設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合
3  第一項に規定する場合には、第三十三条第十項第三号に規定する証明をした者(以下この項において「証明者」という。)は、第一項の義務を負う者と連帯して、同項の不足額を支払う義務を負う。ただし、当該証明者が当該証明をするについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。

2.事後設立

+(事業譲渡等の承認等)
第四百六十七条  株式会社は、次に掲げる行為をする場合には、当該行為がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない。
一  事業の全部の譲渡
二  事業の重要な一部の譲渡(当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないものを除く。)
二の二  その子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡(次のいずれにも該当する場合における譲渡に限る。)
イ 当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えるとき。
ロ 当該株式会社が、効力発生日において当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有しないとき。
三  他の会社(外国会社その他の法人を含む。次条において同じ。)の事業の全部の譲受け
四  事業の全部の賃貸、事業の全部の経営の委任、他人と事業上の損益の全部を共通にする契約その他これらに準ずる契約の締結、変更又は解約
五  当該株式会社(第二十五条第一項各号に掲げる方法により設立したものに限る。以下この号において同じ。)の成立後二年以内におけるその成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものの取得。ただし、イに掲げる額のロに掲げる額に対する割合が五分の一(これを下回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えない場合を除く。
イ 当該財産の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額
ロ 当該株式会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額
2  前項第三号に掲げる行為をする場合において、当該行為をする株式会社が譲り受ける資産に当該株式会社の株式が含まれるときは、取締役は、同項の株主総会において、当該株式に関する事項を説明しなければならない。

+(株主総会の決議)
第三百九条  株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2  前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
一  第百四十条第二項及び第五項の株主総会
二  第百五十六条第一項の株主総会(第百六十条第一項の特定の株主を定める場合に限る。)
三  第百七十一条第一項及び第百七十五条第一項の株主総会
四  第百八十条第二項の株主総会
五  第百九十九条第二項、第二百条第一項、第二百二条第三項第四号、第二百四条第二項及び第二百五条第二項の株主総会
六  第二百三十八条第二項、第二百三十九条第一項、第二百四十一条第三項第四号、第二百四十三条第二項及び第二百四十四条第三項の株主総会
七  第三百三十九条第一項の株主総会(第三百四十二条第三項から第五項までの規定により選任された取締役(監査等委員である取締役を除く。)を解任する場合又は監査等委員である取締役若しくは監査役を解任する場合に限る。)
八  第四百二十五条第一項の株主総会
九  第四百四十七条第一項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)
イ 定時株主総会において第四百四十七条第一項各号に掲げる事項を定めること。
ロ 第四百四十七条第一項第一号の額がイの定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。
十  第四百五十四条第四項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)
十一  第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
十二  第五編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
3  前二項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会(種類株式発行会社の株主総会を除く。)の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
一  その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会
二  第七百八十三条第一項の株主総会(合併により消滅する株式会社又は株式交換をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等(同条第三項に規定する譲渡制限株式等をいう。次号において同じ。)である場合における当該株主総会に限る。)
三  第八百四条第一項の株主総会(合併又は株式移転をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合における当該株主総会に限る。)
4  前三項の規定にかかわらず、第百九条第二項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
5  取締役会設置会社においては、株主総会は、第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第三百十六条第一項若しくは第二項に規定する者の選任又は第三百九十八条第二項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。

・この場合利益相反取引にも注意!
+(競業及び利益相反取引の制限)
第三百五十六条  取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない
一  取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二  取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき
三  株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
2  民法第百八条 の規定は、前項の承認を受けた同項第二号の取引については、適用しない。

Ⅳ 発起人取締役の責任について
1.Aに対する請求

・定款に署名を行った時点でAは「発起人」の地位に就く。
・設立手続き中に、出資の履行後取締役として選任(38条1項)
=設立時取締役の地位にも就いた。
・会社設立の登記
=取締役に。

+(設立時役員等の選任)
第三十八条  発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役(株式会社の設立に際して取締役となる者をいう。以下同じ。)を選任しなければならない。
2  設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合には、前項の規定による設立時取締役の選任は、設立時監査等委員(株式会社の設立に際して監査等委員(監査等委員会の委員をいう。以下同じ。)となる者をいう。以下同じ。)である設立時取締役とそれ以外の設立時取締役とを区別してしなければならない。
3  次の各号に掲げる場合には、発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、当該各号に定める者を選任しなければならない。
一  設立しようとする株式会社が会計参与設置会社である場合 設立時会計参与(株式会社の設立に際して会計参与となる者をいう。以下同じ。)
二  設立しようとする株式会社が監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)である場合 設立時監査役(株式会社の設立に際して監査役となる者をいう。以下同じ。)
三  設立しようとする株式会社が会計監査人設置会社である場合 設立時会計監査人(株式会社の設立に際して会計監査人となる者をいう。以下同じ。)
4  定款で設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役。以下この項において同じ。)、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人に選任されたものとみなす。

+(発起人等の損害賠償責任)
第五十三条  発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2  発起人設立時取締役又は設立時監査役がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う

・出資の履行が仮装の払込によるという主張
+判例(S38.12.6)
理由
上告代理人吉永多賀誠、同徳田敬二郎の上告理由第一点および同第二点について。
所論は、原審の確定した事実によれば、本件株式の払込は単に外形上払込の形式を整えたに過ぎず、いわゆる見せ金による払込であつて、現実に払込のなされたものでないことが明らかであるのに、右仮装の払込を以て真実の払込としてその効力を認めた原判決には、商法一七七条一項の解釈適用を誤つた違法があり、また、本件のような仮装の払込について、発起人たる被上告人らに同法一九二条所定の払込責任を負わせないためには、なんらかの事情がある筈であるのに、かかる特段の事情を判示することなく、有効な払込があつたものと認めて被上告人らの払込責任を否定した原判決には、理由不備の違法があるという。
よつて審案するに株式の払込は、株式会社の設立にあたつてその営業活動の基盤たる資本の充実を計ることを目的とするものであるから、これにより現実に営業活動の資金が獲得されなければならないものであつて、このことは、現実の払込確保のため商法が幾多の規定を設けていることに徴しても明らかなところである。従つて、当初から真実の株式の払込として会社資金を確保するの意図なく、一時的の借入金を以て単に払込の外形を整え、株式会社成立の手続後直ちに右払込金を払い戻してこれを借入先に返済する場合の如きは、右会社の営業資金はなんら確保されたことにはならないのであつて、かかる払込は、単に外見上株式払込の形式こそ備えているが、実質的には到底払込があつたものとは解し得ず、払込としての効力を有しないものといわなければならない。しかして本件についてこれを見るに、原判決の確定するところによれば、訴外中部缶詰株式会社は資本金二〇〇万円全額払込ずみの株式会社として昭和二四年一一月五日その設立登記を経由したものであるが、被上告人Aは、発起人総代として同じく発起人たるその余の被上告人らから、設立事務一切を委任されて担当し、株式払込については、被上告人Aが主債務者としてその余の被上告人らのため一括して訴外第一銀行名古屋支店から金二〇〇万円を借り受け、その後右金二〇〇万円を払込取扱銀行である右銀行支店に株式払込金として一括払い込み、同支店から払込金保管証明書の発行を得て設立登記手続を進め、右手続を終えて会社成立後、同会社は右銀行支店から株金二〇〇万円の払戻を受けた上、被上告人Aに右金二〇〇万円を貸し付け、同被上告人はこれを同銀行支店に対する前記借入金二〇〇万円の債務の弁済にあてたというのであつて、会社成立後前記借入金を返済するまでの期間の長短、右払戻金が会社資金として運用された事実の有無、或は右借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無等、その如何によつては本件株式の払込が実質的には会社の資金とするの意図なく単に払込の外形を装つたに過ぎないものであり、従つて株式の払込としての効力を有しないものではないかとの疑いがあるのみならず、むしろ記録によれば、被上告人Aの前記銀行支店に対する借入金二〇〇万円の弁済は会社成立後間もない時期であつて、右株式払込金が実質的に会社の資金として確保されたものではない事情が窺われないでもない。然るに、原審がかかる事情につきなんら審理を尽さず、従つてなんら特段の事情を判示することなく、本件株式の払込につき単にその外形のみに着目してこれを有効な払込と認めて被上告人らの本件株式払込責任を否定したのは、審理不尽理由不備の違法があるものといわざるを得ず、その結果は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は、その余の論点に対する判断を俟つまでもなく、破棄を免れない。
よつて民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)

+(出資の履行)
第三十四条  発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることを妨げない。
2  前項の規定による払込みは、発起人が定めた銀行等(銀行(銀行法 (昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項 に規定する銀行をいう。第七百三条第一号において同じ。)、信託会社(信託業法 (平成十六年法律第百五十四号)第二条第二項 に規定する信託会社をいう。以下同じ。)その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の払込みの取扱いの場所においてしなければならない。
・53条2項に基づく請求
①Aが発起人の地位
②Aが発起人として職務を行うについて悪意・重過失
③Gに損害
④Aの悪意重過失ある行為とGの損害との間に相当因果関係
②を主張するに当たっては仮装の払込の点を主張
+判例(H3.2.28)
理由 
 弁護士秋山昭八の上告趣意は、憲法三二条違反をいう点を含め、実質は量刑不当の主張であり、弁護士杉野修平の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。 
 所論にかんがみ、職権により検討する。原判決の是認する第一審判決の認定によれば、被告人両名らの合意により、株式会社アイデン(以下「アイデン」という。)が第三者割当増資の方法により新株の発行(発行価額一株二五〇円、払込期日昭和五九年二月二五日)を行った際に、発行総株式数一二八〇万株のうち六四〇万株について、以下の方法で払込みが行われたことが認められる。 
  1 アイデン商事株式会社(以下「アイデン商事」という。)の引受分二〇〇万株のうちの一二〇万株については、アイデンは、昭和五九年二月二三日、アイデン振出の額面三億円及び二億円の手形二通をアマストコンピューター株式会社に交付し、アマストコンピューターは、同月二四日、東京都商工信用金庫秋葉原支店で割引きを受け、割引金のうち三億円をアイデンに交付し(二億円は同支店の要求でアマストコンピューター名義の通知預金とされた。)、アイデン商事は、これをアイデンから借り受け、申込証拠金として大和銀行上野支店のアイデンの別段預金口座に入金し、アイデンは、同月二五日、同支店から右三億円についての株式払込金保管証明書を取得した後、同月二七日、右三億円を右口座から当座預金口座に振り替え、同月二九日、右額面三億円の手形の決済に充てた。 
  2 東洋電子工業株式会社の引受分四〇〇万株については、東洋電子工業は、同年二月二四日、アイデンの連帯保証の下に株式会社アイチから一〇億円を借り受け、申込証拠金として富士銀行四谷支店のアイデンの別段預金口座に入金し、アイデンは、同月二五日、同支店から株式払込金保管証明書を取得した後、同月二七日、右一〇億円を右口座から普通預金口座に振り替え、東洋電子工業のアイチに対する右一〇億円の借入金債務の代位弁済に充てた。 
  3 アイデン商事の引受分の前記残りの八〇万株については、アイデンが前記1のアマストコンピューター名義の二億円の通知預金証明書を担保に提供し、アイデン商事がアイチの代表取締役の第一審相被告人甲野一郎個人から二億円を借り受け、2と同様の経過をたどって、アイデンは、申込証拠金として払い込まれた二億円をアイデン商事の甲野一郎に対する右二億円の借入金債務の代位弁済に充てた。 
  4 アイデン商事が株式会社タモンの名義で引き受けた四〇万株については、アイデン商事は、同年二月二四日、大和銀行の連帯保証の下に富士火災海上保険株式会社から一億円を借り受け、申込証拠金として大和銀行上野支店のアイデン商事の別段預金口座に入金し、アイデンは、同月二五日、同支店から株式払込金保管証明書を取得した後、同月二七日、右一億円を右口座から普通預金口座に振り替えた上、小切手で引き出して直ちに同支店の定期預金に預け入れ、これに大和銀行の質権が設定された。 
 前記認定によれば、右1ないし3の各払込みは、いずれもアイデンの主導の下に行われ、当初から真実の株式の払込みとして会社資金を確保させる意図はなく、名目的な引受人がアイデン自身あるいは他から短期間借り入れた金員をもって単に払込みの外形を整えた後、アイデンにおいて直ちに右払込金を払い戻し、貸付資金捻出のために使用した手形の決済あるいは借入金への代位弁済に充てたものであり、右4の払込みも、同様の意図に基づく仮装の払込みであって、アイデン名義の定期預金債権が成立したとはいえ、これに質権が設定されたため、アイデン商事が富士火災海上保険に対する借入金債務を弁済しない限り、アイデンにおいてこれを会社資金として使用することができない状態にあったものであるというのであるから、1ないし4の各払込みは、いずれも株式の払込みとしての効力を有しないものといわなければならない(最高裁昭和三五年(オ)第一一五四号同三八年一二月六日第二小法廷判決・民集一七巻一二号一六三三頁参照)。もっとも、本件の場合、アイデンが東洋電子工業に対する一〇億円及びアイデン商事に対する五億円の各債権並びに一億円の定期預金債権を有している点で典型的ないわゆる見せ金による払込みの場合とは異なるが、右各債権は、当時実質的には全く名目的な債権であったとみるべきであり、また、右定期預金債権は、これに質権が設定されているところ、アイデン商事において富士火災海上保険に債務を弁済する能力がなかったのであるから、これまたアイデンの実質的な資産であると評価することができないものである。したがって、公正証書原本不実記載の罪の成立を認めた原判決の判断は正当である。 
 よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。 
 (裁判長裁判官園部逸夫 裁判官坂上壽夫 裁判官貞家克己 裁判官佐藤庄市郎 裁判官可部恒雄) 
++解説
《解  説》
 一、本件は、二部上場会社であった株式会社アイデンの倒産に至る過程で起こった見せ金による増資について公正証書原本不実記載罪の成立が認められた事案である。アイデンは、官公庁に照明関係器具を納入していた優良会社であったが、石油ショックによる需要の後退を契機として経営に行き詰まり、その子会社のアイデン商事ともども多額の債務を負い、倒産の危機に陥った。そこで最後の手段として、アイデンの社長の被告人Y及び常務取締役の被告人Wらは、第三者割当増資の方法により新株を発行して、返済資金の導入を図った。しかし、払込み期日の直前になって、業界紙にこの増資を疑問視する記事が出たため、一部の内定していた割当て先が引受けを辞退した。そこで、発行総株式数一二八〇万株(三二億円)のうち六四〇万株(一六億円)について、割当て先きがないことになり、二部上場会社が増資に失敗すれば、直ちに倒産に結びつくことから、何とかしてこの穴を埋める必要が生じた。そこで、判示されている次の四つの方法で払込みが行われた。すなわち、(1) アイデン商事がアイデン振出の手形の割引金をアイデンから借り、(2) 東洋電子工業がアイデンの連帯保証の下に金融業のアイチから金を借り、(3)アイデン商事がアイデンの通知預金を担保にアイチの社長である一審相被告人M個人から金を借り、(4) アイデン商事が銀行保証の下に保険会社から金を借り、それぞれ払込みをしたのである。(1)ないし(3)については、払込み後直ちに払込金は払い戻され、手形の決済や借入金への返済に充てられ、(4)については、払込金が定期預金に振り替えられ、それに連帯保証人である銀行のための質権が設定された。要するに、払込みの体裁は整えられたが、アイデンの手元には資金が残らないか、定期預金として残っても質権が設定され自由に処分できない状態にあった
 二、従来、見せ金による払込みは仮装のものとして無効とされ(最二小判昭38・12・6民集一七巻一二号一六三三頁)、これを秘して商業登記簿の原本に増資の記載をさせる行為は、公正証書原本不実記載罪に当たるとされてきた(最一小決昭40・6・24刑集一九巻四号四六九頁、最三小判昭41・10・11刑集二〇巻八号八一七頁、最三小判昭47・1・18刑集二六巻一号一頁)。見せ金というのは、引受人が他から金を借り入れ、それで株式の払込みをし、会社成立後又は増資登記の完了後に、会社がこれを引き出して右の貸主に返済するものをいう。本件も、その延長線上の事案であるが、そこで採られた手段が従来になく、多種多様である上、アイデンは払込人であるアイデン商事及び東洋電子工業に対して一応債権を有し、あるいは自己名義の定期預金を有している点に特徴がある。
 この債権や定期預金が実質的にアイデンの資産を形成するものであれば、見せ金による仮装払込みを禁じる根拠である資本充実の原則は害されていないことになり、払込みを有効と解する余地も生じる。しかし、本件では、右払込人は、いずれも倒産寸前でアイデンに対する右債権を返済する能力はなく、右定期預金にも質権が設定され、アイデン商事が保険会社に債権を返済する能力もなかったから、いずれも名目的なものに過ぎなかったのである。このような場合、仮装の払込みとして、商業登記簿の原本に増資の記載をさせた行為が公正証書原本記載罪に当たるとした点に、本件の事例的意味がある。第一審判決については、河本一郎ほか、座談会「アイデン架空増資事件判決をめぐって」商事法務一一〇八号二頁、一一〇九号一〇頁がある。
・429条1項の請求
①Aが取締役の地位
②Aが取締役としての職務を行うについて悪意・重過失
③Gに損害
④相当因果関係
2.B・Cに対する請求
Ⅴ おわりに


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